放送番組審議会

2月(第85回)

概要

 岩手朝日テレビの第85回番組審議会が平成17年2月24日(木)、盛岡市盛岡駅西通の岩手朝日テレビ会議室で開かれた。

合評番組は「新しい風になれ~グルージャ盛岡の1年~」。

  • 選手たちの、夢と現実の間での葛藤をよく描いた作品である。監督や主将に密着して、1年にわたり追い続けたのは評価される。
  • 仕事と両立しなげればならないアマチュア選手の頑張りと、初年度の目標を達成して次の段階に進んだというストーリーに好感を持った。
  • 人間ドラマとして共感した。チームが上位になるほど、プロ選手が入ってきて、アマ選手の居場所が無くなるという、もどかしさや辛い気持ちが表現されていた。
  • ナレーションは、感情を抑え淡々としておりよかった。場面ごとに的確なナレーションをしていて、この番組をドラマに作り上げた要因にもなっている。
  • 見終わって、重い、辛い、大変苦しいイメージしか残らなかった。スポーツなのだから、どこかに楽しい部分が欲しい。葛藤や悩みは、どんなチームにもある。
  • サポーターや行政担当者など、幅広い声を集めて欲しかった。また、取材カメラの数が少ないためか、見たい映像が十分にカバーされていない。

という意見が出た。

出席委員は、増子 義孝委員長、笠川 さゆり委員、宮野 裕子委員、村田 久委員、大坊 忠委員、松本 直子委員、松尾 正弘委員、石井 三郎委員の8名。欠席委員は、高橋 真裕委員、小田島 利昭委員の2名。

議事録

1.開催日時

平成 17年 2月 24日(木)午前11時~

2.開催場所

岩手朝日テレビ 3階会議室

3.委員の出席

委員総数 10名

出席委員数 8名

委員長 増子 義孝

委員 石井 三郎

委員 笠川 さゆり

委員 大坊 忠

委員 松尾 正弘

委員 松本 直子

委員 宮野 裕子

委員 村田 久

欠席委員数 2名

委員 小田島 利昭

委員 高橋 真裕

会社側出席者名

代表取締役社長 川崎 道生

代表取締役専務 村上 昇

常務取締役総務局長 伊東 正義

取締役営業局長 辻 一成

技術局長 佐々木 正樹

報道制作局次長 浅田 英利

番組審議会事務局長 小倉 潔

4.議題

(1)3月単発番組について

(2)番組合評

「新しい風になれ~グルージャ盛岡の1年~」

(3)次回の審議会

開催日:

平成17年3月24日(木)

合評課題:

「スーパーモーニング」

月~金曜日 8:00~9:55

5.概要

◎選手たちの、夢と現実の間での葛藤をよく描いた作品である。監督や主将に密着して、1年にわたり追い続けたのは評価される。

◎仕事と両立しなげればならないアマチュア選手の頑張りと、初年度の目標を達成して次の段階に進んだというストーリーに好感を持った。

◎人間ドラマとして共感した。チームが上位になるほど、プロ選手が入ってきて、アマ選手の居場所が無くなるという、もどかしさや辛い気持ちが表現されていた。

◎ナレーションは、感情を抑え淡々としておりよかった。場面ごとに的確なナレーションをしていて、この番組をドラマに作り上げた要因にもなっている。

◎見終わって、重い、辛い、大変苦しいイメージしか残らなかった。スポーツなのだから、どこかに楽しい部分が欲しい。葛藤や悩みは、どんなチームにもある。

◎サポーターや行政担当者など、幅広い声を集めて欲しかった。また、取材カメラの数が少ないためか、見たい映像が十分にカバーされていない。

6.議事の内容

小倉事務局長

 第85回放送番組審議会を始めます。

増子委員長

 それでは川崎さん、一言お願いします。

川崎社長

 当社はデジタル化に向けての社屋の増改築工事を10月の完成に向けて作業しております。

 明るい話題としましては、サッカー中継日本×北朝鮮の視聴率がテレビ朝日で47.2%、岩手朝日テレビでは48.5%という全系列でトップの視聴率を頂戴しました。

 また来月には今期の業績等々のメドがつくと思いますので、ご報告申し上げたいと思います。本日もよろしくお願いいたします。

増子委員長

 3月の単発番組についてお願いします。

辻営業局長

 ご説明します。3月は期末期首週間に入りますので、スペシャル番組、レギュラー番組の拡大強化バージョンが多く編成されます。

 また3月25日には「2006FIFAワールドカップアジア地区最終予選 イラン×日本」を編成します。アウェーの試合で、キックオフの時間が最終的に決まっていないので、仮で22:24から編成しております。同じく3月30日19:00~21:33「日本×バーレーン」こちらは日本で試合が行われます。

