放送番組審議会

7月(第10回)

概要

 8月、9月の番組構成について、業務局長が説明をした。この後、神戸市須磨区の小学生殺害事件の報道について話し合った。

 この時点では加害者の少年は逮捕されており、犯人探しは終わって、事件の背景究明がポイントだった。

 初期段階に誤れる犯人像を作り上げたことに批判がでた。推測に基づく報道は犯人逮捕後もあり、特に人権との絡みでより慎重であるべきとの指摘があった。

 この事件に限らず、報道の中で、それまでに判明した事実をつみあげて事件の再現、検証をするやり方が流行っているが、事実だけを伝えることに撤するべきとの意見もあった。一方で、サリン事件の反省が生きていて、報道の側に常に冷静であろうとする姿勢が見えるとの指摘もあった。

議事録

1.開催年月日     平成9年7月28日(月)

2.開催場所      株式会社岩手朝日テレビ本社演奏所会議室

3.委員の出席     

            委員総数   12名

            出席委員数   9名(うち一名紙上参加)

          

  出席委員の氏名

    奥寺一雄委員長、大橋瑠璃子副委員長、大掘勉委員、佐々木明子委員

    佐々木友江委員、箱崎敬吉委員、盛内政志委員、山口徳治郎委員

    箱崎安弘委員(紙上参加)

  欠席委員の氏名

    大島正蔵委員、瀬戸内寂聴委員、三好京三委員

  放送事業者側出席者名

    蓮見代表取締役専務、桑折常務取締役、升谷業務局長、横舘報道制作局長、

    菊地技術局長、河邊業務局次長

4.議 題

  (1)8、9月の番組編成について

  (2)「神戸市須磨区の小学生殺害事件の報道」について

  (3)次回開催日および議題について

  (4)その他

5.議事の概要

 8月、9月の番組構成について、業務局長が説明をした。この後、神戸市須磨区の小学生殺害事件の報道について話し合った。

 この時点では加害者の少年は逮捕されており、犯人探しは終わって、事件の背景究明がポイントだった。

 初期段階に誤れる犯人像を作り上げたことに批判がでた。推測に基づく報道は犯人逮捕後もあり、特に人権との絡みでより慎重であるべきとの指摘があった。

 この事件に限らず、報道の中で、それまでに判明した事実をつみあげて事件の再現、検証をするやり方が流行っているが、事実だけを伝えることに撤するべきとの意見もあった。一方で、サリン事件の反省が生きていて、報道の側に常に冷静であろうとする姿勢が見えるとの指摘もあった。

6.議事の内容

◎桑折事務局長

 では第10回番組審議会を始めます。蓮見専務よりご挨拶申し上げます。

◎蓮見専務

 今日もお忙しいところありがとうございます。望月社長は所用の為、出席できませんので、お許し願いたいと思います。

 皆さんご承知のように今、高校野球の岩手県大会をやっております。今日は決勝戦が行なわれるということで、社内的にはちょっとばたばたしております。私どももこの会議が終わりましたら、球場の方へ参ります。たいへん慌ただしい中で開催いたしますので、ご迷惑をおかけいたしますけれど、よろしくお願いしたいと思います。

◎桑折事務局長

 それでは奥寺委員長、お願いいたします。

◎奥寺委員長

 8、9月の番組編成と神戸の小学生殺人事件報道が今回のテ-マです。神戸の事件は、ショックは受けましたが、どのように解釈したらよいのか、そんな気持ちでして、今日はむしろ各委員さんのお話を色々聞けるかなと思っております。

 では初めに業務局長さんの方から、番組編成についてお願いいたします。

◎升谷業務局長

 それでは駆け足になろうかと思います。8月は番組審議会がお休みですので、8月と9月の番組編成について説明いたします。

 8月は情報系のレギュラ-番組、「やじうまワイド」、「ワイドスクランブル」、「トゥナイト」、「ニュ-スステ-ション」のレギュラ-のメンバ-が夏休みをとらせていただきますので、それぞれの番組の中で、夏休み期間中のスタッフと入れ替わりますので、その辺りもご了承願いたいと思います。

