放送番組審議会

4月(第67回)

概要

 岩手朝日テレビの第67回番組審議会が平成15年4月24日(木)、盛岡市盛岡駅西通の同社会議室で開かれた。

合評番組は、「大改造!! 劇的ビフォーアフター」。

  • すごい変わり方で、1200万円でこんなになるのか。それなら私もやってみようと思った人も多いのではないか。
  • あんなに土台が腐っている家が、あんなになるなんて、素晴らしい。今後もぜひ続けてほしい。
  • 改築された家に入っていく家族たちのうれしそうな顔にドラマがある。
  • 番組の途中で、ゲストに推理させる場面があるが、わくわく感や期待感を引き出してくれる。
  • 人と環境にやさしい建物だが、あの廃材がどうなるのだろうと思っていたら、細かく砕いて使っていた。
  • ナレーションも音楽もいい、盛り上げ方もいいが、あのぐらいの予算ですむのかなあという気がするが…………。
  • 北海道の家の場合、茶箱を改造して別の用途に生かした。住む人へのやさしさや愛情がにじみ出ていた。
  • 困難なものに挑戦する番組として非常に面白い。また、CMの前までうーんと引っ張っていく番組が多いが、それがなくてさわやかな感じを与えた。
  • 北海道と沖縄の違いは分かっているので、一緒に放送しなくても、一本ずつ放送してもよかったのではないか。
  • 2人の建築家が目立ちすぎで、家族側の印象が薄かったのではないか。
  • なかなか素晴らしかったが、建築家と住む人の美意識について落差がなかったか。ちょっと考えさせられるところがあった。
  • ゲストの中に、できれば、建築がある程度分かっている人がいてもいいのではないか。
  • 沖縄の場合、古い舟を食卓に改造したが、おじいちゃんやおばあちゃんに戸惑いがなかったかな。
  • 面白いが、もう少し現実性があった方がいいのではないか。

という意見が出た。

出席委員は、増子 義孝委員長、及川 和男副委員長、笠川 さゆり委員、松尾 正弘委員、石井 三郎委員、大坊 忠委員、宮野 祐子委員、小川口 柳太郎委員、松本 直子委員の9名、欠席委員は、植本 花子委員の1名。

議事録

1. 平成15年4月24日(木)午前11時~

2. 岩手朝日テレビ本社・会議室

3.委員の出席

委員総数 10名

出席委員数 9名

委員長 増子 義孝

副委員長 及川 和男

委員 石井 三郎

委員 小川口 柳太郎

委員 笠川 さゆり

委員 大坊 忠

委員 松尾 正弘

委員 松本 直子

委員 宮野 裕子

欠席委員数 1名

  委員 植本 花子

会社側出席者名

  代表取締役社長 川崎 道生

代表取締役専務 村上 昇

取締役営業本部長補佐 横舘 英雄

取締役業務局長 河邊 喬

報道制作局長 星井 孝之

技術局長 山口 孝

  番組審議会事務局長 末吉 正憲

4.議題

(1)5月の番組編成について

(2)番組合評

「大改造!!劇的ビフォーアフター」について

(3)次回の審議会

開 催 日:平成15年5月21日(水)

合評課題:「ビートたけしのこんなはずでは!」

(4)その他

5.概要

「大改造!! 劇的ビフォーアフター」について

* すごい変わり方で、1200万円でこんなになるのか。それなら私もやってみようと思った人も多いのではないか。

* あんなに土台が腐っている家が、あんなになるなんて、素晴らしい。今後もぜひ続けてほしい。

* 改築された家に入っていく家族たちのうれしそうな顔にドラマがある。

* 番組の途中で、ゲストに推理させる場面があるが、わくわく感や期待感を引き出してくれる。

* 人と環境にやさしい建物だが、あの廃材がどうなるのだろうと思っていたら、細かく砕いて使っていた。

* ナレーションも音楽もいい、盛り上げ方もいいが、あのぐらいの予算ですむのかなあという気がするが…………。

* 北海道の家の場合、茶箱を改造して別の用途に生かした。住む人へのやさしさや愛情がにじみ出ていた。

* 困難なものに挑戦する番組として非常に面白い。また、CMの前までうーんと引っ張っていく番組が多いが、それがなくてさわやかな感じを与えた。

* 北海道と沖縄の違いは分かっているので、一緒に放送しなくても、一本ずつ放送してもよかったのではないか。

* 2人の建築家が目立ちすぎで、家族側の印象が薄かったのではないか。

* なかなか素晴らしかったが、建築家と住む人の美意識について落差がなかったか。ちょっと考えさせられるところがあった。

* ゲストの中に、できれば、建築がある程度分かっている人がいてもいいのではないか。

* 沖縄の場合、古い舟を食卓に改造したが、おじいちゃんやおばあちゃんに戸惑いがなかったかな。

* 面白いが、もう少し現実性があった方がいいのではないか。

6.議事の内容

末吉事務局長

 それでは第67回放送番組審議会を始めます。増子委員長議事進行をお願いします。

増子委員長

 それでは川崎社長からお願いします。

川崎社長

 おはようございます。お忙しい中ご出席賜りましてありがとうございます。弊社の平成14年度の業績でございますが、来月末の決算役員会へ向けて最終的な数字をつめている段階です。厳しい状況を反映しまして、前年度実績で95~6%に留まる見込みです。ただし、利益については、予算を達成することは間違いないという状況です。新年度も新たに業績等をあげられる戦略を立て、頑張って参ろうと考えております。

