放送番組審議会

11月(第63回)

概要

 岩手朝日テレビの第63回番組審議会が平成14年11月28日(木)、盛岡市盛岡駅西通の同社会議室で開かれた。

まず、12月、1月の番組編成についての説明があった。話題になったのは、23日放送予定の「ふるさとCM大賞」。同社初の試みで、県内の市町村がそれぞれの地元を自慢、コマーシャルを制作。作品の審査の様子を1時間25分の番組にして放送する。

  • 「作品を通して地域を再発見できるだろう」
  • 「地域に密着したいい発想で、期待している」

という意見が出た。

合評番組の「土曜の奇跡!TVのチカラ」については、

  • 人も金も使っているが、それが生かされていない
  • 臨場感を出すためか、司会者がちょっとうるさい

など厳しい意見が相次いだ。

出席委員は、増子 義孝委員長、及川 和男副委員長、大坊 忠委員、宮野 祐子委員、笠川 さゆり委員、松尾 正弘委員、小川口 柳太郎委員の7名、欠席委員は、石井 三郎委員、松本 直子委員、植本 花子委員の3名。

議事録

1.   平成 14年 11月 28日(木)午前11時~

2.   岩手朝日テレビ本社・会議室

3.委員の出席

委員総数 10名

出席委員数  7名

 委員長 増子 義孝 

副委員長 及川 和男

  委員 小川口 柳太郎

  委員 笠川 さゆり

  委員 大坊 忠

  委員 松尾 正弘

  委員 宮野 裕子

欠席委員数  3名

  委員 石井 三郎

  委員 植本 花子

  委員 松本 直子

会社側出席者名

   代表取締役社長 川崎 道生

     専務取締役 村上 昇

取締役営業本部長補佐 横舘 英雄

   取締役業務局長 河邊 喬

    報道制作局長 星井 孝之

      技術局長 山口 孝

 番組審議会事務局長 末吉 正憲

4.議題

(1)12,1月の番組編成について

(2)番組合評

  「土曜の奇跡!TVのチカラ」について

(3)次回の審議会

 開催日:平成15年1月23日(木)

合評課題:「ふるさとCM大賞IN IWATE」

(4)その他

5.概要

合評番組「土曜の奇跡!TVのチカラ」

・人も金も使っているが、それが生かされていない。

・臨場感を出すためか、司会者がちょっとうるさい。

・取り上げた事件やその後どうなったのか等、分からない内容が多い。

・「TVのチカラ」を知らしめる意図に沿った効果が今のところ出ていない。

自社制作番組「ふるさとCM大賞inIWATE」

・作品を通して地域を再発見出来るだろう。

・地域に密着したいい発想で、期待している。

6.議事の内容

末吉事務局長

 おはようございます。定刻でございますので第63回番組審議会を始めます。

 初めに川崎社長、挨拶をお願いします。

川崎社長

 お忙しい中ご出席を賜りまして有難うございます。

 さて、民放連に加盟しておるテレビ、ラジオ、BSやFMなど約200社余りの各社のトップが年に1回、一堂に会して民放連の全国大会を開催しておりまして、その大会が今週の月曜と火曜にございました。今年は第50回大会ということで横浜で開催されまして、当社からは村上専務と私が出席して参りました。

 今年はもっぱら人権擁護法案等のいわゆるマスコミ規制法案に対する反対のアピールと、デジタル化にどう対応していくかという、この2つが大会の大きなテーマでした。例年ですと総理大臣や総務大臣等が出席しますが、今回は国会開会中でして、内閣官房副長官や副大臣といったレベルがゲストスピーカーとしてみえました。それから毎回、NHKも出席しております。

 この席で民放連会長は、デジタル化の問題について、デジタル化に関わる費用は1年前までは700~800億と言われていたのが、現時点では1700~1800億の費用を要するという状況が明白になってきており、これにより放送各事業者が多大な負担増の中で対応して行かなくてはならない。国民の生活に寄与するという建前がある以上は、デジタル化という技術の進歩を国策として進めていくべきであり、国の援助が必要であることをアピールしておりました。

