放送番組審議会

6月(第129回)

概要

 岩手朝日テレビの第129回番組審議会が平成21年6月25日(木)、盛岡市盛岡駅西通の岩手朝日テレビで開かれた。

 合評内容は「報道発ドキュメンタリ宣言」

  • 過去に報道ステーションやニュースで取り上げられていたが今回の放送を見て無罪と思っていたが有罪なのに驚いた。
  • 裁判員制度が開始されるとこれからは、その過程での番組は難しくなるのか。
  • 番組の反響は、ホームページに一週間で約20,000アクセス、番組投稿欄に約2,000件あった。
  • 被害者、加害者の過去の証言を引き出して欲しかった。
  • キャスターの長野さんの次回予告があっさりしたのは視聴者にといかけていたのか。
  • この事件に関わった警察、検察、裁判官と関係者は、たくさんいると思うが一切出てこないのは疑問を感じる。
  • 番組のテーマが一体なにを伝えたいのかはっきりしない感じがする。
  • 7年に亘る取材陣の苦労と熱意が伝わるドキュメンタリーとして一応の評価はできる。
  • 今回の事件は、改めて親と子の絆の大切さを問い若い世代の危うさと、もろさをあぶり出した事件である。
  • 裁判員制度が始まるにあたり、一石を投じるドキュメンタリー番組と評価できる。
  • 長野キャスターの一人よがりの番組になっている。
  • 冤罪事件があったのかの説明も薄っぺらで良くわからない。
  • 今後スーパーモーニングとの連携を期待する。
  • 番組の印象は、無罪間違い無しとの前提で作られている。
  • ニュース報道とドキュメンタリーでは、多少違う。ドキュメンタリーは、ディレクターの作家性、メッセージ性が極めて高いものがある。
  • 2002年から7年間取材してきた。逮捕された少年10人の周辺を相当綿密に取材したが10人全員の周辺から、彼らがやった証拠が一切挙がってこない。
  • 冤罪とまでは言わないまでも彼らを犯人にするには合理的な疑いがあるとの確信を得た。
  • 鹿児島の志布志事件を取材した時と同じ印象を受けた。今回も現場を踏んだ記者の直感としか言わないが確信を得た。
  • 彼らは、恐らく全員再審請求するでしょう。それも、第1次、第2次、第3次と、いつまで続くかわからない。
  • ドキュメンタリーをソフトに作りすぎたがために誤解を招いてしまった。収斂しないで拡散してしまった。
  • これは大スクープになると思う。突き詰めてその裏をとり、本当に動かない証拠がもし手に入れば凄い。
  • 足利事件のように再審が決まり検察側が謝罪してから報道したのでは遅い。捜査、公判に問題点があればその時点で随時チェックしていくのがメディアの役割である。
  • 裁判員制度が始まると事件報道は、色々な制約がされる、しかし萎縮してはならない。事実は事実として、判らない事は判らないと明らかにして、判っていることを判っているだけ報道することがこれからいよいよ大切になってくる。
  • 裁判委員制度の報道については、人々の理解を深めるための啓蒙的なものと、問題点を指摘していく批判的報道がこれから求められる。

という意見が、委員と担当ディレクターから出た。

出席委員は、増子義孝委員長、笠川さゆり委員、そのだつくし委員、弭間俊則委員、村田久委員、吉田政司委員の6名。欠席委員は、小田島利昭委員の1名。

議事録

1.開催日時 平成 21年 6月 25日(木)午前 11時~

2.開催場所 本社3階 会議室

3.委員の出席

委員総数  7名

出席委員数 6名

委員長 増子 義孝

委員 笠川 さゆり

委員 そのだ つくし

委員 弭間 俊則

委員 村田 久

委員 吉田 政司

欠席委員数 1名

委員 小田島 利昭

会社側出席者名

代表取締役社長 富永 健治

編成業務局長兼放送番組審議会事務局長

小林 直紀

テレビ朝日チーフプロデューサー

原 一郎

報道制作部部長 佐々木 貴

番組審議会事務局 佐藤 清一

4.議題

(1)番組合評

「報道発ドキュメンタリ宣言」

(2)6月単発番組について

(3)次回審議会

開 催 日:平成21年7月23日(木)11時~

本社 3階会議室

合評課題:「高校野球関連番組全般」

放送日時:

・純情応援歌2009~生徒たちがつくった学校紹介

 県大会出場校が自身の手でつくる、チーム紹介ビデオを

 軸に、出場校プロフィールを紹介。

 6月15日(月)~7月10日(金)

 毎週月~金18時40分~19時00分(全20回)

・白球ライブ!2009

 7月11日(土)~開会式から7月22日(水)決勝戦まで

 県営球場の試合を生中継

・白球ダイジェスト

 県大会期間中、試合結果等をダイジェストで紹介

 7月11日(土)~7月22日(水)

                 平日18時17分~18時56分のIATスーパーJチャンネル内

                 土日17時55分~18時00分

5.概要

○  過去に報道ステーションやニュースで取り上げられていたが今回の放送を見て無罪と思っていたが有罪なのに驚いた。

○  裁判員制度が開始されるとこれからは、その過程での番組は難しくなるのか。

○  番組の反響は、ホームページに一週間で約20,000アクセス、番組投稿欄に約2,000件あった。

○  被害者、加害者の過去の証言を引き出して欲しかった。

○  キャスターの長野さんの次回予告があっさりしたのは視聴者にといかけていたのか。

○  この事件に関わった警察、検察、裁判官と関係者は、たくさんいると思うが一切出てこないのは疑問を感じる。

○  番組のテーマが一体なにを伝えたいのかはっきりしない感じがする。

○  7年に亘る取材陣の苦労と熱意が伝わるドキュメンタリーとして一応の評価はできる。

○  今回の事件は、改めて親と子の絆の大切さを問い若い世代の危うさと、もろさをあぶり出した事件である。

○  裁判員制度が始まるにあたり、一石を投じるドキュメンタリー番組と評価できる。

○  長野キャスターの一人よがりの番組になっている。

○  冤罪事件があったのかの説明も薄っぺらで良くわからない。

○  今後スーパーモーニングとの連携を期待する。

○  番組の印象は、無罪間違い無しとの前提で作られている。

○  ニュース報道とドキュメンタリーでは、多少違う。ドキュメンタリーは、ディレクターの作家性、メッセージ性が極めて高いものがある。

○  2002年から7年間取材してきた。逮捕された少年10人の周辺を相当綿密に取材したが10人全員の周辺から、彼らがやった証拠が一切挙がってこない。

○  冤罪とまでは言わないまでも彼らを犯人にするには合理的な疑いがあるとの確信を得た。

○  鹿児島の志布志事件を取材した時と同じ印象を受けた。今回も現場を踏んだ記者の直感としか言わないが確信を得た。

○  彼らは、恐らく全員再審請求するでしょう。それも、第1次、第2次、第3次と、いつまで続くかわからない。

○  ドキュメンタリーをソフトに作りすぎたがために誤解を招いてしまった。収斂しないで拡散してしまった。

○  これは大スクープになると思う。突き詰めてその裏をとり、本当に動かない証拠がもし手に入れば凄い。

○  足利事件のように再審が決まり検察側が謝罪してから報道したのでは遅い。捜査、公判に問題点があればその時点で随時チェックしていくのがメディアの役割である。

○  裁判員制度が始まると事件報道は、色々な制約がされる、しかし萎縮してはならない。事実は事実として、判らない事は判らないと明らかにして、判っていることを判っているだけ報道することがこれからいよいよ大切になってくる。

○  裁判委員制度の報道については、人々の理解を深めるための啓蒙的なものと、問題点を指摘していく批判的報道がこれから求められる。

6.議事の内容

小林事務局長

 それでは、只今より、第129回岩手朝日テレビ放送番組審議会を始めます。本日は合評課題にもありますように、テレビ朝日のプロデューサー原一郎さんにご出席願っております。合評課題にさしかかりましたら忌憚の無いご意見をお聞かせ願いたい。