 視聴率につきましては、先ほど川崎が申し上げたように、日本×北朝鮮戦が高視聴率を頂戴しました。

増子委員長

 それでは「新しい風になれ~グルージャ盛岡の1年~」の合評に入ります。

大坊委員

 非常に良い作品です。選手たちの、夢と現実の間での葛藤をよく描いていましたし、1年間追い続けた努力は大変なものだったでしょう。特に報酬を貰うプロと無報酬のアマチュアの混成チーム内での葛藤、これは精神面で非常に厳しかったと思います。1年でリーグ1部にチームを昇格させた武藤監督とその家族などに密着して番組を作ったことは素晴らしいですし、番組に惹き込まれる感じがしました。見終わって爽やかな感じがしました。

笠川委員

 私は全く逆の思いで見ました。「夢に生きるか現実を見つめるか」とナレーションがあり、番組が進んでいくにつれ、このサッカーチームは地域活性化をも含めた形で、行政が勝手に作ったものであり、自分たちは望んでなかったという言葉もありました。社会人が頑張ってるんだ、応援しなくてはと思って見始めましたが、最後には疲れてしまいました。制作者の思い入れなのか、グルージャの辛さが分かり過ぎているから、それを前面に出してきたのか。見終わって、重い、辛い、大変苦しいイメージしか残りませんでした。スポーツですからどこかに楽しい部分がなくては。そんなに辛いなら辞めたら?と言いたくなる思いでした。

 先日、他局でグルージャのサポーター募集の番組がありました。グルージャが子ども向けサッカー教室をしたり、どんな活動をしているかなど、短時間でまとめていました。こちらのほうが様々な努力をして頑張っているという思いが伝わってきました。

 今回の番組に関しては、良い感じを持たずに見てしまいました。

 葛藤や悩みはどんなスポーツチームにもあると思いますが、その中に楽しさを見い出せば、もっと爽やかに見れたと思います。

石井委員

 私の職場にもサッカーチームがありますが、アマチュアのスポーツチームの活動は本当に大変です。仕事との両立をするだけで精一杯というのが現実だと思います。そんな大変な環境で頑張るアマチュア選手が、プロと一緒にプレイし、初年度の目標を達成して次の段階に進んだというストーリーに好感を持ちました。

 番組の最初のほうは、どんな趣旨の番組か分からず、もどかしい所がありましたが、見ていくうちにジワジワと良さが分かってきました。アマチュア選手がいかに頑張っているかを言いたいがために作られた番組であると分かって、非常に良い番組でした。

 字幕や選手名の紹介が小さかったので、その辺りの工夫をして貰えたら、導入部分からもっと入り込むことができたと思います。

見終わって、それなりの余韻が残りました。

監督とキャプテンに焦点を当てた作り方も良かったと思います。チームが変貌していく過程において、葛藤や摩擦を乗り越えてきたことが分かる番組でした。

 要望としては、番組の趣旨から外れるかも知れませんが、グルージャは町おこしとして期待されていますから、サポーターの声や行政のインタビューも織り交ぜるなどしたら、もっと盛り上がったと思います。今度は観点を変えて番組を是非作ってほしい。

松尾委員

 人間ドラマとして共感しました。J1に昇格するには最短でも4年かかるそうですが、現時点で20代後半の選手が多いので昇格する頃には引退する選手が多いだろうと思いましたら、その通りの番組進行で、勝てば勝つほど居場所が無くなる。上位になるほどプロ選手が入ってきますし。もどかしい、気持ちのやり場がない葛藤、そんな辛い気持ちで番組中盤まで見ました。

 後半は、試合にどんどん勝ち、その喜びが伝わってきましたので、最後はヤッタという気持ちになりました。

 精神的葛藤に焦点を当てた1時間番組ですので、切り捨てた部分が多かったと思います。試合の組み立てや選手の技術的なものは一切なかった。また、あまり役に立たないまま、逆に足並みが乱れたとされる3人のプロ選手にはとても気の毒な番組の作りでした。チームの連勝の影にはプロ選手の功績は少なからぬものがあったと思うので、もう少しフォローしても良かったと思います。

