放送番組審議会

10月(第62回)

概要

 岩手朝日テレビの第62回番組審議会が平成14年10月31日(木)、盛岡市盛岡駅西通の同社会議室で開かれた。

今回は、「相棒~警視庁ふたりだけの特命係」について合評した。

委員から、

  • テンポがいいし、人間ドラマとしても面白い。
  • 本当に人間的に生きていくためにはどうすればいいのか。そんな問いかけもあったりして、なかなか魅力的だ。
  • 全体として、明るく楽しめる番組だ。
  • いいクラシック音楽が流れる場面があったりして、楽しめるエンターテイメントになっている。
  • 重いテーマを軽いタッチで描いていて、手の込んだドラマになっている。
  • きれもの刑事、お人よしの刑事。組織捜査という観点からは現実離れしているが、楽しく見られる番組だ。
  • 他の刑事ものより筋立ても、役者もよくておもしろい。
  • ドラマだからいいかなというところもあるが、現実から外れている。もう少しリアリティがあってもいいかなという面もあった。
  • ドラマの中で、メーンの部分ではないが、やや素人っぽいところが見かけられる。
  • もっとアクション、活劇の場面があった方がいい。
  • トリックの工夫や意外性があってもいいのではないか。

などの意見が出た。

出席委員は、増子 義孝委員長、及川 和男副委員長、大坊 忠委員、宮野 祐子委員、松本 直子委員、笠川 さゆり委員、松尾 正弘委員、石井 三郎委員、小川口 柳太郎委員、植本 花子委員。

議事録

1.    平成14年10月31日(木)午前11時~

2.    岩手朝日テレビ本社・会議室

3.委員の出席

委員総数 10名

出席委員数  10名

 委員長 増子 義孝 

副委員長 及川 和男

  委員 石井 三郎

  委員 植本 花子

  委員 小川口 柳太郎

  委員 笠川 さゆり

  委員 大坊 忠

  委員 松尾 正弘

  委員 松本 直子

  委員 宮野 裕子

会社側出席者名

   代表取締役社長 川崎 道生

取締役営業本部長補佐 横舘 英雄

   取締役業務局長 河邊 喬

      技術局長 山口 孝

     常勤相談役 桑折 勇一

 番組審議会事務局長 末吉 正憲

4.議題

(1)11月の番組編成について

(2)番組合評

  「相棒~警視庁ふたりだけの特命係」

(3)次回の審議会

開 催 日:平成14年11月28日(木)

合評課題:「土曜の奇跡!TVのチカラ」

(4)その他

5.概要

<合評番組 相棒~警視庁ふたりだけの特命係>

* テンポがいいし、人間ドラマとしても面白い。

* 本当に人間的に生きていくためにはどうすればいいのか。そんな問いかけもあったりして、なかなか魅力的だ。

* 全体として、明るく楽しめる番組だ。

* いいクラシック音楽が流れる場面があったりして、楽しめるエンターテイメントになっている。

* 重いテーマを軽いタッチで描いていて、手の込んだドラマになっている。

* きれもの刑事、お人よしの刑事。組織捜査という観点からは現実離れしているが、楽しく見られる番組だ。

* 他の刑事ものより筋立ても、役者もよくておもしろい。

* ドラマだからいいかなというところもあるが、現実から外れている。もう少しリアリティがあってもいいかなという面もあった。

* ドラマの中で、メーンの部分ではないが、やや素人っぽいところが見かけられる。

* もっとアクション、活劇の場面があった方がいい。

* トリックの工夫や意外性があってもいいのではないか。

6.議事の内容

末吉事務局長

 おはようございます。それでは第62回番組審議会を開催します。初めに川崎社長、ご挨拶をお願いします。

川崎社長

 おはようございます。大変忙しい中をご出席賜りまして有難うございます。10月も末になりまして、今年も残すところ2ヶ月となりました。弊社の上期の営業等の状況につきまして少しばかりご報告させて頂きます。我々の業界は景気にいちばん左右されやすく、なんとか実績を上げるべく努力をしております。他の業界と同様、厳しい状況でして、前年比で95%ほどの数字確保が目一杯でございます。ただ、東北ブロックのテレビ朝日系列の中では良い数字だったようです。

