心のアーカイブ 伊波伴准

今年も抽選会ができる、という喜び


夏の高校野球岩手大会の組み合わせ抽選会が、盛岡市都南文化会館(キャラホール)で開かれました。
福岡高校浄法寺校が部員不足のため参加を見送ったので
参加チームは1チーム少ない73チームとなりました。

いつもの年と違うのは、練習環境が震災により大きく変わってしまった沿岸地域の学校が多いこと。
そして、抽選会の模様をIATで生中継したことです。

沿岸の学校の野球部員は、自宅が流されたり、親を亡くしたり、
高校生にとって耐え難い辛い環境の中で、野球に取り組んでいます。
練習もままならない状態なのに、がれきの撤去作業に参加するなど、
「生きる」ということに、真正面で取り組んだ球児たちです。
これは高校野球に限らず、どの沿岸の高校生にも共通していることかもしれません。

津波で何もかも失ったと絶望した生徒も多かったと思いますが、
その状況から考えると、いつもの年と変わらない抽選会を迎えただけでも
本当に沿岸エリアのがんばりには、頭が下がる思いです。
さらに内陸エリアから野球用具を送るなどして協力している野球部の存在もあるでしょう。

失われた日常から立ち上がる力が、今求められています。
高校野球のプレーは、岩手の復興を気持ちの面で支えてくれるに違いありません。

抽選会の中の説明では、今年特別に対応する内容などの説明がありました。
準決勝第1試合と決勝は、午前10時からに試合開始時刻を早め節電の要請に応えること、
日本高野連から配付される「がんばろう!日本」のシールをヘルメットに張ること、
高野連の支出が大幅に増えているため、例年発行していた招待券を取りやめ、入場料収入による協力を得たい、などです。

いつもの年と違いますが、そもそも野球の大会ができるまでの道のりを考えると
やはり感慨深くなります。
抽選会で札を引き、番号を発表する各学校のキャプテンの姿を見ているだけで
涙が出そうな思いです。

キャプテンたちが番号を引く舞台の上には、高野連の連盟旗と朝日新聞社旗がいつもより多く掲げられています。
奈良県から贈られたもので沢山の手書きのメッセージが書かれています。地域が違っても野球に対する思いは同じなのだなと感じます。

会場では、長年取材でお世話になっている指導者の方とも多くお話をすることができました。
特に沿岸部の先生たちは、かなりの負担があるはずですが、
それを感じさせない元気の良さ、明るさで、私と話をしてくれました。

選手宣誓は、盛岡一高の十良沢健二主将に決まりました。
いつもの年と違う、大きな意味のある大会です。
復興に向けた希望を感じる選手宣誓に、期待しています。

2011 年 6 月 30 日 19 時 05 分 36 秒

いわてデスティネーションキャンペーンに求められるもの

今年度の「いわてデスティネーションキャンペーン推進協議会」の第3回総会が開かれ、
そのキャッチコピーとして
「イーハトーブいわて物語 ~そういう旅に私はしたい。」が選定されました。

宮沢賢治の造語「イーハトーブ」という言葉を使っています。

これまでのキャンペーンと違い、「食」や「文化」という言葉をうたわず、
震災後の復興という課題の中、「心」が重要なテーマとなること。
”物語”という言葉でそれぞれの物語と作って欲しいという思い。
さらに「そういう旅に私はしたい」という言葉に様々な思いを重ねやすい
などの理由で選定されました。

そういう旅、とはどんな旅なのか?
東日本大震災以後、いま復興に懸命な地域の人々と、旅行者との間で
ひょっとすると”旅”について隔たりがあるかもしれません。
まず行き先の一つとして岩手が選ばれるのかどうか…?

