放送番組審議会

9月(第91回)

概要

 岩手朝日テレビの第91回番組審議会が平成17年9月22日(木)、盛岡市盛岡駅西通の岩手朝日テレビ会議室で開かれた。

合評番組は「北海道テレビ制作ドラマスペシャル『うみのほたる』」。

  • 狭い町の中の、世間体や親子の絆と言った面がよく表現されている。「何かを得ることは何かを失うこと」の台詞は、若い人にはピンとこないかも。
  • 北海道の四季の海の厳しさが画面に欲しかった。
  • 暗いイメージのドラマで気持ちが沈む気がした。若い人に家庭と言う帰る場所がある、家の存在や絆を認識させるには、よい番組であった。
  • 漁師役の俳優の人の手が余りに綺麗すぎて見ていて気持ちが離れる。大自然相手の海の男という設定と乖離している。
  • 「うみのほたる」の表題の意味がドラマの最後でやっと判った。
  • 全体として暗い設定のドラマである。それが、一次産業の暗さと結びついている。
  • 都会と田舎の生活環境の格差や家族の考え方のすれ違いを上手に表現できている。
  • 一生懸命だが不器用な生き方、何かチグハグな人生は珍しいことではない。思いが素直伝えられない家族相互の心理表現をしている。
  • 現状は何も解決していないけれども、自分の心を変えることで、それを受け入れ一歩前進できるという仏教的な感じがする。

という意見が出た。

出席委員は、増子義孝委員長、笠川さゆり委員、大坊忠委員、松本直子委員、宮野裕子委員、村田久委員、小田島利昭委員、松尾正弘委員、石井三郎委員の9名。欠席委員は、高橋真裕委員の1名。

議事録

1.開催日時

平成 17年 9月 22日(木)午前11時~

2.開催場所

岩手朝日テレビ 3階会議室

3.委員の出席

委員総数 10名

出席委員数9名

委員長 増子 義孝

委員 石井 三郎

委員 小田島 利昭

委員 笠川 さゆり

委員 大坊 忠

委員 松尾 正弘

委員 松本 直子

委員 宮野 裕子

委員 村田 久

欠席委員数1名

委員 高橋 真裕

会社側出席者名

代表取締役社長 川崎 道生

常務取締役 辻 一成

監査役 斎藤 芳朗

業務担当局長 渋谷 知行

報道制作局長 小椋 和雄

技術局長 佐々木 正樹

デジタル推進室長 小倉 潔

番組審議会事務局長  佐藤 清一

4.議題

(1)10月単発番組について

(2)番組合評

北海道テレビ制作ドラマスペシャル「うみのほたる」

(3)次回の審議会

開 催 日:平成17年10月27日(木)

合評課題:「小学生クラス対抗30人31脚岩手大会2005」

10月8日(土)12:55~13:50

5.概要

○ 狭い町の中の、世間体や親子の絆と言った面がよく表現されている。「何かを得ることは何かを失うこと」の台詞は、若い人にはピンとこないかも。

○ 北海道の四季の海の厳しさが画面に欲しかった。

○ 暗いイメージのドラマで気持ちが沈む気がした。若い人に家庭と言う帰る場所がある、家の存在や絆を認識させるには、よい番組であった。

○ 漁師役の俳優の人の手が余りに綺麗すぎて見ていて気持ちが離れる。大自然相手の海の男という設定と乖離している。

○ 「うみのほたる」の表題の意味がドラマの最後でやっと判った。

○ 全体として暗い設定のドラマである。それが、一次産業の暗さと結びついている。

○ 都会と田舎の生活環境の格差や家族の考え方のすれ違いを上手に表現できている。

○ 一生懸命だが不器用な生き方、何かチグハグな人生は珍しいことではない。思いが素直伝えられない家族相互の心理表現をしている。

○ 現状は何も解決していないけれども、自分の心を変えることで、それを受け入れ一歩前進できるという仏教的な感じがする。

6.議事の内容

佐藤事務局長

 第91回放送番組審議会を始めます。欠席は、高橋委員です。委員長お願いします。

増子委員長

 それでは川崎社長、お願いします。

川崎社長

 お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。

 デジタルの本放送開始まであと1年となり、その対応を急ピッチで進めております。

 また最近は地震が頻発しております。そういった事態に対応するべく、7月に沿岸の釜石市に情報カメラを設置しました。また東北のテレビ朝日系列6社で地震シュミレーションを行うなど、体制を構築しております。引き続き、緊急時の体制の充実、強化を図って参ります。