 私共は新体制になりましてちょうど4ヶ月が経ちましたが、実績を上げるべく営業戦略会議を設置しまして、東京と大阪の支社長を含めまして、具体的な営業業績アップのために会議を月に1回開催しております。また番組関係では、前回の会議でも少し紹介しましたが、「30人31脚」の全国大会が来月、横浜アリーナで開催されます。この大会では走りの早さを競うことは勿論ですが、それ以上に感動的なものがあります。岩手県大会は先月末に終わったのですが、つい2週間ほど前に、盛岡市内の学校の先生からお礼のお手紙を頂戴しまして、この時期に子どもたちが参加したいという意見があったのだけれども、この時期は予定がある時期で、今回は断念しようかと思ったのですが、子どもたちがどうしても出場したい、ということで参加を決めた。その結果としてクラスが本当にひとつにまとまった。参加をすることに非常に意義があった、という内容でした。「30人31脚」は始めてから7年目になる競技で、生きた人間教育ではなかろうかという評価が出てきております。今時の子どもたちは、勝ったらバッと喜ぶのは当然ですが、負けて悔し泣きをする姿がテレビの番組で映るというのは珍しいと思います。この番組は今後も大事にして行こうと思います。

 それから近々に「ふるさとCM大賞」を当社が初めて実施します。これは県内の各市町村の自慢出来るところをコマーシャルとして作りませんか、という趣旨のものです。今回はスタートが遅かったこともございまして、参加40市町村を目標にしておりましたが、ちょっとそれより少ないようです。そして、各市町村が作られた作品を11月末に盛岡市民文化ホールで審査会を開催し、その模様を収録して12月23日に放送させて頂きます。当日は社外の方に審査員をお願いしまして、グランプリを獲ったCMは365回放送する予定になっております。

 我々は岩手県で最後発の小さな局でございます。私が社員に向かって今さかんに話していることは、小ぶりでも存在感を示せるテレビ局を目指そう、ということです。どれだけ地域に密着できるかという意味で、「ふるさとCM大賞」はそれに繋がるソフトだと考えておりますので、これも大事に育てて参りたいと考えております。

 それから、テレビ朝日系列のドキュメンタリーの賞であるプログレス賞が番審の代表者会議で審査されまして、弊社がその賞を獲得できました。担当は、時代を反映して女性ディレクターでございます。これにつきましては番審局長から後ほど紹介があると思います。番組審議会というのは、そういう形で番組を非常に大事にして頂いているということに感謝申し上げたいと思います。今後ともよろしくご指導賜りたいと思います。本日はよろしくお願い致します。

末吉事務局長

 ありがとうございます。それでは議事に入らせていただきます。

 増子委員長、議事の進行をお願いいたします。

増子委員長

 番組編成に入る前に、及川先生から番組審議会委員代表者会議のご報告を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いします。

及川副委員長

 10月24、25日に金沢でテレビ朝日系列の番組審議会委員代表者会議がございまして、増子委員長の代わりに行って参りました。私は、この前の番審で発言したようなことについて申し上げました。

 第1点は、最近の拉致報道に関して、北朝鮮による拉致という主権侵害、人権侵害に対して、徹底した事実究明による批判を展開するということは、メディアとしての重大使命であるということは当然で、それは国民の知る権利を満たしていることでもあり、どれほど繰り返し報道されても良い。しかし一時帰国をしている拉致被害者と、肉親や友人らとの再会シーンを見ておりますと、つい貰い泣きをしてしまうようなヒューマンな情緒的な部分が拡大されがちになっているのではないだろうか。そうした報道ラッシュの中で、北朝鮮との国交正常化が持つ歴史的な意味、またあの国の有り様、そして日本の近代史の反省部分、そういったものをもっと深く、多面的に冷静に報道していくことも、おろそかになってはいけないのではないだろうか。そして10月17日からのスーパーモーニングでは、北朝鮮最新事情を取り上げておりまして、それを評価しました。冷静に「知りたい」ことと同時に「知るべき」ことの必要性を喚起していくこともメディアの重要な使命だと、最近の報道ラッシュを通して感じている、ということを申し上げました。

 第2点は、プログレス賞の審査に関わったことについて述べました。Aブロック6社の作品と最終審査に残った全国4社の審査に関わってみまして、各局とも力を付け、弛みない努力を続けておられることを強く感じたということ、地域に密着して、また地域の風土性や歴史に根ざした、しかも視聴者に支持されるようなドキュメンタリーなどの番組は、単に局の経営的な側面だけではなく、放送の自主性や自律性の基盤を強化していくことにも繋がるわけであり、更なる努力が求められるのではないだろうか。地上波デジタル化が進んでいくと莫大な設備投資が必要となり、また大変な競争時代が到来するわけで、地方局がキー局の単なる電波塔のようにならずに生き延びるためにも、地域に根ざした番組を作っていくことが大事でなかろうかということを申し上げました。

