心のアーカイブ 伊波伴准

子どもたちの笑顔~陸前高田市(高田保育所・米崎保育園)

沿岸地域での読み聞かせで、陸前高田市を訪れました。読み聞かせ活動でお邪魔するのは初めてです。

高田保育所のあった場所

陸前高田市立高田保育所は、3月11日の震災で津波の影響を受け、建物が全壊しました。
全壊というよりも、津波で全て流出したのです。
地震で建物が崩れることも辛いことですが、全てが波に飲み込まれるのもとても辛いことです。

園長先生に話を聞くと、まさか保育所まで津波がくるとは想像もしていなかったとのことで、
3月11日は、津波をみて大急ぎで園児と職員を高台に避難させたそうです。
最後に自分の目で全ての部屋に子どもたちがいないかを確認し、
大丈夫、と思ったところで津波とがれきが迫ってきたそうです。
道路に出て走ったところで、高田小学校の子どもたちと一緒になり必死に走り、
それでも、自分より前に園児と職員が全て逃げているのを見て
「ああ、少なくとも子どもたちは助かった」と思ったそうです。

職員はその後、市役所や避難所で市職員としての仕事を果たし、
しばらくしてから、子どもたちを公園で預かる青空保育を始めたそうです。

辛い思いを抱えながら、4月15日に旧米崎保育園の園舎を使って保育を再開。
現在は100人の子どもたちが通っています。

 

お邪魔した園舎は確かに古く、十分な広さではないかもしれませんが、
その中を職員は一生懸命にかけまわり、子どもたちは想像以上に元気でした。

そして、今回の読み聞かせは森永製菓・森永エンゼル財団の協力で、
子どもたち一人ひとりに絵本とお菓子のプレゼントがありました。
絵本は、森永製菓創業100年を記念した「森の絵本」(長田弘/文、荒井良二/画)という本です。

読み聞かせには、その「森の絵本」、
「うんちっち」(ステファニーブレイク/作、ふしみみさを/訳)
「よくばりすぎたねこ」(さとうわきこ/作・絵)
を選びました。

2歳児から5歳児まで、およそ90人に読み聞かせをしましたが、
最後までしっかりと絵本に集中し、楽しんでもらえたようでした。

通っている半数の子どもたちが仮設住宅から。
職員の皆さんも苦しさや迷いとの葛藤の中、日々を過ごしているそうですが、
少しでも、楽しい時間にしてもらいたいという一心です。
細かい理屈はともかく、「うんちっち」ではみんな笑顔で大笑い。
これからもっと笑顔が増えるといいなと思います。

次に訪れたのは、米崎保育園。
旧園舎は高田保育所を使っていて、道を挟んで向かいに新築移転しています。
震災後に急いで建築後の点検を受けて4月15日から保育を再開しました。
並んで保育所があるので朝の送り時間は保護者の車で混雑しますが、
2園が協力して子どもたちの安全を守っている姿が印象的でした。

 

米崎保育園では2歳児から4歳児、およそ60人への読み聞かせ。
きれいなおゆうぎ室に集まり、「森の絵本」のほか、「たまごのあかちゃん」(神沢利子/さく、柳生弦一郎/え)などを読みました。


もちろん、「うんちっち」では大爆笑。人気が高く復刻再版された理由も分かります。

ここでも、森永エンゼル財団から絵本とお菓子がプレゼントされ、
子どもたちは大喜びでした。
最後に絵本とお菓子お礼に、と歌を歌ってくれました。
小さい子どもたちから歌のプレゼントというのは、
目頭が熱くなるような、心を動かされるようなうれしさがあります。

米崎保育園の子どもたちもとても元気に見えますが、
園児の3分の1、職員の半分は仮設住宅から通っているそうです。
今後の生活に不安を抱えながら、保育士の皆さんも、子どもたちもふんばっているのかなと感じます。

陸前高田市は、町の中心部をほぼ津波で失いました。
仮に家を建て直すにしても、同じ場所に建てて良いのか、まだ明確ではありません。
被害の大きさと比例し、身近な人を失ってしまったという人も多くいます。
明日に向かって進むということは容易なことではありません。

でも、前に進まなければならないのです。

5年、10年経つと、子どもたちも復興の重要な役割がでてくることでしょう。
そのためにも、いま楽しい時間、生きる喜びを感じてもらうことが重要で、
そのためにも、私にもできることが何かあるはずです。

