心のアーカイブ 伊波伴准

高校野球 グラウンドに立てなかったキャプテン

県営野球場の第1試合は、去年はシード校だったものの初戦敗退した一戸。
そしてこちらも去年初戦で涙をのんだ花巻南の対戦。
どちらもどうしても初戦突破したい、そんな一戦でした。

序盤、一戸は1番の1年生松田蓮のスリーベースヒットを足がかりに、1アウト満塁。
相手エラーと犠牲フライで2点を取ります。

その後、花巻南の先発佐々木克行・一戸の山崎慎也らの好投でゼロ更新が続きます。
花巻南は6回表に、1アウトから9番代打・村上峰がレフト前で出塁。
村上が盗塁を決めたあと、さらに1番佐々木太河はタイムリーヒットで1点を返します。
、2番高間舘良汰はデッドボールをもらい2塁1塁。
ここで3番佐々木克行が右中間を破るタイムリーで2点をとり、逆転。3対2となります。

しかし、その後一戸は、7回に3番八前勝のタイムリーで1点追加。
さらに、8回には、スクイズやタイムリー、相手エラーなどで一気に7点をもぎ取り、
10対3の8回コールドで、初戦を突破しました。

この試合で、プレーが全くできなかったのが、花巻南のキャプテン、佐藤亮介君。
春の地区大会、花巻東との対戦でショートを守っていた亮介君は、
ランナー1塁で、ショートゴロをさばいたところで、相手ランナーと交錯。
左足のすねの骨を骨折してしまいました。

本人に聞くと、痛いというより驚いたとのこと。
救急車で運ばれているときに、自分の左足の太さが倍以上にふくれあがっていたそうです。
病院でレントゲンを撮って、「やってしまった…」と思ったそうです。

自分が最後まで試合に出られなかったこと、グラウンドに立っていられなかったことが
とても悔しい、と話していました。

その後、足の骨をつなぐために金具を埋め込む手術をして、6月中旬に退院。
練習も出来ず、練習試合にも同行できなかったそうです。
6月30日の抽選会も、本人はくじを引きたかったそうですが、
代わりに副キャプテンの藤原一保君が引きました。
女子マネージャーに聞くと
「キャプテンは、足がとても痛いはずなのに、一切痛いと言わなかった。
残りの3年生4人は、『亮介が病院から戻ってきたら驚くくらい練習をしよう』と
声を掛け合っていた」と状況を教えてくれました。

それでも、高橋克寿監督は、プレー出来なくても背番号6を予定通りキャプテンに与えました。
様々な思いが込められていると感じます。

全力プレーで…とよく放送で言いますが、それすらも許されなかったキャプテンを思うと、
放送前、私は本当に複雑な思いがしました。

ひょっとしたら、コールドゲームでなければ、最後の代打があったかもしれません。
亮介君は、画面を通してですが、試合終了直後に誰よりも涙を流していました。

試合後、亮介君の様子を見に行きました。
本当に悔しそうでした。
それでも、誰を責めることなく「試合に出られない2ヵ月間はとにかく後悔です」と
話していました。
同時に試合中は「下を向かないで一生懸命、そして今までで一番声を出しました」とも
気持ちを語ってくれました。

試合後、亮介君のお父さんと会話をしました。
3人兄弟の真ん中。兄弟では1人だけ野球をしていたそうです。
高校に入っても野球を続け、キャプテンまで務めた息子が松葉杖姿で歩いている姿を
涙をこらえて見つめている姿が印象的でした。

関係者と別れ、控室に戻る途中、私も涙が止まりませんでした。

来年は、きっと先輩の分まで後輩たちが頑張ってくれます。
キャプテンはじめ、3年生の5人は、胸を張って学校に戻ってもらいたいと思います。

花巻南 00000300=3
一戸    20000017x=10
(8回コールド)

2011 年 7 月 15 日 20 時 01 分 14 秒