 そして最後にはメディア規制法が臨時国会で議論されるかどうかは別として、大変に大事な問題なのに、最近は何かぼやけているような感じがするので、一部修正とか一部凍結といったことではなく、あくまでも廃案という方向でキャンペーンをはる必要があるのではないか、という3点を申し上げました。

 各社の代表委員が意見を述べましたが、テレビ朝日の桂委員長がまとめたものが5点ございました。

 まず第1点は、キー局が発する番組についてのさまざまな評価の問題。

 第2点は拉致の報道について。吉永みち子さんも、現場にいてやはり情緒的なものが強すぎると感じていると言っておりました。

 第3点は若者のテレビ離れが始まっているのではないかということが提示されました。キー局は、様々な調査によってそれを裏付けることは今のところ出来ないということでした。若者には、今、深刻になっている新聞の読み方と同時に、テレビの見方も教えていく時代になったのかとか、メディアミックスをもっと重視していく必要性があるといったことをおっしゃっておられました。

 第4点は地方発信について。プログレス賞を獲るような優れた作品を全国枠で、という話は毎回出るのですが、それをどう具体化するかという時期に来ているのではないかということで、営業の問題も絡んできますし、広域のスポンサーをどう獲得するかといった問題があるのではないか。しかし地方局からの発信をグローバル化、全国化するということは大事であるということです。

 そして第5点はメディア規制法について、メディアを規制することは許すわけにはいかないということ。こういった点が浮かび上がったように思います。

 また三浦朱門さんは、プログレス賞は今回で第8回になるが、参加した作品は各局ともかなり力を付けてきており、この先への期待が持てるとおっしゃっておりました。その中で岩手朝日テレビの作品が奨励賞を獲りまして、大変に心強い、嬉しい思いをして参りました。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。ここに飾ってあるのが頂いた賞状とトロフィーですね。

(プログレス賞のトロフィーと賞状を閲覧)

 それでは議事に戻りまして、10月の番組編成からお願いします。

河邊業務局長

 それでは11月の番組編成についてご説明いたします。レギュラー番組の変更はございません。

 11月はスポーツ番組の単発が目白押しです。特にシーズンということもあってマラソンや駅伝中継が何本か編成されております。11月3日は「第34回全日本大学駅伝対校選手権大会」が、また17日「東京国際女子マラソン」には高橋尚子選手が出場します。24日「全日本大学女子駅伝」が生中継されます。また大相撲が始まりますので、恒例の「大相撲ダイジェスト」がベルト編成されます。30日には「IAT杯・富士大学旗争奪 第25回全国高等学校柔道選手権岩手大会」。11月23日に県営武道館で開催される同大会をダイジェスト版として編成して放送いたします。

 30日に放送されます「サントリーミステリー大賞スペシャル」を編成しております。今回で第19回になる同大賞受賞作、海月ルイ原作「子盗り」を映像化します。朝日放送が主催しておりますサントリーミステリー大賞は、新人ミステリー作家の登竜門と位置づけされる賞でございます。どうぞご覧下さい。以上です。

増子委員長

 番組編成についてご質問ございますか。

 それでは「相棒?警視庁ふたりだけの特命係」の合評に入ります。松本さんからお願いします。

松本委員

 初回の放送が見られなかったのが非常に残念なのですが、16日と30日の放送を見ました。

 水谷豊さんは以前に熱血先生ものをやっていましたし、今まで演じてきたキャラクターとはだいぶ違う印象だなと思いながら興味深く見ました。非常に穏やかで上品な物腰で、見ていて疲れるなと思いました。この状態でどこまで引っ張るのかと思ったら、最後まであの状態で行くこともあれば、キリッとした目つきを見せて、毅然とした態度をとるところなどは、良いなと思いました。

 個人的に言わせて頂ければ、一話完結ですから、その中で必ずワンシーンは、厳しい物申すという表情を見せる瞬間があったほうが、メリハリがあっていいなと思いながら見ました。

 水谷豊さんと高樹沙耶さんの関係はどこかで見たような記憶があると思ったら、「はぐれ刑事」でもそうですよね、流行りなのでしょうか。

 それから、テレビ朝日に限らず他局でも刑事もののドラマが随分増えましたね。これは何かを反映しているのかなと思いながら見ておりましたら、昨日の水谷豊さんの台詞の中で『こんなことが積み重なって警察が信じて貰えなくなるのが恐い』という、非常にメッセージがこもっているなと思っても見ました。