 それでは、増子委員長、議事をお願いいたします。

増子委員長

 それでは富永社長、一言お願いします。

富永社長

 本日もお忙しい中、お集まり頂きましてありがとうございます。委員長には大阪の代表者会議に出席いただき有難うございました。お疲れ様でした。

 今週22日月曜日に弊社の株主総会を開催しました。そこで朝日新聞、テレビ朝日、日刊スポーツから来ていただいている非常勤の役員と監査役一名の交代がありました。

 また弊社役員であります報道局長の小椋が東京支社へ異動となり東京担当、報道局は兼務として常務の辻が担当致し、報道局長には次長の佐々木貴が局長に昇格し担当いたします。

 次に、岩手朝日テレビの中継局についてですが、これまでの計画では、アナログ同等ということでありまして、全県をカバーしている訳ではありませんでした。今年度に限りですが国と自治体からそれぞれ二分の一ずつ100%補助を利用して設備を整えます。これで先行局と同数のデジタル中継局を建設することになった。これにより岩手県全域で岩手朝日テレビの番組を見ることができることになります。約3万世帯で視聴可能になります。

 なお、本日は報道発ドキュメンタリ宣言の合評でテレビ朝日の担当プロデューサーであります原が出席いたしております。よろしくお願いいたします。

増子委員長

 ありがとうございました。

 何かご質問等ございませんか?

 それでは、7月の単発番組と6月の視聴率についてお願いします。

小林編成局長

 7月はスポーツ一色の単発番組となっております。

 7月11日から21日まで高校野球県大会の生中継、ニュース枠でダイジェストや純情応援歌の放送が始まり、全米女子オープンゴルフ、全英女子オープンゴルフ、世界水泳と正にスポーツ一色な一ヶ月となります。

 また7月17日が石原裕次郎23回忌特別番組といたしまして、7月4,5日には特別番組の放送を予定しております。残念ながら、その週は視聴率週間ではありません。

 6月の視聴率についてです。プライムは多少出込み、引っ込みがありますが、IBCさんは4,5月以来の番組の改編が思うように行ってないという風を受けて、IATとして全日・ゴールデン・プライム共にIBCの上をいっております。ただ個々のなかなか数字を見てみると、弊社のスーパーJチャンネルも昨年比数字を落としております。一番視聴率を取っているテレビ岩手さんニュースとして、なぜ、これだけ受け入れられているのか新局長共々研究していきたい。ちなみに最後に岩手地区の4月~6月クール平均が3位以上というのは過去に無い数字であります。

増子委員長

 ありがとうございました。何かご質問ございますか。

 それでは合評課題に移ります。

笠川委員

 この事件については、報道ステーションやニュースとして取り上げられていた。報道特集での放送を見た際、「無罪」だと思っていたので、今回違う内容に少しビックリしました。

 事件の成り立ち、裁判等の内容が見ている側にとってとてもわかりやすい放送でした。特に、様々な実証実験があり、取材もしっかり丁寧でよかった。

 また少年や家族への取材も裏づけもきちんとしていたように思います。少年たちの手紙の文字を見て、月日が流れていく中で文字が変化し、成長の跡が見て取れ、複雑な思いだっただろうと文字を通して考えました。12月に足利事件もありテレビサイドから冤罪事件を作るようなことのないように、取材で確かな裏付けを的確にとらなければならないと考えさせられました。裁判員制度が始まる中でこれからは、その過程での放送は難しいとは思いますが、できるだけそうしたものの裏に隠れている部分を明らかにする事が大切と思う。

 キャスターの長野さんが何かいろいろしゃべるのかなと思いましたが番組の最後にあまりしゃべらなかったのは、視聴者に考えさせる意味もあったのかなと思いました。

そのだ委員

 番組の反響は、どうだったですか。

原・CP

 ホームページへのアクセスが1週間で20,000アクセス、それから、番組投稿欄に2,000もよせられた。これは記録的な数です。

そのだ委員

 とても丁寧なつくりで、よく7年も追跡やっていたと思います。

 見る側としては、検察、裁判所に、ものすごく腹が立った。被告2人の成長変化していく様子、特に手紙や顔つきの変化を見せられ、悪者と決めつけているわけではないが、中でも少女の証言とか、少年たちの過去の証言を引き出せなかったのか疑問に思う。