 またこの4月にアナウンサーを男女1名ずつ採用しました。研修を既に始めておりますし、番組もやらせております。しっかり育てて参ろうと考えております。

 それからマスコミをとりまく問題は常に様々ありますが、今回のイラク侵攻についての報道のあり方についてはもう一度検証しなくてはならないと考えておりますが、併せて自衛隊募集に住基ネットを利用し個人情報を集めようとした問題、これは個人情報保護法案と密接な関係がある問題です。今朝のやじうまを見ていましたら、岩手の自衛隊中央連絡所が滝沢村に問い合わせをしたということで、滝沢村側がこれはおかしいのではないかと指摘をしたという紹介をしておりました。これはマスコミのみならず、国民全体に関わる大変に大きな法案でありますし、政府与党は何が何でも成立しようという動きになってきておりますので、この問題に関しては敏感であるべきだと思います。諸々課題は尽きないのですが、やはりマスコミの宿命としてこれらのことを念頭に置きながら、新年度もやって参ろうと考えておりますので、従来通りのご支援をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

増子委員長

 それでは5月の編成についてお願いします。

河邊業務局長

 それではご説明させて頂きます。レギュラー番組について変更等はございません。

 単発につきましては、メディアリテラシー、即ちメディアの持つ特性を理解して情報を読み取る力を身に付けてもらうこと、それを子どもを中心に幅広い世代に提供する番組として、5月24日(土)7:00~7:55「こどもとメディア もっと知りたい『テレビアニメ』」を編成します。子どもたちが様々な体験を通して、メディアリテラシーを身につけさせる目的で、1999年からNHKと民放が共同企画としてスタートさせた「メディアと子ども」。NHKと民放で年2回制作し放送していますが、今回はテレビ朝日が制作担当ということで、今回は国際化する日本のアニメを題材に「テレビの役目」「テレビの影響」「テレビの進歩」「テレビの世界観」を探っていこうという内容で制作した番組を放送します。レギュラー番組でも、「青少年に見てもらいたい番組」というものをいくつか放送しておりますが、その一環ということで、今回は単発番組で放送します。

 それから、前回の番組審議会で審議して頂きました「銀幕のイーハトーヴ~岩手映画の大地~」がP6の最優秀賞に選ばれましたことをご報告させて頂きます。

川崎社長

 優秀賞2点と最優秀賞1点が選ばれるそうです。その最優秀賞に選ばれたわけです。

増子委員長

 賞を獲った後はどうされるのですか。

河邊業務局長

 再放送を考えております。ちなみに優秀賞には山形テレビと福島放送が選ばれました。

増子委員長

 そういえば、「クレヨンしんちゃん」の映画が何か賞を獲ったようですね。今日の朝日新聞に出ていましたが。

末吉事務局長

 どちらかといえば見せたくない番組のほうで取り上げられたと思うのですが。

増子委員長

 見間違えでしょうか。映画版が獲ったようですが。

(※審議会終了後、昨年公開の劇場版クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」が文化庁のメディア芸術祭アニメーション大賞を受賞したことが判明した。)それでは先に進みましょうか。番組合評に入りたいと思います。宮野さんからお願いします。

宮野委員

 私は建設関連の新聞社におりますので、「大改造!!ビフォーアフター」は今回の合評番組になる以前から非常に話題になっていた番組だと思います。昨年に始まった番組だと思うのですが、私はスタート当初から面白いと思って見てきた番組で、イチオシと言っても良いくらいです。今は新しい建物をどんどん造る時代ではありませんので、リフォームは業界でも話題になっていますし、新築よりもそちらへ移行している状態です。学校などでも新築より改造が多くなってきました。特に建築士と大工さん、工務店の違いがこの番組を見るとよく解りますね。建築士がものを考える姿勢と、大工さんや工務店が出来た図面を見てものを作る業種の違いがハッキリと表れていて、非常に興味深いので、業界でもよく話題になります。

 今回は沖縄と北海道の住宅を紹介していましたが、沖縄で言えば、1200万円でこれ程変わるのか、細かい技法までは紹介しないのでよく分かりませんが、これ程変わるのであれば、やってみたいと思う人が沢山いるだろうと思います。見方によっては、登場する建築士さんたちの宣伝にもなると思います。番組の構成としては司会とコメンテーターが話す場面と改造の現場が交互に映るのですが、他局にも似たような番組が出てきましたが、コメンテーターを置いているのはこの番組だけだと思います。その必要うんぬんは別として、構成としては良いと思います。

 実は3月に家族旅行で沖縄に行ってきました。実際に沖縄の住宅も見ましたが、番組で紹介されたお宅も本当に沖縄独特の昔からあるようなお宅でしたので、その変化を楽しみながら家族揃って見ました。ですが、あのように変化して掃除とか大変そうだなと思う主婦の目もありますが。変化を目の当たりに出来るというのは良い番組だなと思っております。

 北海道のお宅については、土台が腐っているというのは建設業からすれば建て直しの域に達しておりますが、それをあのように変えることを番組で見せて貰って、ためになりました。一視聴者とは違った目から見ても面白い番組ですので続けて頂けたらなと思います。

 住宅のことで困っている人を手助けして感動してもらうというストーリーが今受けするのかなとも思います。細かい点を言うと問題もあるかと思いますが。例えば沖縄の予算は1200万に対して北海道は700万。しかし北海道のあの工事を700万で頼んで果たしてやってもらえるのかなと思いました。見積もりには「デザイン料は含まず」と書いてありますので、番組としてはそれで良いのですが、実際に本当にかかる経費を紹介しても良いのではないかという気がしました。住宅の大きさもはっきりと分からなかったので何とも言えませんが。それに沖縄の1200万というのも、普通に建築事務所に頼んで出来る金額ではないので、現実と番組のギャップはあるのですが、建設業界としては有り難い番組です。これからリフォームをお願いしたい人が増えるなという目で見させて頂いております。大雑把ではありますが以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは松本さんお願いします。