 私はテレビ朝日時代、総務局長として民放連大会の縁の下の仕事をしておりましたが、昨年からだいぶ形を変えて参りました。それ以前は儀式的な要素が大きかったのですが、昨年、今年は実質的な討議が熱心に交わされるようになりまして、これは非常に良いことだと思います。

 そしてもう一点のデジタル化の問題ですが、喫緊の課題でして、実は当社がこれに対応する形を改めて確認してみますと、技術局長を委員長とする技術主導の「デジタル化対策委員会」は既にあったのですが、デジタル化にどう対応していくかは、一技術の問題ではなく、社全体の問題でありますので、社内組織を改組し、社長を委員長とする「デジタル化推進委員会」と、実質的な討議を行う「推進小委員会」とに分けまして、経営判断等で間違わない形で対応していくために仕切り直しを始めたところでございます。

 それからもう一点、前回も触れたかと思いますが、上期の営業状況について前年比95%という見通しを申し上げたかと思いますが、非常に厳しい状況ではありますが、その数字で終了しました。テレビ朝日でも下期の予測もなかなか立てにくい状況が以前として続いているようですが、とにかく当社の場合は、厳しい状況下で社員全体が明るく元気に何としてでも、岩手の中での当社の存在を示していくべく、様々な仕掛けをやってきておる次第でございます。それから、当社に関わる問題として高弥建設の件がございます。12月2日に債権者集会が開催される予定です。当社も高弥の社債を購入しておりまして、この問題にどう対応すべきか検討しております。まだまだ来て間もない私の判断では若干足りない所もあろうかと思いましたので、県内の主要な方々に意見を伺いまして、明日の弊社の取締役会で最終的な社としての対応を決めようということにしております。

 そういったことで、県内の様々な方にお話を伺ってきた訳ですが、その中で良い言葉も頂戴しました。私が社内で言っております、小ぶりと言えども存在感を示せる局を目指そうということについて、ある方が『おっしゃるとおりだ。ナンバーワンでなくともオンリーワンという形があるじゃないか。』と。つまり岩手朝日テレビとしての存在感を他にない形で出してもいいのではと改めて言って頂いたことで、それこそがまさに我々が目指すものであると、心新たに致しているところでございます。是非、先生方にもそういうお立場で、厳しいアドバイスを頂戴出来ればと思います。本日も宜しくお願い致します。

末吉事務局長

 ありがとうございます。それでは議事に入らせていただきます。

 増子委員長、議事の進行をお願い致します。

増子委員長

 はい。それでは12月と1月の番組編成からお願いします。

河邊業務局長

 それでは説明いたします。

 年末年始ですので特番やレギュラー番組の拡大バージョンなどが数多くございますが、特に当社制作の番組を中心に紹介させて頂きます。

 12月1日(日)「『はやて』がやってきた!」。同日に東北新幹線盛岡~八戸間が開業しますので、系列の青森朝日放送と共同制作した85分枠の生放送をいたしします。

 12月14日(土)「地域活性化を目指して~前潟地区開発と県都、盛岡都市開発~(仮)」。盛岡インター付近の前潟地区開発がいよいよ本格化し、第一号の専門店が11月29日にオープンします。このショッピングモールについてVTRや対談形式で構成した番組を放送します。同日19時からは「小学生クラス対抗30人31脚全国大会2002」。11月23日に横浜アリーナで全国大会が行われた模様を放送します。岩手からは仙北小学校が参加し、優勝には及びませんでしたが、地区大会で出した記録を更新し、頑張ったということです。

 12月23日(月)「ふるさとCM大賞IN IWATE」。司会に山本晋也監督とIAT山田アナ、各ジャンルからの審査員を迎えて11月30日(土)に審査会を開催し、その模様を収録して放送いたします。12月28日(土)「カシオペア連邦~四季ノ宇宙(ソラ)ヲ歩ク~」。タレントのロザンナさんの娘、万梨音がカシオペア連邦の二戸市・軽米町・九戸村・浄法寺町・一戸町を訪ね、四季折々の風土、観光、物産、偉人を紹介し、このエリアの持つ魅力を再発見していくという趣旨の番組をお送りします。