 8月の単発番組につきまして、お手元の一覧表にそって説明いたします。2日(土)、土曜ワイド劇場が20周年ということで、その特別企画の第2弾、「西村京太郎トラベルミステリ-」があります。それから3日(日)14時からサンデ-プレゼント「田原総一郎の人間発掘スペシャル国産テレビ第一物語」。このシリ-ズは戦後日本の復興を支えた人たちの業績を、ドラマ等で再現するというもので、今回が3回目。国産テレビ第1号の製造、開発に尽力した3人の男たちの物語です。それから同日、16時30分から17時25分まで高校野球岩手県代表校の特番を編成します。制作は私ども岩手朝日テレビです。それから「日曜洋画劇場」は「バットマンリタ-ンズ」。15分拡大し、23時09分までです。それから高校野球が始まりますと、「熱闘甲子園」とうい番組が始まります。高校球児の甲子園での奮闘ぶりをハイライトで30分間紹介します。大会初日の8日からの放送です。それに伴いまして、「ニュ-スステ-ション」がその期間中、90分バ-ジョンから60分になるという変則的な編成になります。土曜日、日曜日につきましてもレギュラ-が30分短くなります。

 9日(土)19時からは「真夏の夜のバラエティ-」。これは東京湾の花火大会の模様を音楽とバラエティ-で構成するという内容です。10日(日)「サンデ-プレゼント」は「地球最後の秘境」とうことで、ヒマラヤのヤルツンポ渓谷に初めてカメラが入って取材をしました。リポ-タ-はジャズの渡辺貞夫さんです。それから17日ですが「21世紀への伝言2」ということで、日米安保条約を軸に「この国を守るというのはどういうことなのか」というテ-マで考えます。出演は加藤周一さん、村上龍さんなどです。23日(土)16時からは55分番組「うまいぞ!日本」。これはシリ-ズの第3弾です。出演が田中律子、奥山佳恵。旬の素材を求めて新潟県下を周り、イタリア料理のシェフの片岡さんという人に地元の素材でイタリア料理を作ってもらおうという内容です。それから30日(土)14時から、先日東北自動車道秋田線が開通しましたので、その記念特別番組として岩手・秋田の両知事に出演していただき、「奥羽山脈を越えて」ということで対談をしていただきます。 岩手朝日テレビ と秋田朝日放送の共同制作です。

 次に9月の編成ですが、最終的にはまだ固まってはいませんが、わかっている分だけご紹介いたします。6日(土)「TOTOス-パ-陸上」があります。13日(土)21時から土曜ワイド劇場1000回記念、「復讐法廷」。20日(土)には「いわて直言テレビ 一関編」があります。

 9月につきましては秋の改編にむけて9月、10月と期末編成という特別の編成をいたします。9月15日から10月12日まで4週間、レギュラ-番組で講評なもののスペシャルバ-ジョンなど変則的な編成になっております。簡単ですが、以上です。

◎奥寺委員長

 ありがとうございました。次の議題に移ります。「神戸須磨区の小学生殺害事件の報道について」であります。私もたいへんショックを受けました。どのように解釈したらよいか、皆さんたいへん重いテ-マだったと思いますが、遠慮なしに語っていただきたいと思います。では山口委員からお願いいたします。

◎山口委員

 7月8日の「ニュ-スステ-ション」を見ました。ちょうど「14才からの手紙」というのを取り上げていました。9日は今度は大人からの手紙を取り上げていました。久米さんが「実はこの時期にあまりこういう取り上げ方はしたくないんだ」と断りをいれていましたが、あの時期、心理学者とか色々な識者が登場しまして、例の手紙の分析やらその他色々な角度から動機を探っていましたが、私の方から見ますと、いわゆる普通の人たちがどういう受けとめ方をしたのかということが、視聴者の手紙を読み上げていくうちにわかりまして、ある意味ではホッとしました。一般の日本人の感覚というのがこれを聞いて分かって、安心して、たいへん私にとってよかったと思います。

 久米さんは普段ゲストが来ても、そのひとの顔を見ないでしゃべったりして、なにかモニタ-テレビを見ている時間が多くて、ちょっと気になっていました。でもこの久米さんという人は、何か事件の起きたときの対応にはたいへん強い人で、冷静で、そういう部分に改めて感心しました。神戸の問題については以上ですが、なかなか難しいですね。