松本委員

 私も宮野さんと同じで、以前から見ている番組です。番組は依頼、現場検証、推理、完成という分かり易い流れですし、非常に見やすくて、流れの中で視聴者側のわくわく感や期待感も引き出してくれますし、見ていて楽しくて、しかもためになる。同じ「光、ぬくもり」という共通のキーワードであっても、北海道と沖縄ではこういった差があるのか、こういった共通点があるのかと思いながら見ました。私は沖縄に行ったことがないので、ツノ出し住宅といった専門用語なども勉強になりました。それから、匠の言葉や依頼主の言葉、コメンテーターの言葉の中に良いキーワードが出てきましたね。例えば完成してから女性のコメンテーター「住む人の表情も変えてしまう」とおっしゃっていたところや、沖縄の工事を請け負った匠が「コンクリートの表情豊かなところ」とおっしゃっていました。私はコンクリートなんて無機質なものこの上ないと思っていたのですが、そんなふうに言われるとドキッとしたりしました。そういったところを逃さず丁寧に拾い上げて、番組の中に上手に生かしているなと思いました。

 これは如何なものかと思う点としては、どちらも大工事だったのですが、私のような建設に疎い素人にとっては、リフォームの定義は果たしてどこまでのことを言うのだろうと思いました。柱も変えていたし土台も変えてしまって、外壁を壊さなければリフォームなのかしらと。毎回でなくても良いので、どこまでがリフォームなのか、ちょっと教えて頂く場面があってもいいかと思います。それから工事の途中に平面図、真上から見た状態の図面で、ビフォーとアフターでどう変わっていったのかを画面の隅で良いですので映して欲しいです。この壁を壊すことによってこのように空間が広がりましたということが分かるように、移り変わりを映してもらえたら、より分かりやすくなると思います。

 それから、今は人にも環境にも優しい家が随分取り上げられておりますが、ガラスの建具をリユース、リサイクルしてシャンデリアにするとか、茶箱をドレッサーに生まれ変わらせるとか、そういったところも非常に面白かったですね。建築物のリユース、リサイクル、リフォーム、生かし直し、こういった使い回しが出来ますよとか、こういう環境に配慮した処理の仕方がありますよという点は、これからももっと関心が高まっていくと思いますので、廃材ビフォーアフターでも取り上げて行って貰いたいものの一つです。人と環境に優しい建築と、建築廃材の行方は気になりますね。建築廃材は使い道があると思います。私たち農家では建築廃材を細かく砕いたものを畑に敷き詰めて、雑草を抑える敷きワラ代わりに使ってみるといった試験もしております。ですから建物を新しく生まれ変わらせるだけではなくて、そこから取り外したものの先を追うというのも面白い視点ではないかと思いました。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。小川口さん、お願いします。

小川口委員

 私も以前からこの番組は面白いので見ていました。ナレーションも音楽も穏やかで、期待感を持たせる盛り上げ方があって、番組も面白い進め方だと思います。私も自宅を数年前に改築しましたので、この番組で取り上げている予算であれほどの大工事が出来るものかと疑問を感じました。あれほどだったらもっと経費がかかりそうだなと思いながら見ました。そしてこの番組を見てから自宅を改築したらもっと工夫しただろうなと思ったりもしまして。

 番組では匠が依頼者のお宅を訪れて、まずは検証をしますね。依頼者のお宅は大抵が古いですから歴史がある、改造はしても古き良きものは残してやる。そして光りを取込みながら、よくこれほど依頼者のことを考えてくれているなと毎回感心してしまいます。そして依頼者の予想以上のものを作り、完成した時に感激して涙される、それほどの仕事が出来る匠にも感心してしまいます。

 ただ今回はスペシャルということで北と南の2件を取り上げましたが、北は寒く南は暑いことは皆が承知していることですから、僕としては別に比較させないで1件ずつ取り上げても、感激は同じではないかなと思いました。最近で他局でもこの番組を真似たような企画がありますから、この番組は常に新しいものを発見するような良い番組を作り続けて欲しいと思います。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。及川先生お願いします。

及川副委員長

 この番組は初めて見ましたが面白かったです。寒冷多雪の日本海に面した小樽と、強烈な陽光に照り付けられる沖縄という風土性のコントラストがはっきりしていましたし、内容も壊すしかないような築50年以上の木造と、かたや復帰後、住宅金融公庫の特別融資でコンクリート住宅が建つようになって沖縄の古いものが消えていったわけですが、それがやはり25年ほど経って狭くなってきたというコントラストとか、家族構成、予算も700万円に対してかたや1200万円という、非常にコントラストがはっきりしていて、くっきりとした番組の輪郭が生まれたんじゃないかなと思いました。画面も絶えず新鮮で良かったと思います。リフォームの匠として優れた建築家が2人登場しますが、この腕の冴えも、何か極めて優秀な料理人が、我々素人が作るような素材でありながら見事な料理を作るような、そういった腕の冴えを見せておりました。ただ、沖縄の建築家はコンクリート住宅の伝道師、これはまあ良いとしても、小樽の建築家は寒冷地住宅の開拓使と「使」という字を使っていました。これは言ってみればお役所ですね開拓使というのは。北海道開発庁という意味であまり宜しくないと思いました。

