心のアーカイブ 伊波伴准

彫刻の「表情」

岩手県立美術館で開かれている「舟越保武彫刻展ーまなざしの向こうにー」を見てきました。

私が岩手にきて間もない頃。
舟越保武という名前を初めて聞いたのは1999年、文化功労者に選ばれた時です。
そのニュースの原稿を書くことになったのです。

全く知識がない中、
岩手県庁の担当者が丁寧に資料を出して教えてくれたのが
彫刻家・舟越保武の偉大さです。

原の城をはじめ、様々な彫刻作品をつくりあげた、
そしてカトリック教会での洗礼を受け、キリスト教信仰をテーマにしたものが多かった・・・。
そして当時もっとも記憶に残ったのが「長崎26殉教者記念像」の作者だったということです。

学生時代に訪れた長崎。
長崎駅の近くの西坂公園で見た荘厳な雰囲気のあるあの像の作者。
私は、岩手の彫刻家が活躍していることを、とてもうれしく感じました。
このときのニュース映像は、既に車いす。しかし左手でデッサンと彫刻を続けていたそうです。

2001年に開館した岩手県立美術館には
舟越保武の常設展示がありました。
まとめて見た彫刻は、どれも動き出しそうなものばかり。強い印象が残っています。

次にニュース原稿を取材して書くことになったのが 2002年。多臓器不全のために89歳で死去。
舟越保武に直接取材する機会が無いまま、ご本人は逝ってしまいました。
今となっては、彫刻への情熱を、本人ではなく作品から感じ取るだけとなってしまいました。
改めて今回の展示を見ると
彫刻の動きや表情が、迫ってきます。

特に女性の胸像は、どれも話し声が聞こえてきそうなほど
精巧に彫られています。

無表情なもの、穏やかな笑顔に見えるもの、
そして、ささやき声が聞こえてきそうなもの・・・。

どれも実際に見て、肌で感じてほしいものばかりです。

個人や企業が所蔵しているものも並んでいて、圧巻です。

さらに晩年に近い作品は、左手で作った彫刻。
荒々しい作風の中に、作品を作りたいという強い意志を感じます。

心穏やかに、非日常の中で彫刻と向き合うのは、とてもぜいたくな時間です。
多くの方に舟越保武に触れて欲しいと思います。

2014 年 11 月 17 日 14 時 23 分 53 秒