しかし、いま「観光」が岩手にとって復興の大きなきっかけ・要因であることは言うまでもありません。

岩手の独自性(岩手らしさ)を感じ取る領域は様々なものがあると思います。
単純に「じゃあ、沿岸地域に行こう」ということが復興につながるわけでもないでしょうし
逆に、今だからこそ復興の姿を見てもらいたいというところもあるでしょう。

「そういう旅」というキャッチフレーズに込められた岩手の思いを
ぜひ多くの皆さんに感じ取ってもらいたいと思います。国内外問わず、です。

今回のデスティネーションキャンペーンは岩手県内の市町村にとっても大きな復興の契機です。
きょう開かれた総会でも、八幡平市や宮古市からの出席者から
このキャンペーンが復興のきっかけになってほしいという期待する発言がありました。

さらに、観光関係者の期待を集めているのは、
平泉の文化遺産について、世界遺産登録が決定したことです。
世界から注目される場所となった「平泉」を軸として観光が展開されるのは間違いありません。
JR東日本盛岡支社は”いわてDC”のプレキャンペーンの実施を決め、その中心は平泉です。
また、平泉駅の内外装改修をする、駅のリニューアルも決定したそうです。

”イーハトーブ(桃源郷)いわて物語”をどのように形作るのか、
観光業界のみならず、岩手に住む私たちがどんな情報を他地域の人々に伝えていくか、
PR能力、発信する方法、ベースとなる地域愛、
今回のキャンペーンは見つめ直す大きな契機になればいいなと感じます。

これまでの観光キャンペーンとは、違います。
一つひとつが、岩手にとっての日常を取り戻すための、重要な一歩なのです。

この日も会場に「そばっち」が。

2011 年 6 月 29 日 15 時 15 分 12 秒

ほっとする「プリン同盟10周年記念展」

 

岩手町にある「石神の丘美術館」で開かれている
「プリン同盟10周年記念展」を見てきました。

プリン展、という名前で盛岡市内で毎年開かれている展示会が
ついに10周年なのです。

由来はいろいろあるのですが、プリンをこよなく愛するメンバーが
プリンを題材にして様々な創作物を展示するというものです。

過去の展示では、プリンの形をした風鈴が「ぷうりん」という名前になったり、
「プリンかるた」の1枚目はプリンと犬がぶつかっている絵が描かれていて
「犬も歩けばプリンにあたる」…など、
一見、だじゃれのオンパレードですが、いかにも真面目にプリンと向き合っている
そんな作品展です。

石神の丘美術館の入り口には、
観光地によくある、看板がくりぬいてあって顔を出すと記念写真が撮れる、
というものが設置され、


よく見るとプリンがいっぱい。

展示室内は写真撮影ができないので、画像はありませんが、
プリンがどれくらいぷるぷるするかを見ることができる、
バネの上にお皿がのって、引っ張って離すと台座全体がぷるぷるするという「プリン台」という作品があります。
テレビでしか見たことのないプリン台。
真面目にプリンのぷるぷるさを追求したプリン台。

実物を見て、改めて、ため息が出ます。すごい。プリンの為の情熱がこの台に…。
このプリン台は、確か岩手県芸術祭で何かの賞を取っています。(それもすごい。)

さらに、展示室には、かなり大規模な年表があります。
最初のほうを見ると「ビッグ・プリン・バンが起き、プリンの小宇宙が形成される」…。

歴史上の有名な人物の肖像画?と思われるクロッキーが並び、よく見るとみんなプリンを持っている…。

プリンをジャンプさせるための「プリンジャンプ台」…。

そもそも入口近くに、プリンに関する小説(真面目におかしな話)があり、
作者は、石神の丘美術館の芸術監督の斎藤純さん。

この徹底したおかしさは、実際に見てもらうよりほか方法はありません。
しかも、プリンをモチーフにしていますが、食べるプリンは一切展示されていません。
この独特の世界観は、はまるとたまらなくなります。

国道4号で、岩手町を通過することがもしもあれば、
道の駅の奥にある石神の丘美術館にぜひ立ち寄ってみてください。
ちなみに、道の駅のレストランでは、牛乳プリンがメニューに加わっていました。