 神戸以外の問題では、14日の「ニュ-スステ-ション」で鹿児島県出水市の土砂流の事件に対して、以前も申し上げましたが、的確な図の説明がありまして、たいへんわかりやすくて感心しました。これに関連してだと思いますが、建設省の河川局の開発課長さんというのをスタジオに呼んできて、公共投資の問題について話していました。おもしろい切り口でした。途中で課長さんと高成田さんの意見がなかなかあわず、ちょっと時間をおいて別室でまとめてからもう一度出てきてほしいと、たいへん生々しいやりとりがありましたね。                                      それから同番組の中の「めざせ甲子園」というシリ-ズで、北海道の利尻と名寄の高校の試合をやっていました。その中で、利尻の高校がどのようにして甲子園を目指しているかというのを取り上げていましたが、たいへんおもしろかったです。ナレ-ションの低音の押さえ気味の声も、音楽も、最後に言った久米さんの「利尻っていいところですね。いい所っいうのは住んでいる人もいい人たちですね。」というコメントも良かったです。以上です。

◎盛内委員

 神戸事件はあまりにもショックが大きくて、委員長がおっしゃるように、毎回見るのが何となく忍びない感じです。

 月の始めのニュ-スでは子供たちの声、教師の声、親の声というのを色々出していました。その中で子供たちは「親とか先生を殺してやりたいと思ったことがある。」と物騒なことを言っていましたね。びっくりしましたね。昔も親に叱られたりすると冗談で殺したいと言ったことはありますが、今は真に迫るような言い方だったので驚きました。

 それから数々のニュ-ス番組で、凶器であるナイフを発見したとか、あるいは池でハンマ-を発見したとか次々出てきまして、その少年の容疑がまるっきり確実視されるような物証が次々出てくるのには驚きました。これから裁判でどうなるかわかりませんが、少年院送りのようですね。実は私、保護司を36年間勤めました。少年院から出てきた子を扱うことがしばしばありました。男でも女でも。少年院を終了すると「ハク」がつくといううんですね。例えて言えば刑務所に一度入ってきたという感じのものであって、年は18歳か19歳ぐらいであってもまるで大人のようですね。神戸事件の少年を今の法律では普通の犯罪者として裁けないから、少年院措置というのになるかも知れませんが、果たしてそういうふうな子供を少年院で処遇できるのかと心配です。そして改善させて、社会に復帰させ得るのかというふうなことを保護司をやった経験上な危惧を感じるというのが実感でした。

 それからこの神戸事件以外のことで、確か6日だったと思うんですが、岩手県知事と三枝成彰さんとの対談番組がありましたね。私は対談の中に文化芸術関係のことが少しはでてくるかと思ったんですが、「芸術の産業化」とか「ハリウッドと岩手」とか非常に大きい話にはなっているが、地に足がついていないというんでしょうか、少し空想的な話になっているなと。これは夢を語るという意味ではいいかも知れませんが、もう少し柔軟なアイディアがお二人から出されてても良かったのではないかという感じがしました。

 それから久米宏さんのことなんですが20日、在来馬が絶滅の危機に瀕していて、それを救えという番組をやっていましたが、その話題の解説で久米さんが「独擅場」を「独壇場」と言っていましたが、それは間違いですね。やっぱりテレビ放送などの場合は正確に日本語を伝えてほしいなと思いました。以上です。

◎箱崎(敬)委員

 神戸の事件につきましては、あまりにも大きく、衝撃的な事件で、まだ何故という疑問が解けない情況のなかで、断片的にニュ-スから得た情報のみで感想めいた意見を述べるということは正直いって控えたいような気持ちであります。事件発生からおびただしい情報や推測が流れまして、連日のようにニュ-スで取り上げられ、評論家やリポ-タ-あるいは関係者が次々と現われて、コメントをするわけでありますが、結果的には誤った犯人像の報道、あるいは容疑者の顔写真報道の波紋というようなこともあったわけであります。ニュ-スステ-ションでも世論調査をもとにマスメディアのあり方を取り上げていました。過剰放送、過剰報道もありましたし、関係者の人権問題など、改めて報道のあり方というものが問われた事件でもあったと思います。

 今回は各局のニュ-スを見たので、どれが朝日テレビだったのかという区別はつかないんですが、一般的に感想を述べますと、ひとつは興味や憶測で報道するべきではないということを感じました。こうした事件の場合、マスメディアにとってはより早くということと、より正確にということを両立させるということはなかなか難しいところですが、これは視聴者との信頼関係にも関わりますので、やはり厳しく点検してかかるという姿勢が必要だと思います。