増子委員長

 10月の番組についてお願いします。

渋谷業務担当局長

 10月改編のレギュラー番組からご説明します。

 ローカルでは、毎週土曜日12:55から放送の「楽茶間(ラクティマ)」が10月1日より土曜朝9:30~10:25に移動して編成します。土曜の朝帯に移動し、内容を強化して参ります。

 プライムタイムでは月曜19時「世直し順庵!」、火曜19時「Matthew‘s Best Hit TV」、水曜21時「相棒」第4弾がスタート、木曜20時「木曜ミステリー 女刑事みずき」、21時からは大型ドラマを編成します。また火曜19時から放送しておりました「旅の香り」は日曜19時に移動して編成します。その他、詳しくはお手元の資料をご覧下さい。

 単発番組は、改編期ですのでレギュラー番組のスペシャルが多く編成されます。

ローカルでは10月8日12:55~13:50「30人31脚岩手大会2005(仮)」、来る9月25日に開催される同大会の模様を編成します。

 8月の視聴率は、ゴールデン・プライム・プライム2とすべて1位でした。要因としては東アジアサッカー選手権の高視聴率が上げられます。

 9月の視聴率キリンチャレンジカップで高視聴率を獲得したものの伸び悩みました。

 また、高校野球中継は年々、視聴率が上昇しております。詳しくはお手元の資料をご覧下さい。

増子委員長

 それでは「うみのほたる」の合評に入ります。

村田委員

 私は北海道生まれなので、厳しい評価になりますが、全体に暗すぎた印象です。今の世情によくあり得るストーリーの組み立てで。狭い町での古い世間体だとか、親子の絆といったものはよく出ていたと思います。

 しかし北海道の海での仕事の辛さは、それほど伝わってこない。昆布漁の辛さ、臨場感を平面的な映像で伝えるのは難しいと思いました。そういった自然描写が辛かったなというのが印象です。

 「何かを得ることは何かを失うことなのか」という台詞がありましたが、若い年代にはピンと来ないかも知れません。ある程度年をとった人は頷ける番組でしょう。

 こういったゴタゴタしている家庭はよくあると思いますが、最後に救われたのは、親子が何となく助け合って生きていこうというラストだったこと。

 ただし、最後のシーンでお祭りの屋台をやってる父親の手伝いを何故息子たちがしてないのか、一緒に汗を流していたらもっと感銘を受けたんじゃないか。物書きの端くれとしては、その辺のストーリーの組み立てに気配りが足りなかったのではないかと。こういった家庭の親子の絆はよく出ていたと思います。ただし四季の海の美しさや厳しさが画面に出て欲しかったです。

宮野委員

 「うみのほたる」が昼の放送で良かったです。暗いイメージなので夜に見ると気持ちが沈むなと思いました。

 一番感じたことは、帰る場所があるというのは良いということ。若い人に家の存在を認識してもらうにはいいのかなと感じました。都会で若者が感じている閉塞感の逆の感じでしょうか。ローカル制作の割には俳優陣も豪華で頑張っていると感じられます。

 ただ、最後のシーンで浮気相手が出てきたり、私としてはストーリーの辻褄が合わないんじゃないかと感じたりしました。

松本委員

 よくある話だ、どこにでもある日常を切り取ったドラマだなと思い見ました。引き込まれるほどではなかったので、好意的に見ないと最後まで集中するのは難しい作品だと思います。

 設定に無理があるのではという話が出ましたが、私も設定や演出に無理があるのではと感じる部分があり、それが目につく度に気が削がれていきました。

 海辺で酔っ払ったお父さんを迎えに行った場面で、突然、小澤さんがメソメソと泣き始めるのですが、その泣き方がいかにも子どもっぽくて、そこまでして泣くのかなと思いつつ、これは想像力を働かせて視聴者に様々な解釈を要求しているのかしらと狙いを探ってみたりしながら、見進めなくてはいけない点が他にもあり、のめり込むという気が削がれたことが残念でした。