原・CP

 刑事法上には、当時未成年の強姦未遂被害者事件であり少女の人権もあり聞けなかった。

そのだ委員

 見ていて、今の社会、女性に対しては有利なのかなと思いました。男の目線で見ると世の中冷たいなとも感じました。反面、家族の絆が深くなっていく番組の様子がよく理解できた。長野さんの次回予告があっさりしていたのは、視聴者に問いかけをしているのかなと思いました。

弭間委員

 この事件は、知らなかった。番組をみて初めて知りました。番組自体論理的構成で初めての私や視聴者にもわかりやすかった。冒頭の出だしから、かねてからの冤罪事件のように打ち出したような足利事件のようにドキュメンタリーで構成するのとはなにか違うような気がしました。司法の場では、足利事件と今回のとは違うのではないか。

 流れを見ていて、この事件に関わった警察、検察、裁判官と、関係者はたくさんいると思うのですが全くテレビの中には出てこない。当然やるべき事をやってない裁判所・検察・警察はいったい何をしているのかと疑問を感じました。

 また、このままこの事件が終わってしまえば闇の中に終わってしまう事実もあるのではないでしょうか。

 本当にあったとしたら冤罪が強姦未遂なら、この事件の酷さをもっと視聴者に伝えるべきだと思います。その部分が全く視聴者には伝わっていませんね。

 見終わって、このテーマがいったい何を伝えれば良いのかハッキリしていないように感じました。

村田委員

 「それでも僕らはやっていない」と言うテーマでの報道特集でしたが、大筋の感想として何点かお話させて頂きます。

 どの家庭でも起こり得る事件です。内容の重大さを密着7年に亘る取材陣の苦労と熱意が伝わりました。ドキュメンタリー番組として一応の評価ができると思います。

 しかし、見る側としては、冤罪として押し付けられて見せられている。冤罪か冤罪でないかこの番組からは確かな答えは返ってこない。さも見る側に警察側は間違っているよと思わせるふしがある。実はこれが怖いところです。2人の少年を追って連綿と作るのみで、全体が見えない。被害者の少女とか警察関係は全然出てこない。番組に出せないものもあると思うが、消化不良で終わっている。番組側の一方的な見解で終わる感じがする。少年側の弁護士がいると思うが一度も出てきてないし、何をやっているのか疑問として残る。今の世情で援助交際をやるような少女の自白を信じてよいものか、何か怖いものがある。

 事件当日雨が降っていたとか、降ってなかったとか科学的根拠があったと思うが、今の裁判ではこんなことがあるのか、つまり証拠採用ならないのか全然追求してないし、単に見るだけでは、我々に解らない。

 少女の自白を信じた判決にも違和感を覚えました。

 援助交際をする少女の性格、また、事件のあった日の嘘の証言等を考えると、少女の自白をそのまま信じるのはどうなのでしょうか。この事件の科学的根拠や被告人らのアリバイより自白を重んじた判決となりました。

 少女の診断書、物証もなくこの時代において自白だけによる判決、最高裁への上告は門前払いで棄却に恐怖と大いなる疑問が残ります。

 今回の事件は、改めて親と子の絆の大切さを問い、若い世代の危なさと、もろさをあぶりだした事件と言えるでしょう。

 裁判員制度が始まるにあたり、一石を投ずるドキュメンタリー番組であると評価できる。

吉田委員

 6月1日の放送は、中途半端で若干消化不良のような番組構成ではなかったか。足利事件の報道や、岩手宮城内陸地震の1年間のルポルタージュのインパクトが強く、身近な番組とバッティングしていたように推察します。7年も追跡の集大成と大上段に構えた割には、テレビ朝日がどれだけ材料を持っているか分りませんが見せ方があえてかもしれないが平板で自身が納得するまもなく他の委員の指摘するまでなく、事件そのものがあったかどうか含めて長野さんの一人よがりに終わってしまっている。