 二つめはどうしても人権問題になってきますけれど、加害者の写真が波紋を呼びましたね。一方で、被害者の写真などもずいぶん乱暴に扱われているのではないかという感じがしました。記憶も新しいですが、取り返しのつかない失敗をした、サリン事件の河野さんの問題がありましたね。そうしたことが二度とないようにするためにも、人権の配慮はより慎重でなけれはならないという気がします。また加熱する報道合戦で地元の子供たちや地域の人々が混乱している。地元への取材というのも、節度を守ってやるべきだと思います。

 三つめになりますが、犯行の動機というのは2、3日前に神戸地検の捜査結果として明らかにされたわけです。マスコミは逮捕後に色々な番組を組んだわけですけれど特に学校が悪い、あるいは教師が悪いというように、学校側に焦点をあてて構成された番組は短絡的で感心しませんでした。ただ、殴られた生徒が転校して、いじめたほうの生徒が居残っているという矛盾した状態というのは問題として指摘されなければならないかと思います。アメリカでは悪いことをした者は場合によっては転校する場合もあるそうですが、日本は逆になっている。日本的な風土かなと思います。

 その他、どのテレビでしたか、容疑者の逮捕時の現場記者の報告の際、周りの子供たちがVサインとかしてきゃっきゃっとはしゃいでいる画がでましたね。たいへん不謹慎ですね。あの場にいた報道関係者はどう受けとめているのか。何故、何度も注意をしなかったのか。仮にも報道関係者が同じように野次馬的な気持ちでやったとすればその姿勢にはたいへん問題があると思います。

 それから、盛内さんから岩手県知事と三枝さんの対談番組のことがでていましたが、あれは私も見ました。知事対談ということではありましたが、ゲスト的な三枝さんの独り舞台で、どうも司会のアナウンサ-がそちらの方ばかりに話を向けるんですね。知事はほんのちょっとしか話していない。知事対談なのだから、もっと知事の考え方も聞きたかったわけですけれど、なかなか矛先が知事の方へ向いていかない。何の為に知事を引っ張りだしたての知事対談なのかと思いました。いくら有名人であろうと知事を引っ張りだした意味が薄れるようなことのないように、もっとやりとりを重視した司会をやってもらえればというふうに感じました。以上です。

◎大橋副委員長

 神戸の小学生殺害事件ですが、身震いするようないやな事件でした。私は朝日テレビだけではなく、とにかくどの局も見るようにしました。つくづく感じたのはこういう事件の報道はたいへん難しいことだということです。今考えても、親も先生も社会の人も何故こうなったのか、どうしたらいいのか、結論が出ない難しい問題だと思いますが、最初の頃に報道したときにはもっと難しかったであろうと。警察からもあまり情報がない。どこからか情報を探すのでしょうが。報道というもの、テレビ、新聞は私達に真実を伝えてくれると思っております。そういう意味では最初の取り上げ方については、犯人像に大きな間違いがあったわけです。40歳だとか黒い車だとか、もうそう思い込んでしまうほど、激しい報道であったと思います。それが、少年だったということが発表になってからは各局とも落ち着いて、背景の分析に向いていきました。最初の激しさを物語るのは、どの番組だったか、専門家の方々が出てきて色々と議論していましたが、その中である若い大学教授が始めから「若い人の犯罪だ」と言っていたんですね。その方はあの犯人像の前で「私は若い人だと思いますという勇気を失いました」と言っていました。そういうふうなこともあって、非常に報道の難しさを感じました。

 朝日はずっと「14歳」に焦点をしぼって毎回取り上げてくれたので、この世代の少年というのがよくわかって良かったです。NHKも専門家の方が、色々と分析していて良かったですね。

 何故かということになると、やはり一番「学校」を取り上げているわけですが、家庭のことはまだ一つも出ていません。こういう犯罪の起きる社会への突っ込みもまだない。ですからこの問題はまだまだこの先があります。そういうところにも取り組んで、みんなに知らせてほしいと思います。もっとよくこの問題は深めていってもらいたいと思いました もう一つは高校野球。たいへん楽しませていただきました。どうもご苦労様でした。

◎佐々木(友)委員

 「14歳の少年の心の闇を追う」という番組を見ました。その他「ニュ-スステ-ション」なども含めまして、たくさんメモをしまして、昨夜整理しようと思ったんですが、全然整理できませんでした。