 昨日の回で言えば、『俺はれっきとした立派な下着泥棒だ』という台詞で笑わせてくれる場面があったり、楽しく見れる番組だと思います。メッセージだけに偏ってしまうと、見ているうちに暗くなってしまうのですが、このバランスが非常にとれていると思いました。

 それから初回を見逃した為ですか、必ず最後に登場する岸部一徳さんの役どころが鍵を握っているにも関わらず、何故この人がキーパーソンなのか、というクエスチョンマークを引きずったまま見終わってしまって。ですから、初回から見れない人もいるわけですから、時々、役どころの説明的な部分があるか、若しくは番組最後に登場人物のテロップが流れる時にでも役どころの紹介があれば、私のような疑問も解消できると思います。以上です。

宮野委員

 この「相棒」は、土曜ワイド劇場でも何回か放送していたシリーズがドラマになったんですよね。

横舘取締役

 そうです。3話放送しました。

宮野委員

 私は水谷豊さんが好きですし、一話完結ものが好きで、刑事ものも好きで、暗くなくて最後には事件が解決して終わるという意味では、このドラマはとても見やすいです。

 「相棒」も、「オヤジ探偵」や「逮捕しちゃうぞ」も同じようなパターンですが、明るい終わり方に好感を持って見ています。人間関係をあまり詮索せずに、娯楽ドラマだと思って見れば非常に面白いですね。岸部さんとの関係も話すと長くなるくらい様々なこともあるようですし。一話完結のドラマではあるけれど、最終回には何かあるんじゃないかという楽しみがあって、私は最後まで見ていきたいと思います。

 また、現実とかけ離れているということが見やすい理由のひとつだと思います。あまりに現実的ですと考えさせられることもありますし、こんな事は絶対に無いなと思って見るから楽しいのでしょうね。登場人物の細かい説明はホームページにも出ていますが、その相関関係を頭に入れて見るのが楽しい人と、何も知らずに見たい人と、個人差があると思います。

 私的には、単に娯楽ドラマとして楽しんでいます。この秋は明るい一話完結ドラマが多くあって、こういう時代だからこそ、明るいドラマを作っていって貰えたら、テレビ離れも防げるんじゃないか、という軽い気持ちで見ております。楽しかったです。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは石井さんお願いします。

石井委員

 私も初回は見逃しまして、16日と23日を見ました。初回を見なかったせいか、特命係の位置づけが分からなかったのですが、2話とも上手くまとまっていたと思います。

 「相棒」は第一印象としては、「刑事コロンボ」を相当意識しているなと感じました。つまり刑事の個性をいかに出すかということに腐心していると思いました。言葉遣いや態度、そして締めの部分で必ず一喝するといった刑事像、個性づくりには努力されていますね。

 ただ、寺脇康文演じる亀山刑事は、もう少し主役の杉下刑事を引き立てるようなアクションをするだとかあっても良いと思います。体が大きい割には彼の良い個性が出ていないと思います。タイトルバックで2人の写真が並んで出るわけですから、本来は2人が主役なのに、どちらかと言えば水谷豊演じる杉下刑事だけにどうしても焦点があたって、完全に脇役になってしまっているのが少し勿体なく思えます。

 それから、この2話に共通するのが、たまたまでしょうが、夫が妻をかばって罪を犯してしまい、そしてどちらかと言えば有名人が犯人だったということ。この有名人云々という部分は「刑事コロンボ」を相当意識していると感じました。

 それから結構、芸術的な味わいがありますね。例えば16日の回の最後のほうでは、クラシック調の音楽を使って静かに終わる。そしてカメラのアングルも上から俯瞰する形で撮っていて、音楽も撮影も芸術的でとても綺麗でした。

 23日の回では、日本の伝統的な部分を出していて、通常の刑事ものにはない、ひと味変わった番組で、非常に面白く拝見させて頂きました。次の回はどういった撮り方をするのかが本当に楽しみだなと思いました。

 ひとつ注文を付けさせて頂くとすれば、トリックというか決め手が16日の回では試薬に反応するシアン、23日の回は手拭いのルミノール反応という、2つとも似たような解決方法で、もっと別の方法で事件の解決に至るようなストーリーが良かったと思います。

 他の回を見ていないので何とも言えませんが、よく似ていて単純すぎて、やや面白くない。もう少し事件の解決に至るトリック性、或いは意外性が話の筋の中に入ってくると楽しいのかなと思います。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは及川先生お願いします。

及川副委員長

 お三方のご意見に全く同感ですので、個々のものについては省略します。10月23日の回は、寄席を舞台にした作柄になっておりましたが、見た中ではこの回がいちばん生きが良かったかなと思います。お終いに夫が白状して、妻が、もしかしたら最後になるかも知れない高座を2人の刑事と一緒に見る場面などは、中でも一番良かったと思います。