 矢田アナは落ち着いてしっかりしていました。ただしNHKの某番組に語り口調が似ていると感じましたが、ドキュメンタリーの定型として確立されつつある語り口調なのかと納得しました。

 スポーツは思い入れがあればあるほど、見て楽しいものです。今回の番組は精神的な面に入り込んでいて、確かに重苦しい部分がありました。しかし次のステップは深く一歩入り込んで見られるでしょう。非常に良い番組だったと思います。

松本委員

 私はあまりサッカーを知りませんが、最後まで飽きずに見ました。吉田キャプテンの日常を、家庭にまで入り込むことで、ドキュメンタリーではあるがドラマチックな仕上がりになっていました。

 ナレーションも音楽も良かった。

 映像も、チームが上向きな時、逆に落ち込みそうな時、どちらも雰囲気が伝わってくる作りで、全体としてとても洗練された印象をうけました。試合の映像は物足りなかった。ロスタイムに点が入り勝った瞬間の見せ方、喜びの場面、盛り上がりに欠けたのは映し方のせいかもしれない。サポーターや地域とチームとのつながりに殆ど触れていなかったのも残念でした。これについては絞り込んだ作りだったので仕方ない、切り捨ててしまって正解だったという考えもできるでしょう。

 いずれにしろ、満足度の高い番組でしたし、グルージャのPRの良い手助けが出来たと思います。グルージャを知らない人もまだまだ多いですから、厳しい状況ですが、今後も切り口を変えて折に触れて番組を制作し放送することで、グルージャの地域おこしの後押しを出来るのではと思います。

村田委員

 この番組を見た人は、グルージャを応援しようという意識が芽生えたでしょう。盛岡にグルージャというサッカーチームがあることを知らしめた意味では成功でしょう。全体的には暗い重苦しい内容でしたね。矢田アナの感情をむき出しにしない淡々と抑えたナレーションが救いになっています。場面場面に的確なナレーションをしていました。ナレーションが、この番組をドラマに作りあげた要素の一つだと思います。欲を言えば、その裏側にあるサポーター、行政、スポンサー企業の意見などが欲しい気もしますが、出せなかったのでしょうね。そこを抑えたお陰で、逆にこの番組は成功したのでしょう。

 でも点数が入った時にサポーターの喜ぶ姿を映しても良かった。カメラの台数も限定されますし、予算的な問題もあろうと思いますが、それは番審的な見解であって、一般の視聴者はそういった目で見ませんから。サポーターの様子や、ファンクラブに入るとどんな特典があるといった情報も織り交ぜたらより良かった。新潟や仙台、山形と比較すると観客もチラホラで「新しい風」という意味ではこれからが大切だと思います。これからも後を追う形で第2弾、第3弾と番組を作って頂きたい。私はサッカーがあまり好きではありませんが、少し応援しようかと思い直させた番組でした。

宮野委員

 この番組の一番の印象は構成が良いこと。東北大会で勝ったという結果から入ったので、非常に良かった。矢田アナのナレーションも、彼の思いが滲み出ていました。ファンの一人として構成も良かったし、グルージャに思い入れがある人が番組を作ったのだと分かって良い番組だったと思います。ファンの方々は見てとても勇気をもらい喜んだことでしょう。

 一般市民の立場として番組をみた場合、グルージャはプロには給料を出し、アマチュア選手は仕事とサッカーを両立している、という二面性がよく分かる番組でした。

 次の段階としては、このグルージャをどう盛り立てていくかを考えたい。グルージャを中心として地域おこしをしていきたいと考えておりますので、この番組の延長線上として、コーナーなどを考えて頂ければと思います。

増子委員長

 結論から言うと、物凄く良い番組だったと思います。どうせドラマ仕立ての頑張れ頑張れという番組だろうと思って見始めましたが・・・。淡々としたナレーションが良かった。出てくる人たちの言葉も作り物ではない、考えていることが素直に言葉に出ていました。番組に惹き込まれました。つまり、人間ドラマとして作られていましたね。ドラマチックなゲーム展開はなるほどあったけれども、普通の人間の悩みや辛さ、痛みが淡々と出ていて、巧まずして深みのあるドラマになっていた気がします。