 私は実際、盛岡の少年院に毎月ケ-キを持っていって誕生会をやるというのを10年やってきました。10年やってきて、子供たちを見て、院長先生と「やっぱり子供たちはさみしいんですね。」という話をしました。私も勉強のできない子供たちを預かることが多いんですが、その子供たちを見るといい子なんだけれども、どういうふうにするとこうなるのかなと思うときがあります。少年院の子供、私が預かっている子供、私の息子を考えてみると、「子供はさみしい」と思いました。どこかをもし暖かい思いをしたら、こうはならなかったのではないかと思います。

 そういうことをふまえて、今回の事件を見て、命を育む女の立場で考えると、全くやりきれないと思いました。「人は何らかの使命を持って生まれてくる」といいますが、この少年の使命は私たちに「今の世の中は間違っているのではないか」ということをあるいは知らせる為だったのかと思ったりします。

 新聞にも色々とこの事件のことが載っていましたが、もしかしたら日本経済新聞などには載っていないのかと思いまして買ってみたところ、1ペ-ジ半にもわたって書かれていたので、ますますやり切れなくなりました。高度成長期にすばらしい人間もたくさん出てきたんですが、ついていけなかった子供とかは落ちていったんではないかと思います。

 もしこれから子供を育てる、自分たちの命を育てるといったような大きなテ-マで徹底的に議論するといった、そんなことでもしていただけたら、子供はそれを見て、大人たちはこんなふうに考えているんだなと分かれば、何らかの明かりが見えるのではないかと思います。

◎佐々木(明)

 私は報道の仕方について感想を述べさせていただきます。朝日テレビに限らず、またこの事件に限らないのですが例えばロス疑惑、サリン事件、オウム事件とかその辺りから私がたいへん気になっていた報道の仕方として、ニュ-ス番組でありながら、それまで明らかになった事実をもとに現場の再現をしてみるとか、検証してみるとかそういうものが非常に目立つようになりましたね。ニュ-ス番組とか報道番組とかいう限りは、推察とか手を加えたものをあえて視聴者に作って見せる必要がどこまであるかなと思います。逆に淡々とそれまでにわかった事実だけをきちっと伝える姿勢のほうが好ましいのではないかと思っていたところにまたこの事件で、やはり同じように推理とか検証とか各局とも一生懸命やっていましたね。ある程度与えられた時間の中でとにかく視聴者を引き付けて魅力のある番組にするには必要なことかもしれないんですが、もう一度原点に戻って考えていただく必要があるのではないかと思いました。

 それからめんこいテレビで深夜に安藤キャスタ-がやっているニュ-ス番組なんですが、この番組はこの神戸の事件につきましては非常に淡々と報道していまして、それまでにわかった事実をよく整理していました。事実が完全にわかるまでは、無駄なというか余計な装飾を加えずに報道しようという姿勢が見られて、非常に好感が持たれました。

 それから「ニュ-スステ-ション」の久米さんですが、14才の少年が逮捕されたという事実がわかった後の何日か後の番組内で、「実は松本サリン事件の第一通報者の河野さんを完全に犯人扱いした報道をしてしまったことが、未だ悔やまれてならない。報道に携わる者としてやってはいけないことをやってしまった。」とものすごい反省をしていて、「だから自分は少年が犯人として捕まったが、ひょっとして犯人はこの少年ではないのではないか、犯人は別にいるのではないかという一抹の思いを抱きながら報道しているんだ」とおっしゃっていました。こういう人がいる限り、まだまだ日本のテレビは大丈夫だと思い、感動しました。さすが久米さんと思いました。以上です。

◎大堀委員

 とても難しくてたいへんな問題であります。いまさら申し上げるまでもなく、テレビ、新聞、その他すべての報道から私たちは非常に恩恵を受けていると思います。色々なことを知ることができるし考えることができる。そのような中でいつも問題になっているのは、知る権利です。でも時には知ったことが逆の結果になることもありうるわけですね。

 報道されることが、すべての人に同じように受けとめられるかというと、これは全然違います。人の顔が十人十色なように、受け取り方も色々です。年をとって分別のある人の受け取り方と小学生の子供の受け取り方とは違いますし、愛情のある家庭で育った子供とそうでない子供とでは全く違ってくる。そういうふうに考えていきますと、これがどうだ、あれがどうだと言えなくなるんですね。