 1月1日(水)「30人31脚スペシャル」。12月14日に全国大会をゴールデンで放送しますが、全地区の学校を十分に紹介できない部分もございますので、このスペシャル枠でその辺のフォローをしております。

 1月2日(木)早朝7時から「緑の大地に夢馳せて」。今年3月に放送した小岩井農場での人間の成長を描いた作品で、プログレス賞奨励賞を受賞しましたので、再放送させて頂きます。そして同日9:55からは「マギー審司みちのくマジカル紀行~味な各駅停車出会い旅~(仮)」。テレビ朝日系列東北ブロック共同制作の番組で、今回はIATが企画提案しました。東北新幹線は八戸開業し、東北全県に新幹線が通ることになり、東北はさらに近くなりますが、旅の魅力は出会いと発見。そんな旅の魅力の宝庫であるローカル線を、若手マジシャンとして売り出し中のマギー審司が旅します。岩手は三陸鉄道北リアス線の旅を紹介します。また同日10:50から「お正月だよ!活謹情報局」。『おめでたい』をコンセプトに、いわての新春の模様を生中継でお送りします。

 以上、ローカル制作を中心に紹介させて頂きました。また、2003年1月クールドラマの改編についてはお配りした資料をご覧下さい。

増子委員長

 ありがとうございました。番組編成についてご質問ございますか。

小川口委員

 「ふるさとCM大賞」は岩手朝日テレビで企画したんですか。素晴らしいですね。

河邊業務局長

 そうです。系列の山形テレビがこの企画を今年で3回やっておりまして、それを参考にして始めました。

川崎社長

 これは何としてでも良い番組にしていきたいですね。

小川口委員

 各市町村の広報担当者が紙面では様々な宣伝をしていますが、なかなかテレビでは出来ませんから。どのようになるのか気になりますね。

増子委員長

 副賞が気になりますね。CMの無料放送というのが。

川崎社長

 当社の目指す地域密着に、いちばん沿っている企画だと思います。その意味で、結果として今回は参加市町村が34にとどまったことが残念です。今回はこの34市町村を何とか良い形で放送に露出して、来年は、今年足りなかった点の検証を早急にして、このソフトを大事にしていきたいと思います。「ふるさとCM大賞」は、市町村の特性を出すことが目的で、技術の善し悪しは二の次のようなところがあります。この点も大事にして行きたいと思います。そして、東北ブロックの社長会では、他県にもふるさとCMを乗り入れることが出来たらもっと良いのではないかという話し合いも持たれております。他県に放送した場合、どの程度受け入れられるかという難しさはあろうかと思いますが、検討課題だろうなという話になっております。

増子委員長

 岩手県の市町村はどの位あるのですか。

河邊業務局長

 58市町村です。ですから6割の市町村が参加します。

宮野委員

 市や町はほとんどが参加ですが、村がやはり少ないですね。人や金銭の問題も関係するんでしょうね。

増子委員長

 私が住む町が参加していないのは、けしからんですね。こんな素晴らしいものに参加しないとは。

川崎社長

 そうですね。放送が終わってから参加しなかった市町村の住民の皆さんから、何故参加しなかったのかという意見が出てくれば、この企画が成功したのかなと思いますね。

及川副委員長

 58のうちの34市町村ですから集まったほうだと思いますよ。欠席したほうが、しまった、と思うでしょうね。

河邊業務局長

 山形は44市町村ありますが、3回目にしてやっと全市町村が参加したそうです。

 40市町村くらいが参加しますと、残りの4市町村はどうしても参加せざるを得ないという状況になりますせいもありますね。来年は是非、もっと多くの参加を目指したいと思います。

増子委員長

 楽しみですね。それからドラマの改編についてですが、「はみだし刑事情熱系」が1月から始まりますが、「相棒」は終了してしまうのですか。「相棒」は評判悪かったんですか。