 水谷豊が演ずる右京、そして寺脇康文が演じる薫、それぞれに元夫婦関係にあった小料理屋の女将、一方の薫は鈴木砂羽が演ずる女性と同棲しておりますが、こういった人物設定の仕方ですね。右京は本当はキャリア組だった切れ者の刑事で、いつもスーツ姿であり、一方、直情型でお人好しという薫はジャンパー姿である。対比的に作られているなと思います。右京の友人であった岸部一徳が演ずる小野田は、考えてみれば検事ではなくて警察庁の幹部ですね。この小野田と、いわゆる窓際に追われてしまった右京との関係ですとか、警視正や参事官といった警視庁幹部、捜査一課の普通の刑事たちと、特命係りという対比。そういった図式的な対比が多いですね。ですから、うっかりすると面白くなくなる作り方です。しかしそうならずに、隠ぺい体質を持った官僚社会とか、警察のような上下の階級制度が厳しい階級社会、その中でのキャリア組とノンキャリア組との対比と言いましょうか、そういったところに生ずる人間的なドラマ、それに対する庶民大衆の正義感に依拠したような批判的視点が絶えず働いているところに、我々視聴者にとっての魅力があるのではないかと思います。対比による人間性の描写が、本当に人間的に生きるということは、どんなことなのかという、普遍的なテーマに沿って、このドラマの魅力の源泉になっているのではないかと感じます。

 謎解きにはいろいろと無理があったり、繰り返しみたいなものがあるようですが、単なる謎解きに流れない面白さ、人間ドラマとしての資質があると思います。そういったところが、このドラマを魅力的にしているのではないかと思います。

 しかし右京が何故、窓際の閑職に追われたのか、しかも今ああいった状態に置かれいても真面目に取り組んでいるという、彼の内面をもう少し掘り下げて欲しいですね。そしてそれを遠くから見守りながら側面的に援助している警察庁幹部、この辺りをもう少し丁寧に描いて欲しいです。一話完結であれば、視聴者も多いでしょうから、人間関係の事情をもう少し丁寧に描いてはいかがかと思います。

 いずれ、水谷豊のキャラクターもあって、切れの良さがありますね。それからロケハンで苦労なさっていると思いますが、ロケーションが良いですね、迫力があります。それから石井委員からお話がありました、レベルの高い音楽、それからカメラワークもなかなかのものだと思います。十分に楽しめるエンターテイメントになっていると思いました。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは大坊さんお願いします。

大坊委員

 私は初回と3週目を見ました。見ていましたら合評のことを忘れて、のめり込んでしまいました。窓際族になってしまった切れ者のエリート刑事の右京と、お人好しの亀山刑事というキャラクターが大違いであることがポイントだなと感じながら見ました。

 階級組織の中で、べらんめえ調の態度や言葉遣いで、本当にそうなのかなと。ドラマだから面白おかしくしているのでしょうが、決してそうではないと思いながら見ました。

 と言いますのも、県警を去年退官された知り合いにたまたま会う機会があって、「相棒」のようなことはあるのかと聞きましたら、「そんなことは絶対にない」とおっしゃってました。組織捜査の中で一本化しなくてはならないのに、それが特命係だとか捜査一課だとかで喧噪するようなことは無いと。そんなことをしていたら窓際どころではなくて、即クビだよというような話をしておりました。

 ですから、現実の警察とは全く違うようですが、「相棒」は一話完結のドラマとして、私は楽しく見させてもらいました。

増子委員長

 はい、ありがとうございました。小川口さん、お願いします。

小川口委員

 私は、初回のスペシャルと23日の回を見ました。アメリカ映画の刑事ものでも、しっかり者と三枚目の刑事コンビが活躍するというものがよく見受けられますが、「相棒」もその流れを汲んでいるなと思いました。水谷豊が演じる杉下刑事は東大卒の元エリートという設定ですが、初回スペシャルを見ていて肩が凝りました。いつも真面目で、キリッとした目のアップで締めておりましたが、もう少し彼なりのユーモアやオチがあっても良いなと思いました。寺脇康文が演じる三枚目のボケ役は、皆さんがおっしゃるように、もう少し活劇な部分があっても良いのではないかと私も思います。