 絶叫する番組ばかりお目にかかるので、こういったものはしみじみと見られるなという感じがしました。

 単なるサッカーの番組を超えて、知らない人間でも自然に応援したい気持ちが沸いてくるという意味で、この番組は大成功だった気がします。つまり、勝てば勝つほど自分の居場所がなくなる、それでも岩手出身の選手が若手の選手にバトンタッチしていく過程で地域活性化に繋がれば良いと思う。しかし期限を決めて物事を進めていることに腹が立ちました。ついこの前まで素人だった選手たちを一度に強くしようなんて、かなりのプレッシャーをかけている気がして、もう少しゆっくりやったらいいんじゃないか。そのためには少額でも普通の人がお金を出すようにならないとそれは出来ないし、そうなることで本当の地域活性化になる気がする。戦略的にそこをどう考えるかというのもあると思います。

 人間というのは不思議なもので、力は一定なのに、監督の一言とかちょっとしたきっかけで本来の力以上のものを出して勝っていく。とても不思議ですね。その様子が番組に出ていた。近頃見た番組の中でも非常に良い番組です。淡々としていた点がとても気に入りました。矢田アナはナレーターとしては相当なものだと思います。

宮野委員

 素人の選手が自然な言葉で話せるくらい親しくなれるのは、大変なことですよ。ですからあまり手広く出来なかったんだと思います。泣きながらでもカメラに向かって話が出来るところまで入り込めるなんて、矢田アナはこの人たちとどれほどの付き合いをしたのかと感心しました。

増子委員長

 印象的だったのは、矢田アナが総括を求めてキャプテンに「どうですか」と聞いたところ、「言えない」と言ったこと。本当にそうだろうな、様々なことがありすぎて、簡単に安物の言葉では言えない、それが物凄く出ていましたね。

村田委員

 武藤監督もとても正直な方ですよね。「神様というのは、本当にいるんだな」なんて言葉が自然に出てくるなんて。飾らない、人間的に凄い人だと思います。それに吉田さんが絡んで。非常に正直さが目について、好感が持てました。

宮野委員

 それを矢田アナが引き出したのですから、たいしたものですよ。

増子委員長

 それにしても、よくこういった番組を許したというか、最近の流れとは毛色の違う番組ですから。確実に番組制作の力量は向上している気がしました。その辺りを聞きたいですね。

浅田報道制作局次長

 ありがとうございます。グルージャについては以前から盛り上げて行きたいと思っておりました。矢田がこの番組をやりたいと企画しましたので、1年間追ってみようということになりました。スポーツをヒューマンドキュメントに変えるという意味で、対象の葛藤をきちんと出していく。そして勝ったらいいよね、昇格出来なかったらそれもまたドキュメントであろうということで腹を括って矢田もやっておりました。

 皆さんからご意見がありましたように、選手と監督の自然体のインタビューがとれた点は、やはりそれだけ矢田が入り込んでいたということであろうと思います。彼は仕事が終わってから取り組んでおりましたから。それが番組に生きていた点に感心しております。ナレーションについても、非常に抑え込んでおり、それは言葉であまり盛り上げないということを、矢田との話し合いで決めておりました。音楽の選曲については、きちんとしたものをということで、東京で編集させました。試合が淡々としておりますので、音楽で何とかしようということもありました。

 またご指摘がありましたカメラの台数ですが、本人、試合、観客と全体を追うカメラで最低は3台必要なのですが、基本的に1台。試合がある時で2台。これは番組が出来てから矢田に申し訳なかったなと思っている点です。試合の迫力ある映像のために、もう少しカメラが出せればよかった。本日、矢田は別の仕事があるために欠席しておりますが、きちんと報告いたします。ありがとうございました。

増子委員長

 ありがとうございます。それでは次回の予定をお願いします。

小倉事務局長

 次回は3月24日(木)です。

 合評番組は「スーパーモーニング」です。出来ましたら3月14日から18日の放送分をご覧ください。

増子委員長

 それでは終了します。ありがとうございました。

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

特になし

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

2/27付 朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 3月度単発番組編成予定表

◎ 2月岩手地区視聴率

◎ 1月視聴者応答記録