 冤罪事件があったのかの説明も薄っぺらで良くわからない感じでした。また、対面調査で、弁護士、警察の状況や裁判官の状況全く出てこないその部分を出さなかったのはもったいないと思います。番組そのものは解りやすいですが作りが平板すぎてもったいない気がする。

 9月16日の関係者のアリバイで相応の納得性がある、変更後の9月9日のお天気のみに。焦点が絞られている。これについては、二つの材料を持っていてなぜ攻めることが出来ないのか、もっと掘り下げた取材できないのでしょうか。新事実は明らかになるのを興味深く見たいと思います。テレビ局の手持ちの材料の見せ方については、6月1日に披瀝していただける部分がもっとあったのではないかと人知れず思います。今後スーパーモーニングとの連携を期待しています。

増子委員長

 村田先生から出た意見は全く私の意見と同じです。裁判員制度について考えさせられる内容を多々含んでいたと思います。

 印象は、無罪、間違いないとの立場から作っている。最初からの視点で明々白々にわかりました。親子の関係はテレビ視聴者を引き付けるには必要なことだ。徹底して論理的に司法との対決するような気迫で作る、少し厚みのある取材するようなものが欲しかったですね。裁判員制度がスタートしたら、この手の番組は作れるのでしょうか。予断を明白に与えたに違いないこういうドキュメンタリーをこれから作れなくなるのではないかとの危惧を覚える。

 どうして2回目の9日のアリバイへの言及はない、これは絶対のおかしい、そこが解明されれば無罪、冤罪で或る事を主張できると思いますね。解らないとか、当人たちの記憶もないとか、一番肝心なものを避けている、其処のところがドキュメンタリーの弱さになっていたのでないか。犯行の日を変更するなんて聞いたことがない。それについて裁判官、検察官どのような理由付けをしたのか聞きたい。9日は嵐があり特徴的な日であったのに天気の件や少年たちの行動、何をしていたか等、なぜはっきり思い出せないのでしょう。全くわからないです。

原・CP

 いろいろ指摘いただいている、一方的な見解で取材をしているのではないか、一人よがりではないか、確かに被告側に相当寄り添いすぎてる企画であるとは制作者自身感じてます。

 報道番組は不偏不党、公正中立がモットーであるニュース報道と、ドキュメンタリーでは多少違うと思う。ドキュメンタリーはディレクターの作家性、メッセージ性が極めて高いものである。今回どうしてこのような作りにしたか二つ理由があります。

 ひとつは、2002年から7年間取材してきた。逮捕された少年10人の周辺を相当綿密に取材しましたけれど10人全員どこからも、彼らがやった証拠が一切あがってこない。逮捕当初の証拠は自白のみで、逆に無実を証明するアリバイとか状況証拠が次々でてくる。そういう現場に何回か通いつめる中で取材者として冤罪とまでは言わないまでも彼らを犯人にするには合理的な疑いがあるとの確信を得た。

 以前鹿児島の志布志事件を取材しましたが、あの時もまったく同じ印象を受けて、あの時もずっと冤罪ではないかと言ってきた。今回も現場を踏んだ記者の直感としか言わないが確信を得た。一般的に事件報道というのは検察、警察発表起訴後は冒頭陳述、論告求刑、判決とかに基づいて報道する。

 このニュースは事前報道で少年が逮捕されました有罪判決受けました。彼らがやったというニュアンスの犯人視報道が多いなかで、ひとつの番組ぐらいは、被告や家族の目線で見つめてみると、全く違った様相を呈して来ますよとそういう番組があっても、全体としてはバランスとれているのではないかという、信念を持ってつくりました。

村田委員

 制作者の信念はわかります。信念は解るが、それならば質的にドキュメンタリーだから作家の思いとか目線でものを作れるということになれば、問題は、番組の質にあります。冤罪ではないかと、考えるなら大変なことである。もう少し詳細に、たとえば10人引っ張られてなぜ二人なのか、そういうところが全然触れられていない。9日二人は、もしかしたら少女とあっていたではないかということすら解っていない。それならドキュメンタリーだとして許されるものではない。