川崎社長

 この枠は1クールごとに「はみだし刑事」「はぐれ刑事」そして「相棒」と交替で放送しますので、決して「相棒」が打ち切りになる訳ではありません。

増子委員長

 「相棒」は何となく見てしまうんですよ。なかなか快調だと思っていたので残念でして。

河邊業務局長

 視聴率も非常に上がってきておりますが、ずっとやっておりますと、どうしてもマンネリ化しますので、シリーズを変えて放送しております。

増子委員長

 そうですか。是非「相棒」は消すことなく続けて頂きたいですね。他にございませんか。それでは「土曜の奇跡!TVのチカラ」の合評に入ります。松尾さんからお願いします。

松尾委員

 この番組は私の好きなタイプの番組ではありませんでした。なるべく良い点を見つけようと番組を見るのですが、どうしても批判的な内容が多くなってしまいますが、ご了承下さい。

 まず、番組全体を通して凄く騒々しく、見ていて疲れました。司会が3人いますが、その内の板東英二とラサール石井の2人だけが大活躍で、ユンソナはちょっと出番が少なすぎる、活かしきってないと思います。そして高橋英樹以下のコメンテーターが毎週出演していますが、誰がいるのかという紹介も無いし、時々顔が出るくらいで何人もいる必要はないと思いました。

 サイコメトラーや心理カウンセラーといったその道の専門家が次々に様々なことをやるのですが、いかんせん見つからない。私は3回見て1件は見つかったのですが、どうも不調でした。そして、捜査の途中経過はこうで、今にも見つかりそうだ、ところが番組が終わるまでには見つからなくて空振りをする。ここまで引っ張っておいてなんだ、という感じなんですね。先週、先々週は生中継で、放送中に見つかるのではないかという期待を抱かせつつ途中で終わってしまい、非常に欲求不満が募りました。

 それから大々的に取り上げた事件のその後はどうなってしまったのか解らないものが余りにも多すぎて、捜査が継続しているのか、それとも見つかったのか。放送してそれっきりというものが多すぎる気がします。私が見た回で1件だけ見つかったのが、24年前に生き別れた母を探しているというもので、その母の妹さんが情報提供をしてスタジオで感動の対面、というものでした。これは非常に感動的で貰い泣きしてしまいました。しかし、これに新しさはあるのかというのは疑問でして、30年以上前からこういった番組はあった気がしますね、桂小金治さんが司会で。あれとどこが違うんだろうと思いましたね。

 番組の狙いとしては「TVのチカラ」「奇跡」と謳っている訳ですから、普通では見つからなかったものが、テレビによってこれだけ効力がありましたという「TVのチカラ」を知らしめるところに狙いがあると思います。しかし、今のところその効果はあまり出ていないので、今の状態が続いていくと企画倒れと言われても仕方ないのかなと思いました。最後にエンディングテーマですが、普通に聞けば楽しいポップスですが、それまでずっと張りつめた状態できてあの音楽が流れると、番組そのものがおふざけに感じてしまいます。ちょっと冗談のような内容、曲調ですから。ホッと肩の荷を降ろすので良いと感じる人もいるかも知れませんが、もっと相応しいエンディングテーマがあったと思います。以上です。

小川口委員

 私も松尾さんがおっしゃったような感じを受けました。スタジオと現場、取材のVTR、前回放送を編集し直したものと画面の切り替えが早くて、混乱しつつ見たという感じです。板東さんが早口で一生懸命喋るのですが、現場からの中継を遮ってまで口を挟むんです。あれは余計ですね。それから高橋英樹さんらのコメンテーターがたまに映りますが、演技なのか解りませんが一生懸命聞いている姿を映すだけで、ただ座ってるだけで何の為にいるのかなと私も思いました。逆にいらないと思います。

 また、行方不明の男性の血痕や車のトランクに入ったとか、刑事事件的な内容を含む事例もあって、刑事事件であれば既に押収しているはずで、その辺りはどうなのか、警察との関係はどうなっているのか、疑問を感じるものもありました。土曜のゴールデンタイムに果たして他の番組を見ないでこの番組を見るのかといった場合、ちょっと難しいと思います。労力と金を使っている番組だとは思いますが、厳しいと思います。