 それから、スペシャルで出てきた会社の役員室の机の配置や、壁に銃が飾ってある社長室に違和感がありました。最後にはその銃で自殺を図るというストーリーは何となく読めましたが。しかし、まず銃を飾ることなんて出来ませんよね。きちんと箱に納めて施錠しておかなくてはいけないのに、全く現実離れしている。役員室もあんなに女の人がいるものかなとも思いましたし、小間物も不足している。ドラマだから良いのかなということで流そうとも思ったのですが、あまりにもズレているなと思いました。その辺りは承知の上でドラマとして作っているのでしょうが、その辺りが気になりました。

 それから、泉谷しげるがダイナマイトを体に巻き付けて警視庁長官に会わせろと乗り込んできましたが、それくらいのことでそこまでやるのかなと思ったり、ここでも誇張が見受けられました。ドラマとはいえ、ややオーバーだなと思いました。もっと背景作りにリアリティさが欲しいと思いました。それから23日の回は3作目ということもあってか、作りが落ち着いてきまして面白かったです。

 ただ、スタート時に比べて、寺脇さんの亀山刑事の役柄が1作目とは違って板についてきたのですが、おとなしすぎてきたのが気になりました。また落語の高座の楽屋の様子や、1か月に3つの出し物をするといった情報もあったりして面白く見させて頂きました。初回スペシャルの2時間というのはやや長い感じがしましたので、やはり日本の刑事ものは1時間番組が丁度よいと思います。以上でございます。

増子委員長

 ありがとうございます。それでは植本さん、どうぞ。

植本委員

 30日の回を見ました。タイトルですが、私は「特命係」という意味がまず分かりませんで、特別チームのようなやり手の刑事の話かと思っていましたので、私たちの世代だとピンと来ないと思いました。

 私は、刑事ものは殆ど見ないのですが、期待していたよりはかなり面白かったです。水谷豊さんは「熱血先生」というドラマシリーズに出ていましたから、正義感ある人というイメージがあったので、キャラクターに信頼を持って見ることが出来ました。寺脇さんは「王様のブランチ」という情報番組で人気があったので、他の刑事ものよりは役者さん達に共感を持てました。

 最近は、トレンディドラマも殆どが面白くないし、何を見てよいのかも分からなかったので、そういうものに比べると筋立てもしっかりしていたので、感触良く見ることが出来ました。私が見た30日の回は警察内の不祥事という、実際に世間を騒がせた出来事をイメージさせるもので、倫理感をメッセージに込めているのでしょうが、本質に迫ることがなく、何となく済ませてしまっている。結局はドラマというフィクションなのですから、結論を出すような、納得できる筋立てにして欲しかったなという、最終的には消化不良的な印象が残りました。

 もう少し筋立てにインパクトがあると、若い層もこのドラマに食い付くのではないかなと思いました。

増子委員長

 ありがとうございます。松尾さん、お願いします。

松尾委員

 まずドラマそのものを見る前に、だいたいこういった話だろうというのが頭にありましたので、このキャスティングで個性の異なる2人の刑事が活躍するドラマだということだったので、やはりメル=ギブソンですとかジャッキー=チェンといった映画がありますので、ああいった映画とどう違いが出せるのかと、それ自体は斬新な設定ではないので、どの程度個性が出せるのかなと、その辺を思いながら拝見しました。

 実際にどのように見たかと言いますと、結構引き込まれて最後まで見てしまった、というのが実際であります。夢中で見ていたようでして、先ほど音楽や撮り方といったお話も出ておりましたが、そういったことにも全く気付かないままに集中して見ていましたね。面白かったと思います。審議会で取り上げると見なくなってしまう番組もありますが、この番組は来週からも見たいと思います。

 それから、この手の番組としてはテーマが重いかなと思いました。単純な勧善懲悪ではないですよね。けれどもあまりその重さを感じさせないで、画面が明るい感じがしましたし、主役の2人のキャスティングのお陰かなと思いました。バラエティ番組ですと見ている間だけ楽しく笑って、後には何も残らない。それはそれで良いのですが、これは多少の余韻が残りました。これで良かったのかなという、考えさせられるところがありました。

 それから、ゲスト出演者を選ぶ際の着眼点が良いと思いました。3話目の落語の回では、小宮さんは学生時代は落語研究会にいた人ですよね。そういう人を上手くキャスティングして、しかもお笑い系の人にシリアスな演技をさせている。お笑い系の人がシリアスな演技をすると結構良い味を出すことが多くて、この時もとても感心して見ました。そしてその奥さん役の大西結花さんは元アイドルの人で、その人が元アイドルの役をやるというところが、実際と重なって見えまして、なるほど良いところに目を付けているなと感心しました。