増子委員長

 僕は独りよがりだとは思わない、多分冤罪だと思う、だったらこれは勝負です。長野さんの全部を賭けて、まちがっていたらその責任を負って生きていかないといかん、そういう番組です。その割には緻密さに欠ける。ここは合理的疑いがあると突き詰めていく番組だ。ところが我々が見てもその程度ではだめだという中で取材はしていると思うが、納得できないと我々は言っている。

原・CP

 過去3回ザ・スクープ・スペシャルという番組で特集をやっている。ザ・スクープは調査報道番組ですので、証言、証拠に基づく検証ドキュメンタリーとして制作しました。

 ドキュメンタリ宣言として取り上げるにあたって、特に夜7時台はファミリー視聴の時間帯で、ザ・スクープとか深夜のドキュメンタリーみたいに、ドキュメンタリー好きばかりでなく、初心者がたくさん在宅している時間帯でどうやって話題を扱うかにかかっている。この時間帯では家族の苦悩であるとか戦いにスポット当てて再構築した。特に、裁判員制度を前に人を裁くこととはどういうことなのかをファミリーの間で議論してもらうには、がちがちの調査報道よりも被告人の思いとかを絡めて問いかけたい意図があってこうした構成になった。

 結果的にVTRは43分しかつなげないわけですから、心情部分を描いた部分、事実関係で割愛せざるを得ない部分がでてきたことは確かです。9月9日に犯行日を変更されてからは、今回は、アリバイではなく雨に特化して報道しようとなった。当然9月9日の少年たちのアリバイも全て取材している。たまたま、ユウジ君にアルバイトが5時に終わってその後自宅でテレビをみていたと第三者の証言はないが、タカシ君はこの日が両親の結婚祝いで焼肉屋パーティーをしていてカツマタ様何名さまという記録も残っている。その後カラオケに行き皆で騒いだ其の時合流した第三者の証言も取れている。裁判では、信用性がないということで採用されていない。そこまでは、取材しておりますが、時間の制約で全て網羅できなかった。

 検察関係者や裁判官なりの取材に関しても、質問状を出しましたし、刑事の本音部分も取材した、これは続報でお伝えしたい。訴因変更した裁判官も退官されたので取材できた。何で訴因変更したのかの部分も取材したので近々放送する予定です。

 一回の構成で盛り込めなかった部分は、今後継続して出し、報告していく。このネタやった以上は、彼ら恐らく全員再審請求するでしょう。それも第一次、第二次第三次といつまで続くかわからない戦いですし、恐らく自分自身ライフワークとして定年過ぎても追いかける。

 今回はおっしゃる通り、非常に中途半端な段階で、言葉足らずな面が多々ありますが、今後の私たちの放送に期待していただけたいと思います。

増子委員長

 第三者の証言があるのですか。

原・CP

 あります。しかしそれは信用できないと、親が言わせているのではないか、みたいなニュアンスです。

増子委員長

 それは複数の人の証言がありますか。

原・CP

 二人については、複数の証言が在るんですが、行きつけの焼肉屋であったり友人関係の証言だったり信用できないとの司法の判断である。

増子委員長

 これは有罪か無罪かの話であってあまり水っぽい話は入れない方がいい。その方が納得性があるし、今まで議論した反論が出てこない。

原・CP

 恐らくザ・スクープでやったり深夜の時間帯であれば全然違う構成になっていたと思う。ドキュメンタリーフアンとかニュース好きの人が見る構成と、中学生からお年寄りまで見てる時間帯では。

増子委員長

 それが間違っていたのではないかと思う。全部一連のものを見ていれば納得できるが、あれだけポンと出されればね。なぜ9日のアリバイに言及しないのか、疑問が次から次へでてくる。

 果たして大丈夫かという感じになる。だけど実際そうではないはずです。僕も絶対無罪だと思うし、むしろ裁判、捜査の杜撰さが将来問題になるケースである。

村田委員

 時間帯云々ではない。ドキュメンタリーは時間帯で制約されるのかということになる。この事件をきちんとやって親子の絆が面々と全篇から流れるのはあんまりだ、それならこれ別に関係なくドキュメンタリーとしてつくればいい。最初から冤罪だと見せて、あの作りでは、ちょっと無理だと思う。