大坊委員

 私は「土曜の奇跡!TVのチカラ」タイトルそのものの内容の番組だと思って見ました。テレビの力、メディアの力は大きいものだなと思いました。11月15日の回は24年前に生き別れた母親と対面する、というのがなかなか感動的だったものですから。ただ気になったのは、母親を探して各地を歩く娘さんが、収録する日にちは違うとは思うのですが、同じような服装をしていましたね。そして服の袖で涙を拭うのが気になりました。気を利かせてスタッフがハンカチを差し出すとかあっても良かったと思います。スタジオで母親と対面した時には、母親が娘の涙をハンカチで拭いていたんですが。

 それから携帯電話の画面を生中継で使っていましたが、どうしても画像が悪くてチラチラして、見ていて具合が悪くなりました。携帯電話の画像はあまり長時間の中継には向かないと思いました。それから、金融機関に強盗が入る場面がありましたが、あれは全くその通りだと思ってみました。私もコンビニエンスストアを経営しておりますから、日ごろ防犯には努めております。犯人の背丈を知るために入り口にビニールテープを貼ったり、事件発生時に押すボタンは勿論あって、警備保障や警察に連絡がいきますが、今はそれでは遅いんですね。ヘルメットをかぶって入店したり何となく怪しいと思った時点で押すボタンが今はあります。そのボタンを押すと警備会社がモニターでその怪しい人の動向を常に見張ってくれます。そして「只今、警備中です」といった店内アナウンスも流れ、強盗をしようといった、おかしな気になるのを予防しています。むしろ犯罪が起きてからボタンを押すよりも、予防に力を入れるという考え方になってきています。余談になりましたが以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。凄いですね。それでは及川さんお願いします。

及川副委員長

 以前に頂いた10月の編成方針という資料によりますと『土曜の20時台を改編してインパクトのある生放送で週末のパワーアップを図る。この番組は生放送でテレビの力を利用し、ありとあらゆる試みに挑戦していく。希望や夢を持つ人が願いをテレビに託し、生放送でメッセージを伝える。人生を前向きに生きようと頑張る人を、テレビの力でサポートしていく。10月の編成の勢いをこの枠から創出する』という大変な意気込みで始まりました。その意気込みと意図がテレビ朝日として、どう実現されているかという観点で見ました。

 番組を3回見ただけでは確かなことは言えませんが、この意図からはズレていると感じました。失踪した人間、あるいは何らかの犯罪に巻き込まれたであろうかも知れない家出人の探索、そういった趣になってしまっている。そしてSOS受信と情報提供に集中されるのは、どうしてもこうした失踪者や家出人に関することが中心になってしまうという点で、ネタが偏ってしまっているとまず感じました。しかしそれにも理由がある気もします。警察の家出人や失踪者の捜索は、届け出人にとっては満足出来ない対応で、体制が不十分です。何か事件が起きたとか、身元不明人や死体が見つかった時に照合する程度です。また現代は、捜索対象エリアがどんどん拡大しているという事情もあるかと思いますし、今の社会事情を反映して家出人や自殺者が増大の一途をたどっているという現実もある。ですからその一方に家族肉親の沈痛、ワラにもすがりたいという願いも堆く積もっているという、そういう条件の元でテレビの電波力の大きさを思えば、このような探索のテーマは成立しますし、有効だとは言えると思います。

 しかし、やはり今までのご意見があるように、見ててとても満足出来るような内容ではありません。本来の意図からズレて、失踪者や家出人探しの番組になっているのは残念なことだと思います。しかもワラにもすがる思いの家族や親族の必死の願いが、土曜の夜の、茶の間の娯楽の被写体にされていることに私は違和感を覚えます。他人の不幸を見ているようなものですよね。ですから、上手く書けていても読み終わって後味の悪い小説を読まされたような感じがします。

 しかも先ほどもご意見が出ておりましたが、サイコメトラーなどを登場させて、これがお遊びやゲームならともかく、その透視術をメディアの技術的最先端を行くテレビが、金と時間をかけて追い掛けるということは、逆にテレビ側の見識を疑わせるのではと思いました。青少年たちに学校や家庭でも、科学的な思考や論理的な思考を育みたいと一生懸命になっているところに、サイコメトラーや透視術、しかも潜入して見せるといったことは、私は問題だと思います。