 映画や小説でもそうですが、最初の5分ほどの掴みを見て、つまらなければ他のチャンネルに変えてしまいますが、この番組は意外に惹き込まれる度合いが高くて、その点では合格じゃないかと思います。

 それから、推理小説によくあるトリックといった要素的な面で言いますと、やはり少し物足りないかも知れませんが、及川先生もおっしゃっていましたように、推理的なものよりも、人間ドラマとして見た方が良いなと私も思いました。たまたま「刑事もの」という背景があるだけで、それを抜きにして人間ドラマという要素だけで見ても、非常に良いものがあったと思います。以上でございます。

増子委員長

 ありがとうございました。笠川さん、お願いします。

笠川委員

 私もほぼ毎週見ました。私の年代の刑事ものと言いますと「太陽にほえろ」とか「あぶない刑事」といった現実離れした派手な撃ち合いが売り、というものが多かったのですね。でも「相棒」は、今どきの社会風刺が折り込まれていて、その中に人情味もあり、結構面白い番組だと思いました。2時間ドラマを1時間に仕上げたような展開の早さがあって、飽きずに軽く見ることが出来て、個人的には好きな作りですね。

 それから寺脇康文さんの軽さについてですが、以前に「傷だらけの天使」で水谷豊さんが演じていた役割を「相棒」では寺脇さんが演じていて、その時に落ち着きのない演技をしていた水谷さんが「相棒」ではカチッとした演技をしているという、昔の番組を思い出して比較をして見るのも面白いかなと思います。

 それから、2人の会話の間合いが絶妙で、会話に惹き込まれていくのも楽しめました。また、一話完結で必ず謎が解かれていく点は「水戸黄門」的とでも言いましょうか。軽いタッチに仕上がっているので、内容について強い印象は残らないのですが、娯楽番組として見るならそれで良いのかな、と思うところもあります。それから新しく作られたコンビとしては、私は好感を持って見ることが出来ましたし、これからも楽しみにして見たい番組の一つでもあります。

 松尾さんもおっしゃったのですが、番組審議会で審議すると見なくなる番組が多々あるのですが、この番組は続けて見たいと思いますし、これからもシリーズ化していくのかなという楽しみもあります。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。このドラマは非常に変わったドラマと言いますか、今まであまりお目にかかったことが無い感じがしました。

 まず第一に、水谷豊が演じる右京という警察官ですが、ああいった警察官は現実の警察社会の中には絶対に存在しないタイプの人ですよね。多分、それがこのドラマの面白さを引き立てているのかも知れませんが。

 第二にアクションが無いです。皆さんがご指摘になったように、多分、このドラマは刑事ものと言っても「刑事コロンボ」や「シャーロックホームズ」「ポアロ」といった謎解きの系統に属するドラマでしょう。そこで感じたのは、やはり皆さんがご指摘したように、謎解きだけではなくて社会性というか……。例えば下着泥棒の話かと思って見ていると、それが気付いてみたら官僚社会のトカゲの尻尾切りをして生きて行く組織の論理に対する批判とか、或いはエリートに対する非エリートの批判といった、非常に重い事を軽いタッチで描いていて、気付くとそういったものに引きずり込まれているという……。これは相当手の込んだドラマだという気がします。例えば、初回スペシャルのダイナマイトにしろ、昨日の下着泥棒にしろ、導入部分ではその話かなと思って見ていると全く違うところに立たされているというか、不思議なドラマだと思います。このドラマの脚本家はどなたですか。

横舘取締役

 興水さんという今売れっ子の脚本家です。

増子委員長

 やはりそうですか。相当手の込んだもののような気がしますね。そして結構台詞が重いんです。例えば昨日の回では『正義というものは残酷なものですよ』とか、極めて哲学的な台詞がチラチラとありますね。ただの軽いドラマではなくて、何かを意図しているような気がするドラマですね。そして敢えてキャッチフレーズを付けるならば「窓際ドラマ」というか、特命係という設定がすでに窓際ですよね。初回スペシャルにも調査室に押し込められている典型的な窓際が出てくる。そういうトカゲの尻尾切りで生きて行く組織の論理に対する怨念というか、ノンキャリのキャリアに対する怨念というか、そういうものがベースにある気がします。

 リストラされたりクビになったりという鬱々としている時代の空気や風潮に何となく合っている、というか共感を呼ぶ要素が今の時代にあるんじゃないかと思います。先ほど伺いましたら視聴率も10%から12%あるということで、そういうことでついつい見てしまうんじゃないかなと。