 私たち素人のイマジネーションを超える建築家の想像力の発揮が、視聴者に驚きや快感を与えておりましたし、個人住宅の建築でも建築家による設計と管理の重要さを理解させるものとなっていて、実際に役立つ側面もあるなと思いました。事にも感服したのは、風土性やその家の家族史、地域伝統といったものを想像的に取り込んでいく技と言いましょうか。それは今までのお話にも出ていますように、愛着を持っていた古い家のある部分やある物を活かして取り込んでいくという技は、単に技術的な技ではなくて、そこに住む人への愛情や優しさに裏打ちされたもので、大変に感服して見たわけです。

 ですが見終わってちょっと考え込んでしまいました。それは、あまりにも2人の建築家が目立ち過ぎてといいますか、際立ち過ぎて、番組がそういうものなのかも知れませんが、言ってみれば依頼者が主人公ですよね。お金を出して頼み、やがてそこに何十年も住みそして死んで行くという家族側の影が薄いことです。現場検証をして家族側の意見を聞き予算を提示する、そこまでは明瞭なのですが、プランを策定する上でのやりとりをもう少し取り上げるとか。私も新築を2度経験し、改造を今経験している訳ですが、大工さんの邪魔をするくらいしょっちゅう見に行きたくなるわけです。それが人情だと思います。ですが、この番組は最後におずおずと完成した家を見て驚いて感激したりする。その途中経過を見たくなる人情、楽しみの増大の一方に不満や不安、心配もつきまといますね。そしてやりとりが生じたりするわけです。何も克明に描く必要は無いのですが、ちょっとスケッチしても良いのではないかと思います。これは今後の課題じゃないかと思います。

 それから両方の家族とも非常に喜んでいたのですが、確かに居住快適性、アメニティは改善されましたが、それまでの家族の暮らしぶりや家風のようなものが、あの新しいモダンな空間の中でどうなってくるか。あそこで本当の安心とか安らぎが保証されるのだろうか、何となく先行きに私は不安を感じてしまって、見事さだけを褒めてはいられないような思いに落ち込んだわけです。沖縄の建築家の美意識と、そこに住む海人(うみんちゅ)の美意識との落差はかなりあると思います、あの照明にしても。照明自体は見事で美しいかも知れませんが、如何なものかなとちょっと考えさせられました。そういうことは、「ハウス」としての家と「ホーム」としての家、その違いとか、住まいを造る哲学のようなものを逆に考えさせられたということでもあったのではないかと思うわけで、一概にこの番組がダメだということでは決して無いわけですが、ちょっと考え込んでしまったというところがありました。

 それからスタジオがどうも生きていない気がしました。女性アナウンサーが「推理しなさい」と言って何か意見を言わせる程度で生きていないし、人も多すぎる気がします。もっと少人数でも突っ込んだ話が出来ると思いますので、もう少しアクセントを付けて欲しいと思います。

 最後に注文ですが、リフォームの必要や欲求に乗じて悪徳商法が大変に蔓延しています。そういった悪徳商法が広がっているという点で、番組内でちゃんとした安心できるリフォームへの注意を喚起することを、それこそスタジオでのコメントで喋らせるとか、そういったこともやったら、ますます支持される番組になるのではないかなと思いました。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは大坊さんお願いします。

大坊委員

 私は二人の匠の技に感服しました。大胆に知識と技術を取り入れ、あのような予算で出来ることに驚きました。皆さんと同じであの予算で本当に出来るのかなと思って見ておりました。匠の技が番組の主たる内容だと思いますが、現在の家庭の弱体化する家族構成に何か一石を投じた、家族というものの団らんというテーマが裏にあったのかなとも感じ取りました。

 北海道と沖縄という対照的なリフォームでしたが、そのテーマは両方とも「団らん」そして「光」というテーマがあったのでは無かろうか。光を十分に取り入れた匠のリフォーム内容、その素晴らしさには本当に感服しました。

 小樽の依頼者のお宅では今は亡き父親の日曜大工道具を表札に取り入れたり、沖縄ではピンフンを設けたりと、家族の歴史を語るものや地域性のあるものを十分に汲み取っていました。また沖縄では大きな筒で柱を囲いながら大黒柱のようなものを作っていましたが、家の中に「円」という丸さを作ることは、家族円満に暮らしましょうという象徴で使っているんだと思います。北海道の家でも小樽の石を用いて丸い「円」の調理台を作っていました。どちらの家族も、家族の円、団らん、それもこの番組を支える柱の一つではないだろうかと思いました。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。石井さんお願いします。

石井委員

 私は今回の合評番組ということでこの番組を初めて見ましたが、私の周りでこの番組を見ている人が意外に多いことが判明しまして、凄い番組だなと思いました。視聴率も案外高いのかなと感じました。何故そう感じたかと言いますと、ビフォーアフター的な番組といいますと、他局ではありますが、整形手術前と後といったものもありますね。あれも一種の感激、感動があるとは思いますが、あまり見たい番組ではないと常々思っておりました。ですが建築物のビフォーアフターは良いですね。見ている全員で喜びを共有できるという意味でも、この番組が今後とも長続きして欲しいと思いました。

 それから出演者については、6名のうち男性が2名ですが、この男性2名がだらしないというかコメントが全然なっていない。そして一番若い浜口順子が比較的しっかりとコメントしていた程度で、ちょっとスタジオゲストが多すぎる点と、もう少しまともなコメントをする人を揃えるべきだと思います。そしてアマチュアばかりで適当な事を言っているように思えますので、出来れば建築をある程度分かっている人を一人置くと良いと思います。建築評論家のような人が入っては番組のイメージが変わってしまいますから、そういった人に入って欲しいとは思いませんが。第三者的な立場で、本当にこのリフォームが上手くいったかを検証できるような証人が欲しいなという気がしました。