 大変細かいのですが、漁師役の蟹江さんの手がとても綺麗で、この人の手は大自然を相手に格闘している手ではないと思った時に、決定的に気持ちが離れていってしまいました。細かい点ではありますが、こういったことも演出で考えて作るべきでしょう。大自然相手、海の男という設定であれば尚更大事なことではないかと素人ながら思いました。

 ローカル局ながらの作りで良かった点は、エンディングのスーパーに協力○○の皆さん、とか個人名を出していたことは、細やかな気配りが出来ていたと思います。地元の協力なくしては出来ないドラマでしょうから、その心遣いは素晴らしいなと思いました。

松尾委員

 皆さん細かいところまで見ていらっしゃいますね。私もバッティングセンターのシーンでフォームが気になって、これで本当に甲子園を目指していたのだろうかとかそんな所ばかりに気をとられてしまい、気持ちを修正しながら見ました。

 皆さんおっしゃるように、暗いドラマだと思いました。暗いというより重い。部分的には重いというより痛い、そんな気もしながら見ました。最終的には人は何のために生きるのだろう、そんなことを問いかけているドラマだと思います。

 具体的には、幸せな結婚、あるべき姿、漁業を始めとする第一次産業が抱えている問題、家族が縮小している現代の形態、生き甲斐のある仕事がない、人間関係での挫折、そういったことが全部盛り込まれていて、特に最初の30分は見ているのが辛かったです。果たしてこれが審議対象でなかったら最後まで見たか自信がありません。後半にそれぞれが、それぞれの思いを吐き出して家族の絆を再確認し、主人公は本気で仕事をやっていく気になることが救いで、最後まで見て良かったなと感じました。ただ、考えてみると実は何も解決していない。家族の絆を確認してホッとするだけなのです。それが逆に余韻を感じさせたのではないでしょうか。

 1時間ドラマなのでかなり省略していた部分もあります。亡くなったお兄さんは話だけですし、お母さんがいない、その辺は言及していませんが過不足なく状況は伝えられたと思うので、その点は成功していたと思います。

石井委員

 鹿部町は大沼公園や駒ヶ岳がある町なんですね。町の名前よりもそちらのほうが有名で、鹿部という町名は知りませんでした。こういったものもドラマに盛り込めば良かったかなと思います。

 「うみのほたる」の表題の意味は最後のほうで分かった。もう少し早くわかったほうが良かったのではないでしょうか。

 ドラマのテーマは家族の日常生活の起伏を描いたこと、親は高望みをし、子はそれに応えられないという現実を描いたものでしょう。路上で親子喧嘩といった、あまり見たくないシーンもありますが、それほど深刻ではない。都会に疲れて故郷に回帰するという永遠のテーマを扱った作品でした。一時間ドラマなので省略されたシーンがあまりに多すぎて、もっと時間を増やしても良い作品ができたと思います。

 個性のある役者陣でしたが、光二の設定はあまりに表現力がなく見ていて苛々しました。ここまで表現力がない人もいないのではないかと思う反面、だからこういうドラマが出来たとも思った次第です。

小田島委員

 北海道の良さを出しながら、家族の絆を1時間ドラマで表現するということは、難しい面もあったと思いますがよく出来たドラマだというのが全体の印象です。

 北海道には第一次産業のイメージがあり、その代表として昆布漁を題材にし、また北海道の短い夏を十分に出していた。

 1時間ドラマではっきりしたテーマがあるというよりは、様々な思いを描く理解が難しい、考えさせられる作品だったと思います。

 私も「うみのほたる」のタイトルの意味は何だろうと最後までずっと思いながらドラマを見続けて、最後でやっと分かったので、前半で分からないと難しいかなと思いました。

 私は、ドラマ全体の印象は良かったです。ただ、私も第一次産業に関わっておりますが、どうも第一次産業は暗いというイメージがある中で、比較的、北海道の第一次産業は明るいはずなのに、それを暗く扱っていたのは残念です。もう少し明るいスタートであればもっと楽しく見れました。