2011 年 6 月 26 日 19 時 46 分 37 秒

がんばろう岩手 再び警戒した揺れ

午前6時51分に、岩手県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震が起きました。
盛岡市山王町(中心部)は震度4、
普代村と、盛岡市玉山区では震度5弱。
地震が起きた当時、私は自宅でまさに起きようとしていました。

部屋のあちこちがかたかたと小刻みに揺れたかと思った瞬間、
携帯電話の緊急地震速報がけたたましく鳴り始め、
ほぼ同時に横揺れが激しくなってきました。

この1ヵ月程度、大きな揺れがなかったので、本当に恐ろしく、
収まるまでの時間(1分程度?)が、本当に辛い時間でした。

慌ててテレビをつけると、津波注意報が発表されたため、すぐにIATへ向かいました。

早い段階で集まっているスタッフが、既に沿岸情報カメラの映像や
地震発生当時のVTRなどを準備しています。

そのまま私はサブ(副調整室)にはいり、「やじうまテレビ!」の中でのIATからの中継の業務に当たりました。
大勢のスタッフの集めた情報を塚本アナウンサーが全国に向けて伝えました。

6/23早朝のサブ内

その後午前7時45分に津波注意報は解除。ほっとします。

しかし、岩手県内では停電が発生しているようですし、
手元の携帯電話の情報では、JRの在来線(釜石線、花輪線など)で
運転見合わせや遅れ、運休など影響が出ています。

地震が発生して100日以上が経ちますが、まだまだ警戒を緩めることはできません。
特に沿岸エリア住民の”安心”は、一つの揺れで遠のいてしまいます。
ましてや、津波注意報は改めて警戒感を強め、心的ストレスが増える要因にもなります。

安心できる環境をどのように作るのか、
国、県、市町村、報道機関、NPO、NGOそれぞれの役割を
改めてしっかり果たす日本でなければ、と感じます。

もちろん、発生直後のテレビの役割の大きさを、改めて感じたのです。

2011 年 6 月 23 日 08 時 53 分 37 秒

がんばろう岩手 来た!「はやぶさ」

岩手県民会館で、小惑星探査機「はやぶさ」特別展を開きました。
いつもであれば「開かれました」という表現がほとんどですが、「開きました」。
IATが。
IATが主体の催しなのです。

開局15周年記念として開催されたこの展示は、とても好評でした。
開催期間(3日間)中に、運営要員として会場にいましたが、
来場した方は、皆さん本当に熱心でした。
というのも、事前の申込みが沢山あり、期間中は込みあう時間帯もありましたが、
大きな混乱なく理路整然と整列してもらい、
さらに、展示室内でも、列が大きく乱れることもなく静かに、じっくりと見る方ばかりだったのです。

列の並び方や、熱心に見ている様子だけでも、なんて素晴らしいお客様なのだろう!と感じます。

会場には、はやぶさの「パラシュート」の実物、「電子機器」の実物などが並びました。
何の説明もなく見ると、これは何だろう?としか思わない物体です。

しかし、宇宙へ向けて打ち上げ、惑星「イトカワ」まで行ってきて、
さらに何度もトラブルを乗り越えながら奇跡的に地球に戻ってきた…と聞くと
その実物の尊さというか、貴重さが伝わってくるようです。
「はやぶさ」の成功の裏には多くの人の技術や思いが詰まっています。

さらに、岩手中学校・高校の自然科学部が作成した実物大の「はやぶさ」模型もあり、
展示をよりリアルに感じることができます。
別の視点では、こんなに細かく実物そっくりに作ったんだ!という努力にも
驚き関心するばかりです。中高生のパワーと宇宙への思いを感じます。

困難を乗り越えたはやぶさは、いま岩手が置かれている状況に似ているかもしれません。
大勢の科学技術者が力を合わせて困難を乗り切ったはやぶさ。
同じように、岩手は県民が力を合わせて困難を乗り切ることができるはずです。

協力して頂いた、奥州宇宙遊学館や、JAXA(ジャクサ=宇宙航空研究開発機構)など
関係各位に感謝する次第です。

2011 年 6 月 19 日 18 時 48 分 48 秒