心のアーカイブ 伊波伴准

人形浄瑠璃文楽の世界

岩手県民会館で開かれた「文楽」公演に行ってきました。
舞台において人間の感情表現は、
必ずしも全てを声や音楽で出すことではない、と感じました。

人形浄瑠璃は、物語の説明をする「太夫(たゆう)」と三味線とで音の部分が構成され、
舞台には人形が登場します。
人形は3人の人が操っていますが、そのうち2人は黒子、1人は顔を出しています。

始まって驚いたのが、顔を出している人もいるのに、人形も舞台にいるという状況です。
全員が黒子であれば人形だけが浮き出て見えると思いますが、
操る技を持つ人は、技と顔の両方を楽しむのが作法のようです。

そしてセリフを話す「太夫」。慣れるまで内容を把握しづらいのですが、
よく聞いてみると、ハッキリ言葉を話すところもあれば、
女性のセリフになると、着物を着た「太夫」さんが声を高くして話す場面もあります。

会場内で販売されていたパンフレットを見ると、
その太夫が話す台本(床本・ゆかほん)が掲載されていて、
これと比べながら太夫をみると、物語の流れがハッキリとしてきます。

今回見たのは「団子売(だんごうり)」と「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」の2演目。
団子売は、にぎやかな雰囲気が伝わり、面白いという感じです。

一方の摂州合邦辻は、長い演目でしたが、特に終盤に物語で動く感情が
伝わってくる舞台でした。
物語が非常に複雑で、舞台前に解説をしてから開始するのですが
複雑な物語も相まって、感情の動きの表現は素晴らしいものだったと感じます。

長い時間見ていると、次第に人形だけの動きだけが見えるような気になり、
さらに、人形がなんだか生きているような動きに見えてくるのです。
さらに太夫のせりふ回しと三味線の音が合わさった表現が
だんだんと心に響いてきます。

決して沢山の声色を使い分けているわけでもなく、
三味線も、緩急はあるものの音色としては基本的に一つ。
この限られた環境の中で紡ぎ出す音やセリフ、なのに
だんだんと表現の幅が広がっていくように感じていくのです。

必ずしも全ての言葉が明瞭に聞こえるわけでもありませんが、
物語の流れ、うねり・・・
特に最後は登場人物が娘を刺してしまう場面で
怒りや悲しみなどの感情が、細やかに表現されているなと感じました。

チャンスがあれば、皆さんも「文楽」に触れてみてください。

2011 年 9 月 28 日 11 時 50 分 16 秒