 私ども人間を取り巻く現代の荒廃状況を画像を通して実感はできますが。しかし、アパートの扉を開けて長時間話し合うような姿や、犯罪に関わるような取材といった点では、危険にもさらされると思います。そういった点も含めて、やらせスレスレの演出過剰という危険をもはらんでいる、こういったことを十分に注意して取り組んで行って欲しいと思いました。辛口過ぎましたが以上です。

増子委員長

 ありがとうございました。それでは宮野さん、お願いします。

宮野委員

 はい、私もほぼ皆さんと同じ意見です。11月2日の放送でこの番組を初めて見た時には、意味が分からなかったし、どこかで見たような、そしてヤラセのようにも見えました。この番組のホームページを見ますと「捜査結果が判明しても、当事者の希望により結果を公開しない場合があります」というテロップがあって、だったら何のために放送するのかなと疑問を覚えました。「こういった事例がありますよ」という事例集的に見ればそれで良いのかも知れませんが、結果を求めている視聴者にとっては不安と言いますか、理解しづらい面がありますね。ホームページとテレビの両方を見ればこの番組の流れが分かりますが、番組だけを単発で見ますと、意味を理解出来ないうちに1時間終わってしまうというのが、私の結論でした。細かい事を言えば、13歳の少女の家出を扱った回で、同じ年ごろの子どもを持つ私としては、この少女の顔を画面に出してしまうのかと必死になって番組を見てしまいました。結果として出ませんでしたが。「テレビのチカラ」ということは分かりますが、どこまでテレビが入り込めるのかなと、一般市民としては理解しづらい部分が多々ありました。

増子委員長

 ありがとうございました。笠川さん、お願いします。

笠川委員

 今まで特番や似たような1時間番組があったなと思わせる番組でした。やはり司会者、特に板東さんがうるさいと思いました。状況説明をしているアナウンサーの声を遮るまでもない質問をしたり、単に臨場感を出す為なのか解りませんが。それから、同じく司会としてユンソナさんを何故ここで起用したのかもちょっと解りませんでした。ユンソナさんは最近バラエティ番組に出演したり女優さんとしても活躍していて、日本語も上手にお話になる方だから、あえてこの番組で司会をしても彼女を生かせてないと感じました。事件性を含む内容の番組なのに、番組を締める人が居ないのも疑問です。ラサール石井さんからは伝わってくるものがありますが、その他のゲストや司会者については、番組の内容からして、ちょっと違うのではという思いで見ました。それから気になった点は、強盗犯人の似顔絵が出ましたよね。そして似顔絵を元にして、こういった顔付きの人だというたとえで役者さんの顔を出しましたよね。その顔が視聴者には印象に残るので、逆効果になるのではという点が気になりました。1つの印象を植えつけ過ぎてしまって問題じゃないのかと、映像の恐さを感じて見ました。以上です。

増子委員長

 はい、ありがとうございました。この番組を見て私も後味が悪かったし、腹が立ちました。長い時間延々と引っ張られて、それで一体何なんだという感じがしました。まず、「TVのチカラ」というタイトルだから、テレビが不特定多数の人から情報を集める場合に威力を発揮することは、とっくに分かっていることなのだから、それ以外に何があるのだろうと思って見ておったら、つまりは何も無い。

 例えば13歳の子どもを探すのにしても、あれはテレビではなく探偵の力じゃないですか。局は何もしていない。それからサイコメトラーやら何か理解し難い連中が出てきて川を浚ったり警察ごっこをしたりと、外側かで第三者が他人の人生を楽しんでいるという感じがしました。そして最大の誤りは、シナリオの無いストーリーを定められた時間内に押し込もうという、とんでもない過ちを犯していると思うんです。ですから様々な無理が生じていますよね。ですから板東さんがわめいたりといった、様々な細工を凝らさないと番組の時間内で、今まで何十年も何日間も解れなかった糸が一挙に解れるといったことは、ほんのわずかな確率で、そうそうあり得ないことでしょう。