 構成としては推理があって、珍答というか迷答というか、これも一種のご愛嬌かなと思って、適当に楽しむことが出来ました。

 それから匠の素晴らしさ、私はこの番組を見て自分のホテルの調理人を思い出しました。要するに職人技と言いますか、職人に通ずるものがありますし、これからの日本は職人の時代とでも言いますか、サラリーマンをやっているよりも自分の好きな道を選んで、その道の達人になることが本当に必要だと思いますし、その辺りがある程度、この番組を見て分かった感じがします。

 それから今回のこの番組でのリフォームのそれぞれの評価ですが、依頼主が完成した家にいきなり来てびっくりして「凄い」とか「変わった」といったコメントだけで番組が終わっているわけですね。しかし本当の建物の評価というものは、半年から1年ほど使ってみてからでないと分からないはずじゃないかと思います。使ってみたら、以前よりも悪くなった部分も本当はあると思います。それから完成直後は無駄な置物や家財道具が一切なくてすっきりしていますが、恐らく1年も暮らしますと、また様々な物が部屋のあちこちを占領しているはずで、果たしてビフォーアフターという比較においては、アフターがあまりにもすっきりし過ぎているので、綺麗に見え過ぎているのかな、そんな感じもしました。それから、デザイン料は別ということで工事費に入っていなかったのが本当に気になりました。こんな値段で出来るはずがないだろうということです。それから今回はアフターが「明るくなった」ことが非常に評価されていますが、どの程度明るいのか、何ルクスかなと。写真の撮り方で、逆光でぼやかしていかにも「明るくなったんだ」というように見せていますが、ルクスを検証するとどのくらいだったのかが気になりました。

 それから、今回のこの2つのリフォームの比較論をやろうと思います。何も優劣をつける必要はないのですが。評価項目は自分で勝手に、実用性と芸術性と個別性を設けました。実用性の中には明るさ、広さ、可変性、収納力。芸術性としてはその土地の風土、文化をどの程度取り入れているか、それから色彩、デザイン、遊びや面白さ。個別性ということでは、家族構成をどれだけ反映しているか、バリアフリーをどの程度考慮したか、予算がどの程度で済んだかといったことです。そして勝手に評価しましたら、実用性では小樽も沖縄も同等かな、芸術性では沖縄のほうが相当凝っているなという感じがありました。個別性では、家族の状況をどれだけ理解しサポートしているかという点では、小樽のほうが圧倒的に優れていた、と言うのは予算も少ないし、真冬の工事をよくやったなということ、そして築56年の廃屋寸前の住宅をこれほどに甦らせて、それから暖房対策もあらゆる事柄を実行して、バリアフリーもここまでやるのかと思う程にやっていました。ですから総合評価としては、私は小樽に軍配を挙げました。沖縄のほうはちょっと遊び過ぎなのかなという印象を持ちました。それから沖縄のほうは元々、家を暗くしたのは自業自得でしょうし、リフォーム後、お店を犠牲にしたんですね。10数年前にやったリフォームでは居住性を犠牲にしてでも店を作りたかった。しかし今回は店を諦めて居住性を回復したということで、ある意味では当然の改装であったということも含めて、今回は小樽を評価しますということを最後にお伝えします。以上です。

増子委員長

 ありがとうございます。松尾さん、お願いします。

松尾委員

 我々がテレビに期待するものはいろいろあります。知識欲を満足させるとかありますが、一番大きなものは驚きと感動を得たいということがあると思います。この番組には驚きと感動がありました。それを求めるあまりにねつ造やヤラセに走ってしまう番組もあったということを耳にしますが、そういったことが一切なく、正面から取り組むことでこの番組は成功しているなと感心しました。私も7年ほど前に改築と新築を経験しておりますが、大々的なリフォームというのは難しいものです。予算が許せば全てを壊して、新築したほうが楽ですね。私も新築に殆ど近いリフォームをやりましたが大工さんがとても大変そうでした。ですからこの番組は非常に困難なことに挑戦する番組だと思って見ました。昼の奥様向け番組にもリフォームコーナーがあって、それを見ているとカーテンを替えたり、収納スペースをちょっと工夫してみたりという軽いレベルのもので、視聴者もそれを見てちょっと真似してみようというレベルのものですが、「ビフォーアフター」は非現実的と言いますか、これは良いから家でもやってみようとは言えないレベルのものだなと思いました。ただ番組としては非常に面白いですね。そして見終わって気付いたのですが、最近のテレビの悪い傾向である、CM前後で番組を引っ張ってまた繰り返し、そして大したことがない結果が待っているという手法、それが全く無くて非常に爽やかでした。この番組の最大の関心は、最終的にどうなるのかということですので、細かい小細工は不要だというのがいちばんの理由だとは思いますが。

 それから、皆さんのお話しにもあったデザイン料を差し引いても、あの金額で工事が出来るのだろうかという意見ですが、私もそう思います。デザイン料だけではなくて利益も含んでいないと思います。つまりは業者にしてみたら赤字だと思うんです、その期間タダ働きするわけですから。ですが番組が宣伝になることを考えたら、決して無駄なタダ働きではないと思いますから、それは良いかなと思います。

 それから所ジョージを始めとするスタジオゲストですが、私もやはり物足りなさを感じましたが、あくまでも番組の主体は劇的にどう変わるかということですから、最初からスタジオには期待していませんので、あくまでも脇役だということで、それも良いだろうと思いました。

 それから、匠の力量が発揮されていて大したものだと思いました。最初にある問題点の改善は勿論のこと、いろんな遊び心……石を使った鍋置きやガラスを再生したりとか、船でテーブルを作ったり、といったものもあって、非常に感心しました。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは笠川さんお願いします。