 それからもう一つ、7月17日にある精神医が論文を書いていました。どういうのかというと「精神科の医者っていうのはあてにならない」という内容なんですね。例えば宮崎勤という人がいましよね。彼の診断結果についてある医者は精神分裂、ある医者は多重人格、またある医者は人格障害だと。全く出鱈目ですね。要するにこういう事件の起こった背景というのは、考えても考えても想像になってしまって分からない。外国に於いても人を殺したという事実があっても、精神病の状態だからと、無実になることもあります。専門家でも分からないものが、私たちが考えたって分からない。

 結論的なことを言えば、報道が人に与える影響は大きいので、こういうことは慎重に報道してほしいということですね。

◎箱崎(安)委員(紙上参加)

 神戸事件の報道はニュ-ス番組の中で見る程度ですが、内容は少年法の厚い壁に遮られて、極めて制約された報道であって、事件の大きさを思うとやり切れない気持ちです。従って、私のコメントは確か7月の第一日曜日の「サンデ-プロジェクト」の「14才の少年の闇を追う」をテ-マにした番組の印象を記述いたします。

 まずこの事件の背景の一面の見方です。担当弁護の「何を考えているのか心の奥底がなかなか分からない」、少年の主張の「透明な存在であり続ける僕をせめて空想の中だけでも実在の人間として認めてほしい」、近所の人間の「楽しそうな家族の光景であった」等から思うととこの少年は非常にナイ-ブでアンバランスな性格で強い欲求不満と同居していると思われます。その後の同級生の母親の「小学校の頃から阻害されていた」、友人の「先生に殴られ、学校に来るなといわれた」等が心の傷を大きくしたと思いました。が、校長先生の学校での出来事の否定、少年の「学校の責任ではない」、担当弁護士の「心の動きが分からない」等から、まさに少年の心の闇を追う難しさを感じました。

 次に別の面から見方として、番組の中で同年代の生徒からファックスを募集し、数通が披露されました。内容は「少年法を見直すべきである。殺人をするなら今だと言われている気がしてならない」「高校と違って中学校は何をしても退学させられない。学校側も厳しく指導しようにもマスコミが騒ぐから過激な指導はするなの姿勢である」「少年法を改正しほしい、善悪の区別はつく」等からみると現代の同年代層は情報を認識しており、大人の社会の少年法改正のあるいは冷ややかに笑って見ているのかもしれない恐さを感じます。

 番組参加のジャ-ナリスト曰く、「少年法を利用しているのは大人であって、法を前面に出す程、調査結果の説明もない少年法については大人も子供も不満である」、又少年と同じ学校の生徒のファックスの「彼は陰で暴力を振るった。犯罪を犯した者には同じ罰を課すべきだ」等から見ると、この事件の早期解決を望むと共に、21世紀に向けて大きな社会問題を本音で論議する時期であると思われます。

◎奥寺委員長

 ありがとうございました。次は事務局長さんからお願いします。

◎桑折事務局長

 8月の番組審議会はお休みです。次回は9月25日(木)でお願いいたします。それから講評番組ですが、日曜日の18時30分からの30分番組、「素敵な宇宙船地球号」という番組をご覧いただいて、ぜひ感想をお願いしたいと思います。これは10月に行なわれる番組審議会代表者会議の課題でもありまして、テレビ朝日もたいへん力を入れている番組です。

◎升谷業務局長

 ではこの番組について簡単に説明いたします。森本レオと西田ひかるがプレゼンテ-タ-でナレ-タ-が久米明さん。人類にとって運命共同体である地球の環境をテ-マにしたドキュメンタリ-番組で21世紀に向けていかにこの地球と仲良くやっていくかというテ-マで展開しています。どうぞよろしくお願いいたします。

◎桑折事務局長

 それでは最後に蓮見専務から一言申し上げます。

◎蓮見専務

 今日はありがとうございます。

 実は番組審議会委員は一年毎にお願いすることになっています。従って、去年の9月からスタ-トして1年が経ちましたが私どもとしては今お願いしている皆様に引き続きお願い申し上げたいと思っております。次回に正式にお願いいたしますが、何卒ご了承いただきたいと思います。

◎桑折事務局長

 以上、第10回番組審議会を終わります。

7.審議機関の答申又は改善意見に対して取った措置及びその年月日

 議事録をキ-局と系列各局及び関係機関に送付した。

8.審議会の答申又は意見の概要を公表した場合におけるその公表の内容、方法

 特記事項なし。

9.その他

 特記事項なし。