笠川委員

 最初は重さだけが感じられたというのが本心で、故郷に戻ることで挫折感や周囲の目や冷たさ、その中で立ち直っていくドラマかと思いました。

 亡き兄への思いや家族、故郷へ焦点をあてたドラマとして考えるとよく出来ていました。皆さんと同じような感想を持ちました。

 口数が少なく、言葉で自分の思いを伝えることが苦手だといわれる今の若い人がボソッという一言の重さ、そういったものでこのドラマの軸を作られていると思います。

 「うみのほたる」は海の生物なのかと思ったら、バリ島の花火、亡くなった兄と結びついていましたね。亡くなった兄の存在、そしてその兄に対するそれぞれの思いと、何か軸になるものということで、兄を持ってきたのかとも思いました。

 最初は重たいイメージでしたが、見進めていくと、案外あっさりした内容だったと思います。結構見やすかったです。

大坊委員

 都会と田舎での生活環境の格差や、親子や家族の考え方のすれ違いをうまく表現出来たドラマでした。シングルマザーになることを選んで故郷に戻ってきた姉、兄の死で漁師になるべく故郷に戻った弟、と暗いドラマだなと私も思って見ました。最後にはそれぞれが自分の思いを吐き出して家族の絆が生まれたので良かったなと思います。これが現実の生活だと訴えたドラマだと思います。

増子委員長

 まず、この今の世の中ではうけが悪いであろう題材を取り上げたことは偉いなと思いました。脚本は日本人の方ですか。

渋谷業務担当局長

 鄭義信さん、在日韓国人の方です。

増子委員長

 そうですか。最近はいわゆる勝ち組の人を取り上げたものが多いですが、このドラマに出てくるのは負け組の人ばかりです。負け組というとごく一部の人に思えますが、実は、我々の大半は負け組です。一生懸命なんだけど、不器用な生き方しか出来ない、やってもやってもチグハグだ、そんな人は自分のまわりに沢山います。家族はそれぞれに思いが深いのに、その気持ちを素直に伝えられない家族も多いわけで、そういった心理を深いところで表現していたのではないでしょうか。

 最後のシーンで村田さんが親父さんに会いにきて、親父さんが黙礼し、村田さんは親父が焼いたものを食べている。あれはもう和解している、親が結婚を許しているんですね。つまりドラマの全編を通じて、そういった象徴的な表現の手法が様々に使われている。また、言葉は最小限に切り詰められ、それが効果的だったとむしろ感じました。

 小澤さんの「俺だって一生懸命やってるんだよ」という台詞を聞いて、就職活動でつまずき、就職試験さえ怖くなっている自分のゼミの学生を思い出しました。つい怒鳴ってしまいそうになるが、あいつらも一生懸命やってるんだなと、そんな気持ちになったり、様々なことを教訓として汲み取れるドラマではなかったでしょうか。

 蛍の話をしたあとに「所詮、ムシだね」という台詞がありましたね。なかなか気の利いたドラマだなと思いました。全編を通じて、よくこういうドラマを作らせたなとかなり好意的に見ております。他のご意見をどうぞ。

村田委員

 「うみのほたる」というタイトルに感心しました。蛍ではなく、ひらがなというのも良いですね。ほたるは魂を運ぶ神秘的なものと私は思っていますし。バリ島では死んだ者はほたるになるというのは無理があった気もします。それが兄の魂を運んできた、というストーリーには繋がっていますが。

 でも「うみのほたる」というタイトルは良い。つける側も相当悩んだと思います。

増子委員長

 視聴率はどうでしたか。

渋谷業務担当局長

 岩手は調査週ではありませんが、北海道では12.7%です。脚本の鄭義信さんは昨年、崔洋一監督の「血と骨」で脚本を書かれた方です。

増子委員長

 目立たないけれども、余程の人が作っているというのが見ていると感じられましたね。

村田委員

 今、初めて聞きましたが「血と骨」を書いた人らしい。反逆のような、燃えるような抵抗心が感じられますね。なるほど。

松尾委員

 このドラマは仏教的な部分も多くて、現状は何も解決していないけれども、自分の心を変えることで、それを受け入れることが出来るのだ、一歩幸せに前進できるというのが仏教的です。そういったことを感じました。

増子委員長

 それでは次回の予定をお願いします。

佐藤事務局長

 次回は10月27日(木)です。

 合評番組は「小学生クラス対抗30人31脚岩手大会2005」です。

増子委員長

 それでは終了します。ありがとうございました。

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

特になし

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 10月度単発番組編成予定表

◎ 8.9月岩手地区視聴率