笠川委員

 以前から評判の良い番組だとは知っていましたが、私も初めて見ました。

 今回の内容を見た限りでは、リフォームとは果たしてどの域までを言うのかなという思いで見ました。小樽の築50年のお宅では、梁や柱、土台に手を加えていましたが、それでもリフォームと言えるのか。また古い住宅ですから、業者さんからは恐らく建て替えを勧められる物件だろうなと思いましたし、リフォームを手掛けるプロと一緒に番組を見ていたのですが、あの予算では出来ないなと言っておりました。そしてこの番組を見て、注文や見積もりを求められたら、とんでもない事態になるなという感想を言っておりました。タイトルに「大改造」「劇的」とあるので、多少なりとも大げさなものがあっても、それは許されるのかなと思いました。

 作るモノは違っても、自分の発想を元にモノを作りあげていくという同じ仕事をしている私から見ると、この番組は「匠」という職人が楽しんで遊んで、それでいてプライドを懸けた番組なのかなと思えば、さもありなんかな、理解出来ると思って見た次第です。ですから儲けも除外できるし、宣伝だと思えばとても有り難い番組ですよね。今回のテーマが「住居を明るくする」ということだと思ったのですが、それに関しては十分な出来栄えだったと思います。特番で力が入ってしまったかなと見受けられる部分もあって、どちらの住居も、傍から見ると古くて使い勝手が悪いと思えるものでも、依頼人にとっては歴史や思い出といった様々な想いが詰まっていると思うのです。それを全て取り払って匠の感覚で持ち込まれたモノ、特に沖縄のサバニのテーブルを見てそう思ったのですが、あれはやはり匠の感覚で考えるものであって、そこに住む老夫婦の感覚とはちょっと違うのではないかなという思いがしました。そしてあまりにも変わった家を見た時の老夫婦の戸惑った顔と、「あんまり変わり過ぎてね……」と言った言葉に凝縮されていたと思います。ですから匠と呼ばれる建築士の方が能力や技術を番組で見せて、それで満足しているだけの番組じゃないかなと思ったり、やはり住んでこそ「家」であるから、一方的に見せる側の番組作りじゃないかなと思いました。

 それから他の方もおっしゃいましたが、やはりデザイン料が気になるので、平均的で良いから、だいたいこの程度というものが出たら参考になると思います。今はリフォームブームと言いますか、リフォームする方が多いですので、適正な金額が出れば有り難いという声を聞いていましたので、是非出して頂きたいと思います。

 それから、私は番組の淡々と流れるナレーションが好きで、とても好感を持っています。以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。私も一言。

 これは論評のしにくい番組ですね。娯楽として見れば面白いですね。一般的にリフォームや家を建てるといった家をテーマにした番組は、多分それだけで視聴者を掴めるんじゃないか、ひとは一日の多くの時間を過ごす家なのだから、少しでも良い家に住みたいというのは殆どのひとの欲求であって、他人の家を覗いてみたいという気持ちは誰もが持っていますから、そういった流れからしても、この番組はかなり当たると思います。

 匠の技は本当に凄い、プロは凄いなという感じです。我々素人が夢にも思わないようなことをやって、様々な引き出しを持っていて魔法のように色々な技を取り出す。つまりその限りでもの凄く面白いですね。

 ですが先ほど及川先生がおっしゃったように、「ハウス」として見るか「ホーム」として見るかといった場合に、この番組を見ているかなりの人は実際にリフォームの参考になるのではという気持ちで見ていると思うのですが、その人たちにとっては、激しい言い方をすると全く役に立たない。非現実的といいますか。まず値段は、素人が見ても出来る筈がないと思うわけですから、その辺りにまずは誤魔化しがある。それから小樽の家は、どう見ても倒れそうな家です、あんなものをわざわざリフォームと称してやるのは、僕はちょっとおかしいと思います。あれはもう建て替えですよね。沖縄の家にもそういった感じがしたんですが。ですから匠の技でモデルハウスを作っていた訳で、実際にモデルハウスみたいなものを現実に作れるかといえば、普通の人は作れない訳で、作品として見れば面白いのだけれども、もうちょっと役に立つような要素を……ここをちょっと直したらびっくりするように変わったですとか……つまりビフォーとアフターの間に全く繋がりがない。つまり人間はそれぞれの歴史を持って生きているのに、そういったものがそこで完全に断絶されている。玄関にカナヅチなんかで表札を飾ったり、お茶箱を鏡台にしてみたところで、あんなものは前の生活と全く関係のない創造物なわけですよね。そこら辺がもの凄く気になったわけで、つまり匠は出てきても家族が全然出てこない。家を作るというのは、家族にとっては様々な注文がありますよね、検討外れな注文もあるし、匠からすればそんな注文をいちいち聞いとったらあんな家は出てこないわけで、ですがやはり現実性を持たせるためには、たわいもないことをじっくりと聞いて、そして出来るだけそれに近付けるという、それが現実なわけで。最後に結論だけ見せられて「どうですか?」と言われたら、両方とも元々が酷い家でしたから「凄い」と言うしかないですよ。沖縄のおじいちゃんが、家の中で居場所がなくてウロウロして、結局縁側に出てホッとするみたいな。僕は住みたくないですよ。あれはあれで面白いのだけれど、もうちょっと元を残しながら……ですがそれですといよいよ金がかかるのでしょうが……あれは殆ど建て替えじゃないかと。色々なところに誤魔化しがあって面白いけれども、真面目に見ると如何なものかという点も多々あり、結論を言うと僕は住みたくないなということです。他にご意見ありましたらどうぞ。