 局の都合で人の人生をあの枠の中にはめ込んで、それを皆で楽しむ、さらし者にしている。つまり、この番組に出る人は皆、切羽詰まっているから出る訳ですよね。「何でもしますから、どうか見つけて下さい」という思いで。その弱みにつけ込んで、いいように仕立て上げているという感じがして、私はとても後味が悪かったです。むしろ、既に解決したストーリーを再構成して放送したほうが救いがあると思います。人によってはもっと深い事情があって、会いたくても会えない、会いたくないということもあるかも知れない、それをテレビで結び付けられてしまったら、様々の事情を無視することになるし、極めて危険な番組だという気がします。この番組を見てあまりにも腹が立ちましたので、激しい言い方になってしまいましたが、そんな気がしました。

及川副委員長

 制作者側におごりがあるような気がしますね。私が先ほど読み上げた編成方針の中には、ああいった意図があったのに何故こうなってしまったのか、その辺りの悩みもあるんでしょうが。何故たまにはポジティブなものを出さないのか疑問です。意図としてあったはずなのに。

増子委員長

 くどいですが、見た後に何か後味が悪いんです。

川崎社長

 要するに時代を描くという部分に欠けていると思います。手法が非常にあざとくなっている、そこに集約されると思います。今の制作者の力不足なんでしょうね。見ていて悔しい思いがします。

増子委員長

 他にもご意見をどうぞ。

松尾委員

 一回に一話は小さなものでいいですから、見つかるものを放送してもらわないと次を見る気が起きませんね。この前の13歳の少女のように、複雑な事情が見え隠れして、見つかってもかえって問題が山積みだという場合もありますので、番組として取り上げる段階でそういった事例は外すようにしないと。私はあの場面で、本当に見つかったらこの子の今後の人生はどうなるのかと思いましたから。ですからどのケースを取り上げるかは十分に議論すべきだと思いますね。

小川口委員

 個人のプライバシーにどこまでカメラが入って良いのか。勿論、画面に出ている人たちは承知の上での出演でしょうが。今の時代、悪いことをしたら勿論ですが、良いことをしても、テレビに出るとすぐに電話が来ますから。知人ならまだしも知らない人もどこかで電話番号を調べてかけてきますから。余計なお世話をする人は世の中大勢いますから。ですからカメラの力は想像するだけでも、もの凄いものがありますね。

及川副委員長

 血痕を残して行方不明になった男性の事件現場の映像で、「KEEP OUT」の黄色いテープが貼ったままになっていましたが、捜査が済んでも貼っておくものでしょうか、ちょっと疑問です。そして家族ですら許可を得なくては入れないその中へ、テレビカメラが入れるのか。しかも放送時間が夜のために、本来ならそういった場所であれば昼間に取材するべきなのに、オンタイムで夜ライトを当てて入って行きますが、警察との関係が疑われるというか、何か作為を感じてしまって白けます。いろいろと気になることが多いです。

増子委員長

 はい、ありがとうございました。他にございませんか。

小川口委員

 今日の合評とは関係ありませんが「ビフォーアフター」は面白いですね。最高ですね。他の番組をさいてでも見ています。

宮野委員

 私も面白いと思います。視聴率も良いのでしょうね。

河邊業務局長

 例えば11月10日の視聴率は17.7%あります。

増子委員長

 それは高いですね。ちなみに「TVのチカラ」はどの位ですか。

河邊業務局長

 8%くらいです。

及川副委員長

 やはり週末のあの時間ですから本当に楽しめる番組、あるいは同じような題材でもカタルシスがあるというか。この番組は逆に詰まってしまいますから。

宮野委員

 土日の20時台は他局もそれほど魅力的な番組が無いんです。ですから日曜の「ビフォーアフター」はとても良いと思って見ています。「TVのチカラ」も期待していたんですが、ちょっと残念ですね。

増子委員長

 他にご意見はございますか。よろしゅうございますか。今日は辛口な意見が多かったですね。それでは本日の審議会を終了します。ありがとうございました。 

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

特になし

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 12・1月度単発番組編成予定表