2011 年 11 月 28 日 19 時 11 分 43 秒

コバケンの魅力

世界的な指揮者、小林研一郎さん(コバケン)が結成した、社会貢献目的の集まりである
「コバケンとその仲間たちオーケストラ」の公演が北上市でありました。
その公演を聴きに行くことができました。

今回のステージには、釜石高校や高田高校、大槌高校などの音楽関係の部活動の生徒が参加し、
さらに福島県南相馬市の子どもたちも合唱で参加するなど
いわゆる被災地を支援するというコバケンさんの気持ちが詰まった公演でした。

コバケンさんは、ステージの上でとても自由できさくな様子。
演奏の合間に、思い出したようにメンバー紹介をしたかと思うと、
さらに曲の合間に、急に「このTシャツは、全員が着ているのですが…」と説明が始まり、
「ただ、背中を客席に向けるわけにはいかず、従って私が燕尾服ではなくこのTシャツを
見えるように着て、指揮をするのです。」と言い終わるやいなや
すぐにタクトを持って演奏が始まる…刺激の強い演奏会です。

参加している高校生や子どもたちの話もそうですが、
オーケストラメンバーの紹介、自分の思いの説明…気が付くとその雰囲気に引き込まれているのです。

演奏をしっかり観客に伝えるのはもちろん、
様々な話も交えて展開が豊かなステージです。
合唱、オーケストラ、オペラの一節、和太鼓とのコラボなど、
音楽自体もバラエティー豊か。

とにかく飽きない楽しい、そして胸が熱くなるような仲間たちオーケストラのステージ、
ぜひまた見てみたいと感じました。

2011 年 11 月 26 日 18 時 17 分 54 秒

支援するイベント、子育てフェスタ

いわて子育てネットが主催の「子育てフェスタ」に行ってきました。
サブタイトルには「安心・楽しい子育て生活inモリオカ」とあります。

盛岡で人気の岩渕みどり先生のリズム体操、親子でひっつみを味わう、
おもちゃ広場、塗り絵コーナー、音楽読み聞かせ、など
いろいろな催しがあります。
100人の参加想定が、200人を超える大盛況でした。

実は、このイベントは「被災地乳幼児家庭支援事業」という側面があります。
様々な事情で沿岸地域から避難、または一時的に滞在している親子に、
盛岡での子育て生活をより楽しくしてもらおう、ということと、
盛岡市内にもともと住んでいる親子にも参加してもらい、
楽しいあそびの「場」の提供ということが、支援になるという催しなのです。

東日本大震災で、特に子どもたちの環境を考えると、
最も重要な観点は「日常を奪われた」ということです。
いつもの生活が一変した、ということは、子どもにとって当たり前の日常が奪われているということを意味しています。

せめて、盛岡にやってきた親子が
今までであれば当たり前に遊べたり楽しかったりする「場」が
今、一番求められています。

その証拠に、会場は沢山の親子が
リズム体操や音楽読み聞かせなどに熱心に、かつ楽しそうに参加していました。
子育ての楽しい場への需要の高さを実感することができます。

今回、いわて子育てネットのメンバーと一緒に絵本の読み聞かせをしました。
「よくばりすぎたねこ」(さとう わきこ/作・絵)と
「うんちっち」(ステファニーブレイク/作、ふしみみさを/訳)です。
特に「うんちっち」は一度絶版になっていた本ですが、今月から再版された人気の絵本。
ナンセンス絵本の代表作の一つです。

会場では、熱心に聞き入る子どももいれば、
会場が広いので、にぎやかな中でなかなか集中できない子どももいました。
絵本の楽しみ方は、一人ひとり自由なので、
子どもの顔を確認しながら、一行ごとに心をこめて読んでいきます。
読むというよりも、訴える感じでの読み聞かせでした。

3歳児前後が多かったので、今後保育園や幼稚園に通うと
また、絵本の読み聞かせの受け止め方が変わるかも?と思いながら、
進めていきましたが、
子どもより保護者の方が、じっと一生懸命耳を傾けてもらったのが印象的でした。

2011 年 11 月 21 日 20 時 56 分 29 秒

今、できること

IATの「Go!Go!子育て応援宣言!」で続けてきた絵本の読み聞かせは、東日本大震災後、大きく内容が変わりました。

 沿岸の子どもたちに元気を届けることが重要なテーマとなり、4月から延べ15カ所の幼稚園と保育園を回っています。元気になるような絵本、楽しい絵本を選び、子どもたちの笑顔を目標にしています。