宮野委員

 昔の沖縄の住宅は、日差しが強いですから家の中が暗くなるように作っている節がありますね。家のもの凄く近い位置にピンフンと呼ばれる壁を作っているのは魔除けだそうですが、見ていますと日よけの節もありますね。沖縄の住宅で燦々と光が差してましたが、こんなに光が差したら暑いだろうねと言いながら見ましたが。沖縄の風土というか、家の中が暗いというのはそれなりに理由があると思います。玄関も無くて壁も無いというのは風通しが良いという意味もありそうなので、確かにおっしゃる通りかなという気もします。

及川副委員長

 日本は改造の歴史がありますね。石の文化と違って木の文化ですから。特に法隆寺は世界文化遺産に指定される時、西洋の人からは、あんなのは直しに直して元のものは無いじゃないか、それを評価出来るのかと言う意見も出たそうです。だから匠の技としては伝統や歴史があるわけですよね。

増子委員長

 先ほど僕は建築士の技と言ったけれども、僕は宮大工ではなくとも年老いた大工さんの技でもって、ビフォーアフターをやったらどうかと思います。つまりそれは我々の身近なところにあるわけで、大掛かりな建て替えが出来るわけがないし、ちょっと直したらアッと驚くことが出来るかもしれない、そういったことも是非やって欲しいと思います。有名な建築士なら何でもやりますよあの人たちは。そうじゃない普通の大工さんで、などということを思いました。

川崎社長

 謙虚にご意見を聞かなくてはと思うのですが、比較的視聴率は良い数字を出しています。番組のタイトルは「大改造」とか「劇的」といった言葉を使っていますが、それを除くとこの番組は、先ほど松尾委員もおっしゃいましたが、あざとさが無い、CM前後の細工も無く、わりと素直に描いています。そこに及川先生がおっしゃるような理屈を敢えて付ければ、家族史があったり地域性があったりといった、その辺をわずかに描いています。その辺が、自分の住まいに満足していない人に上手くフィットする番組なのかなと思います。委員長がおっしゃるように実用性本意で見ている人もいるでしょうが、もっと気楽に見ているんじゃないかという気がします。特に今回は、小樽の家は確かにリフォームするのは如何なものかというあざとさはありました。そして私はこの番組はよく見ていますが、1200万もかけてリフォームするというはそうありません、せいぜい600~800万くらいのケースが殆どで、日頃取り上げている中には感心するものも多いです。今回は特番のせいか私もちょっと如何かなと思う内容でした。もう少し家族愛や家族史といった部分を描けたら、委員長がおっしゃったような欲求が満たせたと思います。そしてスタジオももう少しすっきりさせることが出来たら、もっと面白くなるような気がします。

及川副委員長

 ナレーションだけでも良い気がしますね。

宮野委員

 それだけなら他局にも似たものがあるんですよ。やはりそことの違いを出そうとしているんでしょうね。

及川副委員長

 昼間にやっている他局のは、ナレーションとスタジオとでやってますね。あれは十数万くらいでボーナスを奮発すれば出来るくらいで。旦那がリフォームして、奥さんが出来上がったのを見て涙するという落ちがある。あちらのほうが何か身近ですよね。

宮野委員

 今回は内容が極端でしたが、毎週見ていますとなるほどと思うようなものも多く取り上げている番組ですよね。

松本委員

 住んで何年後かの「アフターアフター」があっても面白いかも知れませんね。そうなるとプライバシーの侵害で難しいかも知れませんが。

増子委員長

 他に何かございますか。

松本委員

 子ども向けの番組で、お母さんたちの間でよく話題になるものに「日本昔ばなし」があります。レンタルビデオ屋さんにはあるのですが、しょっちゅう貸出中なんです。ああいったものに対する欲求度はかなり高いですね。あれを放送していたのはTBSだったと記憶しておりますが、何故復活させないのかなと思います。作り直しでも良いので、ああいった古き良きもの……逆に今の子どもたちにしてみると新鮮なんですね。ですからどこかで取り組んで頂きたいなと思います。

川崎社長

 あれは何故辞めたのでしょうかね。数字が落ちてきたというのもあったんでしょうか。番組打ち切りの要因というものは様々ありますから。数字が取れなくなったとかセールスが厳しくなったとか。それからこの場合は市原悦子さん側の事情というケースも考えられますし。違う人が読んだ場合、かつてのイメージがガラリと変わってしまう恐さもありますし。松本さんがおっしゃるように、固定的な欲求はあると思いますね。

松本委員

 私が子どもの頃に見た記憶がありますので、どこかでその印象を追っかけているところがあって、自分のノスタルジーだけかなと思いきや、今の子どもたちにも受け入れられるものなんですね。やはり良いものは良いんだなと思わせてくれますね。

川崎社長

 ここ数年は回復してきましたが、アニメが全く受け入れられない時代が数年ありました。ゴールデンタイムからアニメが殆ど撤退して、かろうじてドラえもんといったものが残っていただけで、一時期アニメが受け付けられませんでしたね。テレビの中でそういった流行り廃りがあるようです。

松本委員

 その廃れていた時代というのは、多分テレビゲームがワッと人気が出ていて、子どもたちはテレビの画面には向いていたけれども、それはゲームをする為だったと思います。それが、テレビゲーム自体が今はちょっと落ちてきている、自分の周りの子どもたちを見ていてもそんな気がします。面白いアニメがあればゲームよりもそっちを見るようになってきていると思います。

及川副委員長

 ファンタジーへの潜在的な欲求というのは強いんじゃないでしょうか、ハリー・ポッター現象なんかを考えますと。そしてあまりに現実が重苦しかったり、子どもにすれば威圧的・抑圧的であったりしますと、大人以上の想像力を持っている子どもを羽ばたかすことができる空間を欲する、そういうところがあるような気がするので、新たなファンタジーが求められているのかも知れませんね。