 連綿と親子の絆ばかりを見せておいて最後に涙を流して裁判所に入って行く、収監されるところまで映す事よりも、この事件の核心をもっと詳細に述べる方がドキュメンタリーである。

増子委員長

 親子の絆なんてあたりまえだ。ああいう立場に追い込まれたら普通の親は、ああなります。

吉田委員

 ドキュメンタリーをソフトに作ったがために、誤解を招いてしまった。収斂しないで拡散してしまった。

原・CP

 ドキュメンタリーに二種類ありまして、調査報道に基づくザ・スクープのような検証ドキュメンタリーもひとつの手法ですし、家族闘いにスポットをあてた切り口の人間ドキュメンタリーもあるでしょうし、その両輪があるような気がする。

吉田委員

 二兎を追ったがために皆が苦労している。捕らえ方やその視座が定まり難い。普通は番組を見ていると納得して収斂されていくものだが。自分の納得性が拡散してしまっている。

増子委員長

 司法制度がある中でそういうものに挑戦してる訳だから、覚悟意識が必要だ。

そのだ委員

 小学生が見ても解りやすい。大人が見るとこうした評価になる。中学生とか何も知らない子供たちが見るとドラマみたいな感覚でみてしまう。僕も悪いことしたらこんな風になるんだとかと思うのではないか。

増子委員長

 だから普通に見ればこんな酷いことと見る。酷いことという印象を与えるためには、やはり裁判に関わる問題だから、きっちり通常の作りではなくやっておかないと色々な批判がでるのではないか。

原・CP

 検証部分は、ザ・スクープでやってこの番組は、人間ドキュメンタリーとして始めた番組であります。本当に無実を訴えたまま収監されていく、その無念さとかそういうものを訴えたかったことで、この番組ができた。

増子委員長

 一くくりに全部見てれば、なるほどと思うんだが、あれだけ見たのでは、これは大丈夫かと思う。

原・CP

 確かに43分という限られた時間内に全部を詰め込もうとしたところに無理があったのはいなめなかった。これだけ7年間取材している2時間あっても足りないくらい。

村田委員

 逆に7年間やってこれだけかと思う。7年間やったらきちっとして充実した詳細なものが出てきていいのではないかなと思う。

増子委員長

 これは大スクープになると思う。このまま突き詰めてその裏をきちんと取って、本当に動かない証拠がもし手に入ればこれは凄いことになる。

原・CP

 裁判員制度が始まるとこういったのができなくなるんではないかに関してですが。ニュース報道に関しては一定の基準はできた。調査報道、ドキュメンタリーに関しては議論が分かれる。

 個人的には、足利事件のように再審が決まり検察側が謝罪してから報道したのでは遅いと思う。捜査、公判に問題点があればその時点で随時チェックしていくのがメディアの役割である。裁判員制度が始まればこうした調査報道番組はやりにくくなるとおもう。

増子委員長

 雨は100%降らないことは証明するのは難しい。

原・CP

 100%科学的に立証できる。100%あり得ないという証拠を裁判官が証拠採用しないで、静岡管区気象台の職員の雨が降らない事もありえない訳ではないという証言を信用性で採用した。

増子委員長

 科学的であればその職員はそうした証言をする訳がない。お天気の専門家がそうした発言が出てくるだけの科学性についてもう一つ本当に100%か。

原・CP

 100人の気象予報士に聞いて100人が有り得ない話だ。と言います。

増子委員長

 だけど、一人がそう発言している、言わせられているにしても専門家の中にいることが問題だ。

原・CP

 再審請求の段階では複数の本当の権威とされる人たちの鑑定書が提出されることなる。

村田委員

 普通は刑事が現場行って被告が店で食事したことが、判明すればそれがアリバイになると思うが。

原・CP

 ほとんど裏付け捜査をしていないみたいだ。最初の時点で9月16日に皆アリバイがあったわけで、親たちが主張してもその時点で刑事が裏付けしてれば全員にアリバイがある訳ですから恐らく起訴されていないしこの事件はなかったと思う。