 沿岸にお邪魔すると、目の前にがれきが山となっている園がありました。やむなく移転して懸命に子どもたちと向き合っている保育園もあり、その姿に頭の下がる思いです。

 地域によって園児の反応に大きなばらつきがあることに気づきます。同じ絵本でも、大笑いする園と全く笑わない園があります。ひょっとすると、笑わない子たちは震災で大変な大人たちに遠慮しているのではないかと感じて胸が痛みました。

 また、園の関係者の方が震災の体験を熱心に伝えようと話をしてくれるのが印象的でした。どのようにケアしていくかという悩みを抱え、想像を絶する苦労を背負っている方々に、「元気を出して」とは軽々しく言えないと感じつつ、私ができることはなんだろうという自問自答が続きます。

 絵本の読み聞かせで子どもにも大人にも少しでも元気を届けること。明確な答えではありませんが、今できることなのかもしれません。5年、10年と続けていきたいと考えています。

(2011年11月18日 朝日新聞岩手版「心のアンテナ」に掲載されました)

2011 年 11 月 18 日 19 時 53 分 04 秒

さんさ踊り 石垣島へ(3)

久しぶりに取材で訪れた石垣島は、以前といろいろと姿が変わり、
さらに新しい発見・出会いも多くありました。

石垣島に行って目立ったのは、2013年に完成する新空港に関する看板などです。
滑走路が長くなり、これまでよりも大型の飛行機でも離発着が可能になることで
多くの観光客を誘致できる可能性が広がります。

私が高校生の時に、白保地区に新空港を作る、作らない、で大きな論争になっていましたが、
埋め立てではない、新しい空港に決まり、整備が始まっています。

沖縄県のホームページなどで調べると、
現在1,500mの滑走路はジェット機が暫定的に運航する、とされている空港ですが、
新空港は2,000mの滑走路で、ボーイング767-300型機でも就航が可能です。
短い滑走路だと、燃料と貨物をいっぱいにしては離陸できないという制限もありましたが、
2,000mあれば、直接本土に向かうことができます。
(今までは、石垣から本土に行くには、宮古島や那覇で一度給油し直す必要があったのです。)

新空港への期待なのかどうか、以前よりもホテルが増えたような気がしますし、
以前から続いていた他地域からの移住も、一層進む可能性もあります。

改めて気付いたのは「日影」の大切さです。
沖縄では日差しが強いので、私も小さいころは常に日影を狙って歩くようにしていましたし、
沖縄から出ても、しばらくは真冬でも無意識に日影を歩いていることがありました。

石垣島まつりの取材の時に、パレード会場に行くと、
パレードの進行方向に向かって右手の歩道にだけ、沢山の人があつまり、
左手の歩道は、あまり人がいないことに気づきました。
岩手からまつりに参加したさんさ好みのメンバーも「なんで片方だけ・・・?」と
すぐにおかしいと感じたものの、すぐに理由がわかりました。
あまりに日差しが強く、猛烈に暑いために、日影でないと楽しめないのです。

11月なのに、おまつりの観客が日影側に偏る光景…沖縄ならではかもしれません。

地元の人たちとも様々なつながりもできました。
石垣島を元気にしようと活動する商工会や青年会議所、町内会などの人たちと
情報交換をする機会がありました。
すると、必ずしも石垣生まれ石垣育ちだけのメンバーだけではないのです。
沖縄本島からやってきた人もいますし、沖縄県外出身者も多くいます。
だれもが、石垣島が好きで、石垣の空気や生活のリズムが自分に合っていると感じ、
島を元気にするために頑張っている人たちです。

沖縄について印象を聞くと、
青い海に白い砂浜、年中半袖で明るく陽気に過ごしているというイメージが未だに残っているとおもいますが、
住んでいる「人」は、他県出身者の割合が想像以上に高いのです。
沖縄は、まるで東京のように、全国からいろいろな人が集まっています。

それを考えると、石垣島から見て、ほか46都道府県は、想像以上にいろいろなつながりがあり、
岩手から見る沖縄と、沖縄から見る岩手は、温度差が確実にあるのだと思います。

沖縄の人に「岩手」を身近なものとして感じてもらうことは、相当の努力が必要です。

これから岩手と沖縄のかけはし交流を継続していくには、
まず、お互いが行ったり来たりする意義や用事を作りながら、
お互いにプラスになる何かが必要なのだと感じます。

その答えはすぐには出ませんが、私は今後もお互いの県のつながりを確認するために
一定の間隔で必ず取材や放送を続けていけるよう、取り組んでいこうと思います。

2011 年 11 月 10 日 12 時 12 分 06 秒