 松谷みよ子さんの民話の本も、また売れ出しているようですね。

河邊業務局長

 今のテレビでは、やはり少子化が一番強い要因かと思います。視聴率を調べるビデオリサーチ社では、サンプリングを調べるに当たって、少子化ということで、子どもがいる世帯の比率を少なくしましたところ、子ども向け番組の視聴率がドンんと下がった、という現象もあります。アニメ番組も少しずつ復活してきておりますが、やはり少子化が一番の原因と考えられております。

松本委員

 例えば「日本昔ばなし」のようなものであれば、子どもだけではなく大人世代にも享ける番組だと思いますが。

河邊業務局長

 そうですね。広い層に受けられる番組ですと、視聴率も維持できると思います。

笠川委員

 仮面ライダーシリーズのような子ども向けの戦隊ものの番組は、今では子どもよりもお母さんたちが夢中で見ていますしね。今でいう「イケメン」の主人公を見るために。

河邊業務局長

 「仮面ライダー龍騎」には奥様方の追っかけもいるくらいですから。やはりあの時代に育った方が親になっていますから。

笠川委員

 そうですね。ですから子どもはそれほど見ていなくても、母親が見るためにあの時間にテレビをつけているということですね。

 「日本昔ばなし」は私も幼い頃に見ていましたが、自分たちが知っている話だとのめり込んで見ることができますが、回を重ねるにつれてこの話はちょっと……というものも増えてきたので私自身それで番組から遠ざかっていった、それで打ち切りになったのかなという感じもあります。内々の事は分かりませんが、私たちが番組を見ていてそう感じました。

石井委員

 チャンネルの主導権は、昔は子どもが結構握っていたと思いますが、今は少子化の影響もありまして、中高年世代が自ら選択していると思いますね。アニメも子どもよりも、多少大人を意識して作っているものも多いのではないでしょうか。私も時々「クレヨンしんちゃん」なんぞを見ますが、これは子ども向けではないなという気がしまして、子どもに見せたくないというのも正にそういうことだと思います。見せたくないけれども視聴率は良いようですし。

宮野委員

 視聴率は各家庭1台のテレビしかカウントしないのですか。

河邊業務局長

 いいえ、今は家庭内の全てのテレビをカウント出来ます。しかし岩手県は2台までで、来年からは3台目までカウントしようかという話になっております。

宮野委員

 それが良いと思います。我が家でもメインの1台は常にNHKかBSで、それ以外を見るには2台目を見るという不文律がありますから。「ビフォーアフター」も2台目で見ていますし。

増子委員長

 ありがとうございました。他にご意見がないようでしたら次の議題に移ります。民放連の放送基準の一部改正についてお願いします。

末吉事務局長

 お配りした資料をご覧ください。

 民放連は2月20日理事会を開き、放送における個人情報の取り扱いに一層配慮するために、放送基準第3条と解説文を改正することを決定しました。

 改正された内容は、次の通りです。

旧)(3)プライバシーを侵すような取り扱いはしない。

個人の意に反して私事を公開した場合にはプライバシーの侵害になる。

プライバシーの侵害は、政治家・プロスポーツ選手・芸能人などについても起こり得るが、特に一般人については注意が必要である。したがって、放送に際しては、事前に本人の承諾を得ることを原則としたい。

また、個人情報についても慎重に取り扱うべきである。

新)(3)個人情報の取り扱いには十分注意し、プライバシーを侵すような取り扱いはしない。

個人情報を放送に含む場合、事前に十分な注意が必要である。特にプライバシーに係わる事項には、本人の承諾を得ることを原則とし、また公共性・公益性などを踏まえた慎重な取り扱いが必要である。プライバシーの侵害は、政治家・プロスポーツ選手・芸能人などについても起こり得るが、特に一般人については注意が必要である。

 放送基準審査会では現在、放送倫理のさらなる向上と視聴者に信頼される関係を築くために「新たな自律的取り組み」をしており、今回の改正はその一環としています。

今回の改正で、岩手朝日テレビの「放送番組の編成の基準」の条文そのものを手直しするということではありませんが、当社基準の中に、「原則として『日本民間放送連盟放送基準』による」とあり、審議会におはかりすることになりました。皆様のご了承が得られましたら、番組審議会の議事録に掲載させて頂きますが、如何でしょうか。

増子委員長

 要するにより丁寧に記載したと言うことですね。

及川副委員長

 「プライバシーに関わる事項には、本人の承諾を得ることを原則とし」とありますが、これは現在もですよね。しかし報道という点で、例えば犯罪や極めて非人間的・反社会的な行為を糾弾するといった場合、承諾なしでもやれる場合もあると思います。建前としては原則慎重な取り扱いをということですね。

川崎社長

 手元に資料がありませんので詳細が分かりませんが、犯罪報道等についてはまた別途、基準を設けて対応しております。及川先生がおっしゃいますような取材の原則まで壊すような反社会的なものに対して、怯むものにはなっていない筈です。

増子委員長

 それでは皆さん、承認してよろしゅうございますか。それでは承認したということですね。

 それでは次回の開催についてお願いします。

末吉事務局長

 次回は5月21日です。合評番組は「ビートたけしのこんなはずでは!」です。

 それから6月にございます番組審議会委員代表者会議のテーマについてのご意見を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

増子委員長

 代表者会議のテーマは5月の連休明けに通知があるそうですので、それを頂いてから皆様に次回、ご意見を頂きたいと思いますのでよろしくお願いします。それでは番組審議会を終了します。ありがとうございました。

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

特になし

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 5月度単発番組編成予定表

◎ 4~6月タイムテーブル

◎ 放送基準第3条と解説文の改正について