 裏づけ捜査をしないまま少女の証言だけで突っ走ったところが問題だ。

増子委員長

 しかし、一番の問題は疑わしきは、罰せずという刑事法の大原則がある。これは疑たがわしきですよね。

原・CP

 この裁判官にも問題があると思う。

村田委員

 上告して最高裁まで行きましたね。

原・CP

 事実審理は全くしていませんけど。

村田委員

 最高裁で棄却されたとなると一応門前払いですね。

 今後はどうなるのですか。

原・CP

 再審請求です。高裁の雨の認定の根拠となった数字が捏造であるということがわかっていてその証拠も最高裁に提出しているが一切審理されずに終わっている。その証拠を再度提出する方向です。

小林事務局長

 スクープの側で継続してやるのか報道でやるのか。

原・CP

 両番組でやりたい。家族の戦いとしてドキュメンタリ宣言でやり、調査報道としてはスクープできっちり検証してやりたい。

笠川委員

 この事件はテレ朝でしかやってないですよね。

原・CP

 一審、二審、最高裁と全て有罪判決ですよね。一般的に事件報道は判決を尊重して絶対不可侵のものとしてそのまま伝えるのが基本です。この判決はおかしいと拳を振り上げるには余程裏づけ取材の確信がないとできない。

増子委員長

 長野さんがやってこられたのですか。

原・CP

 長野さんとずっと一緒にやってきました。

増子委員長

 彼女の存在をかけたものとして完結しなければならないと思う。

 ついでに、先般の代表者会議で裁判員制度について大阪朝日の豊倉委員長とテレ朝の堀田委員長の発言を紹介します。

 三年後に制度の見直しを予定されている、その裁判委員制度にどんな問題があるのかまずメディアが検証していかなければならない。メディアは、これから裁判員制度の将来について大きな役割と使命を持っている。

 取材源の秘匿とか制約が課される中で裁判員からは積極的に取材すべきだ。禁じられていることはあってもその対象にならない裁判員制度に関する感想とかを取材すべきだ。

 豊蔵さんは心配なことは、刑事罰の原則である、疑わしきは罰せず、という法概念をきっちりと裁判員に理解してもらえるか。つまり、印象で裁判員が流されるようなことは無いかということです。優良なで合理的な証拠が見つからなければ、無罪である。それが法概念の確信にあるのだと言う事を裁判員に理解していただいて裁判に臨んでもらうことが大切である。

 控訴審で一審がひっくり返った場合、職業裁判官が優位に立つことになると裁判員裁判の判決が否定されてしまうことはあっていいのか、その場合差し戻ししかないのではないか発言していた。

 堀田さんは、事件報道は色々な制約が課される訳であるにしても萎縮してならない事実を事実として報道することが大切だ、つまり、判らないことは判らないとして、ここまでしか判らないと明らかにして判っていることを判っているだけ報道することがこれからいよいよ大切になるだろう。報道の使命は事件の持つ社会的な意味を報道することであるから、あまり萎縮しないでこれまで通りやって欲しい。

 裁判員制度の報道については、人々の理解を深めるための啓蒙的ものと、問題点を指摘していく批判的報道がこれから求められていく.

 これが番審代表者会議の法律の専門家のコメントでした。

増子委員長

 何か他にございませんか。では次回についてお願いします。

小林事務局長

 では次回についてですが、「高校野球関連番組全般」を合評課題にしております。是非ご覧になって貴重なご意見をお願いいたします。

増子委員長

 それでは終了します。ありがとうございました。

7.審議機関の答申または改善意見に対してとった措置

ご指摘頂いた点を、今後の番組作りの参考とすることとした。

8.審議機関の答申または意見の概要の公表

7月10日(金)朝日新聞岩手県版に審議概要を掲載。

系列各局に議事録を送付。

本社受付に議事録を常備、閲覧に供す。

インターネットホームページに掲載。

9.その他の参考事項

特になし

10.配布資料

◎ 7月単発番組編成予定表

◎ 6月岩手地区視聴率