 なかなか手の込んだ、相当考え抜いたものだと思います。それが一つ間違うと空回りすることがあるのだけれど、近来になく相当力を入れたドラマだと思いました。

松本委員

 増子委員長は非常に手の込んだ作りだと言いましたが、ストーリー自体は非常に練ってあると思いますが、映像の中に「エッ?」と思う箇所がいくつかありました。主演が演技している後ろを歩く婦警さんの歩き方や、特命係の部屋を覗き込んでいる捜査一課の刑事さんの演技が、凄く素人臭くて、素人のエキストラでも使って撮影しているのかと思うような場面が度々見うけられて、その度に気持ちが削がれてしまうんですね。

 それから、ドラマですから非現実的なことがあっても勿論それは良いのでしょうが、かといって全部が作り話では、大人のドラマとしては面白みに欠けるのではないか、やはりメリハリがあったほうが良いのではないかと感じました。具体的に言いますと、寺脇さん演じる薫が警察署長に会うシーンで、応接室に入る時に最初からすでにポケットに手を突っ込んでいるんですね。

 あれは気持ちが激高した時に「何だよ」と思って手を突っ込むからメリハリが出るのであって、キャラクター性を出すためとはいえ、最初からあれでは面白みがないな、とかですね。些細な加減だとは思うのですが、物足りないなと感じていた部分です。

及川副委員長

 ディレクターもなかなかだと思います。昨日の話の最後のほうで回転寿司のシーンで、小野田が食べた皿をまた元に戻すので右京がそれを咎めていましたね。ああいうのはシナリオには無くて、撮影時に生まれる演技だと思ったりもしまして、ディテールにも神経が届いているなと逆に私はそう思いました。

 それから小説でも使いますが「タンゼントストーリー」という方法を使っていますね。AからBに向かって進行するドラマと、CからDに向かって進行するドラマが交わることによって、AからBに行くはずがDに行ってしまう、という手法なのですが、昨日の下着泥棒と泥酔者の保護がそうですね。ちょっとした接点で変わってしまう。この脚本家も長けた人だなと思いました。

 今後、望みたいことはキャリアとノンキャリアの相棒同士の齟齬と言いますか反発、しかし正しいことを貫くという所での連帯や共有感覚、そこのドラマをもう少し豊かに膨らませて欲しいなと思います。

増子委員長

 確かに今のところ、その辺りがしっくりきていませんね。極端に言えば居なくてもよい、といいますか。及川先生もおっしゃいましたが、回転寿司が出てくる辺りは他のドラマと違う点ですよね。高級官僚が回転寿司なんて行きませんからね。

笠川委員

 松本さんが背景に映る人達がわざとらしいとおっしゃいましたが、私はあれも面白いと思います。捜査一課の人達が特命係で何をやっているのか、ちょっと覗いてみたい、聞き耳を立ててみたい、という人間の心理が描かれている気がします。

松本委員

 ただ映る度に、人の配置から動きも表情も大抵同じなんですね。それは嘘だろうと申し上げたいんです。時間が経つにつれて、同じ覗いてみたいというにしても、もっと違った表情になって当たり前なのに、ずっと同じ面子で同じポジションで、同じ表情なので、嘘くさく見えてくるんですね。だから素人臭く見えるんだと思います。やけにお尻を振って歩く婦警さんが映るから、この人が何か鍵を握っているのかと思うと、ただ単に通り過ぎるだけの役だったりして、それならそこまでお尻を振って歩く必要はないんじゃないかと思ったりして。あれはもしかしてお尻を振っていたのではなくて、歩き慣れていないだけだったのかなとも思ったり。そういったことで目についたんですよ。

笠川委員

 そうですか。私は単に笑う部分だと思って見ていたので。

増子委員長

 このドラマは、本物の警察と同じ部分は殆どありませんね。背景から何から殆どがフィクションだと考えて良いと思います。実際の警察から見たら、存在しないような設定ばかりでしょうね。外国のドラマですと、よくありますね。例えばホワイトハウスを題材にしたドラマで、批判的なテーマにしたり。日本のドラマもだんだんに大人になってきたのかなとも感じますね。

及川副委員長

 警視庁や警察庁からは苦情といったものは来ていないのでしょうか。

横舘取締役

 今のところ内部の設定や、内部の汚いのがあるといった、警察関係からの苦情は一切ないそうです。

河邊業務局長

 この類いのドラマは最後に必ず「これはフィクションです」というスーパーが出ますから。

増子委員長

 いかがですか、他に何かございますか。しかし、このように非常にポジティブな合評というのは珍しいですね。それでは本日の審議会を終了します。ありがとうございました。

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

特になし

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 11月度単発番組編成予定表

◎ 10~12月タイムテーブル